赤白帽でウルトラマンを作って
「赤白帽でウルトラマンを作りたい」というよくわからないお願いをしたにもかかわらず、ふたつ返事で引きうけてくれた母。あらためて母の偉大さを知った。私もはやく大人になりたい。
赤白帽のつばを頭上にかかげ「ウルトラマン」になる遊びがある。赤白帽がたくさんあったら全身ウルトラマンになれるのだろうか。結果、なれました。
※2011年11月に掲載された記事の写真画像を大きくして再編集のうえ再掲載しました。
とある広告賞に応募するために、赤白帽を50個買った。
赤白帽が50個余った。今の学級人数的にいえばふたクラス分くらいだろうか。もったいない。何かにつかいたい。赤白帽といえば、小学生の体育の時間を思いだす。赤白帽でウルトラマンの真似をするのが流行っていた。
あれはもう国民的な遊びだった。今の子供たちもやっているのではないだろうか。しかし、私はもう大人。ただ頭にかぶるだけのウルトラマンでは満足できない。今こそ大人の技術力を子どもに見せつけてやろう。今回作りたいものはこちらである。
しかし、私には裁縫技術がない。「大人の力を見せつけてやる!」と息巻いたところだが、別の、もっと大人の力をお見せしよう。大人とは私の母である。母の力を借りる。
赤白帽そのままでは、服に加工するのが難しい。帽子をまずは赤と白に分解して、体のパーツごとに作っていこう。
私はできることがないので、ひたすら帽子の解体を行う。赤白帽をひとつ解体するのにかかる時間は15分。赤白帽は全部で50個あるので、休憩なしで12時間かかる。解体する私。縫い合わせる母。
家の中で分業が確立している。社会の授業で学んだ、家内制手工業である。ふと気づくと、母が黄色い糸を持ち出して何かつくっていた。「ウルトラマンに黄色なんてあったっけ?」と思っていたら、余った赤白帽のつばで別のものを作り始めていた。
さすが母。普段着として使えそうな品質だ。手の部分は複雑だから赤白帽では難しそうだなと思っていたら、母がいいものを見つけてきてくれた。
ウルトラマン赤白帽のために日焼け止め手袋は存在していたのではないかと思えるほど、質感がよく似ている。ウルトラマンのカラータイマーをどう再現しようかなと悩んでいたら、母がゴソゴソと探し物をはじめ、気づいたら胸元に何か取り付けられていた。
どこに保管していたのだろうか。子が子なら親も親である。
頭部と手足は、私が縫い合わせたのでかなり雑な作り。くそう。
ここは母の担当なので完成度が段違いだ。この写真を見て、これが赤白帽で出来ていると分かる人はいないのではないだろうか。
変身にかかった時間は母と私の累計で60時間。
完成度が高すぎて、赤白帽由来であることがわかにくく、ただウルトラマンの格好をしてふざけている人に見えるのが残念だ。
とてもいいものができた。しかし、身近な人に写真を見せたところ、「お母さん偉いね」としか言われない。
よくわからない労働に母を巻き込んだ悪の化身のように罵られた。正義の化身になるはずだったのに。
「赤白帽でウルトラマンを作りたい」というよくわからないお願いをしたにもかかわらず、ふたつ返事で引きうけてくれた母。あらためて母の偉大さを知った。私もはやく大人になりたい。
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