食のセレクトショップ 福島屋
世の中にはおしゃれなスーパーが存在する。成城石井、北野エースなどがそれだ。
福島屋の雰囲気もだいたいそんな感じ。こだわりの生鮮食品や、自分でひとつひとつ箱に入れるタイプの卵が売られている。
見たことのないカレールーやお菓子など、いろんな地域のご当地グルメも並んでいて、ちょっとしたアンテナショップみたいな雰囲気もある。
実家の味がするのり弁
筆者と福島屋の出会いは昨秋。職場が秋葉原店に近く、ふらっと入ってお弁当を買ったのが始まりだった。
そのとき買ったのはのり弁だったと記憶している。一口食べたごはんの、なつかしいおいしさに衝撃を受けた。
お母さんのお弁当の味だ……!
ちょっと暗い話になるが、筆者の実家で料理を担当していた母親はすでに他界しており、「実家の味」というものをもう味わうことができない。
たまに食べたいな〜と思う母の料理が、おにぎりとのり弁なのだが、その味が福島屋で食べられるとは思いもしなかった。
家庭で作ってもらっていたお弁当そのままの味だ。遠足のときに、部活の合間に、高校のお昼に食べていた、手作りのあの味がする。
遠足気分で食べたら最高に実家の味を感じられるはずだ
福島屋のお弁当のなつかしいおいしさをもっと堪能したい。「なつかしい」シチュエーションを再現すればいいんじゃないか。すなわち、遠足だ。
あれ、なんか画像が合成っぽいなと思われたみなさま、唐突に断りもせずすみません。
感染拡大で外で食事をするのは不安があり、撮影は室内にとどめた。気分だけでもせいいっぱい「遠足」を感じたい。高校生の頃に着ていたトレーナーと、100均で購入した紅白帽を用意した。
キッズサイズの紅白帽しかなかったので、縦にかぶるウルトラマンスタイルで失礼する。クラスの男の子たちがやっていたことを今になって模倣するとは思わなかった。
食べているうちに記憶のかなたに、遠足といえば体操服を着ていた画がうっすらと浮かぶ。
幼稚園で上野動物園に行った時の思い出だ。カラスに唐揚げを盗まれたことだけは鮮明に覚えている。
素材の味がしっかりと感じられるほうれん草の胡麻和えと、個人的に遠足のお弁当には欠かせないポテトサラダ。最高だ。
メインの鯖の、ほどよくこってりとした味噌風味と、梅干しのすっぱさでごはんが延々と進む。
おいしいなあ。遠足をしているなあ。友達はいないけど。手作りのお弁当を地べたで食べると、遠足になるのかもしれない。
あたたかくなったら、福島屋のお弁当を持って上野公園でピクニックをしてみよう。もっと遠足感が出るはずだ。カラスに気をつけるのは言うまでもない。
手作りお弁当 gives us ぬくもり
福島屋のお弁当に実家の味を見出した理由ははっきりとはわからない。
考えられる理由として公式サイトのお惣菜の説明の「添加物を抑え、なるべく手間をかけずに素材の持つ美味しさを追及しました」がある。
また、店内の奥には、調理場の一部を見ることができる大きな窓がついていて、毎日手作りでお惣菜を作っていることが伺えるつくりになっているのも大きい。
福島屋の卵焼きはちょっとびっくりするくらいにおいしい。ぱっとみて「手作り」であるとわかる安心感もあるのだと思う。
そして、手作りは手作りでも、自分が自分のために作るごはんと、誰かが自分のためにつくってくれたごはんはなんだか味わいが違う。
福島屋にはこの繊細な、人に作ってもらったごはんならではのぬくもり、すこし大げさに言うと愛情を感じることができる、気がする。これが筆者の中の実家の味に結びついたのかもしれない。
食べることを通じて、「このお弁当は他でもないあなたに、あなたのために作りましたよ」というメッセージを受け取っているように思えてくる。お弁当でそんな経験をするのははじめてだ。