特集 2022年12月5日

柿フライ、柿のアヒージョ、柿グラタン

豆腐や白ごま、調味料とともにあえた「柿の白和え」という料理が和食の定番であるように、柿って、果物のなかでもダントツで、塩気のある料理に使う食材としてのポテンシャルがあると思うんです。だって、他の果物の白和えって、あんまり想像がつかなくないですか?

酸味や香り方面に強すぎる主張がなく、それでいて若ければサクサクと、よく熟れていればとろりと、どちらにしろ食感がいいから、対応力が高いんだろうな。

そんな柿の可能性がどこまであるのかを探りたくなってきた。たとえば、完全なるダジャレではありますが、「牡蠣」を使った定番料理たちを柿に置き換えて作ってみても、けっこうありだったりするのかな?

1978年東京生まれ。酒場ライター。著書に『酒場っ子』『つつまし酒』『天国酒場』など。ライター・スズキナオとのユニット「酒の穴」としても活動中。

前の記事:生タイプラーメンのゆで汁がコーンスープの味


柿と生ハムとチーズが合うならば

ある日、妻が職場で、柿をおすそわけしてもらってきました。そこでその夜、生ハムやモッツァレラチーズと合わせて、ワインのつまみにさせてもらったんですね。

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柿と生ハムとモッツァレラチーズのサラダ? カルパッチョ? 的なもの

この組み合わせは、かつてこんな記事を書いた時にとても合うことを知ったので、以来、柿が手に入ったときにはよくやります。

これをうまいうまいと食べていて、今回の企画を思いついたというわけで。

幸い我が街、東京都練馬区はこの季節、こんな風景がいたるところに。

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農家さんの無人販売所
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柿が4個で100円
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買ってきました

さわった感じ、すでによ〜く熟れているのと、まだちょっと硬めのと、バリエーションあり。

まずは「生(?)柿」

そこでいちばん熟れてそうなやつを、まずは生牡蠣ならぬ「生柿」で食べてみましょう。って、柿だもん、そりゃあ生だろって話なんですが。

味つけは「塩レモン」「ポン酢醤油」「ウイスキーがけ」でいってみますかね。

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生柿×塩レモン

柿ひとかけにレモン果汁をかけ、さらに薄切りにしたレモンをのせて、仕上げに岩塩をひとかけ。

いざ食べてみると、おぉ! これがすごくいい!

柿という果物にないものって、決定的に「酸味」だと思うんですが、そこにレモンの爽やかな酸味が加わるのが新感覚。塩を加えたことにより、料理のジャンルはよくわからないんですが、酒のつまみにはぜんぜんありですよ。

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生柿×ポン酢醤油

となるとゆずを使ったポン酢もありでしょう。と、思いきや、なんだろう、柿とポン酢の風味が、同じ方向を向いていないような?

そもそも僕、この「かけぽん」の味が大好きなんですよね。だからこう、そこに不思議な甘みが加わることに違和感があり。もっと合う食材があるだろうと、つい思ってしまうというか。まぁそれでも、まずい! という感想にならないのは柿のすごさだと思いました。

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生柿×ウイスキー

ウイスキーの本場、スコットランドの「スコッチウイスキー」のなかでも、アイラ島という小さな島にある蒸溜所で作られたものを「アイラモルト」と呼びます。

その特徴は、野草や海藻などが炭化した「ピート」を、原料の大麦麦芽の乾燥の際、燃料に使うこと。それが強いスモーキーさや、海風を感じるような香り、また「正露丸のにおい」と言われるような独特の「ヨード香」を生むのだそう。

そしてこれがなんと、牡蠣の風味と合うということで、アイラ島では焼き牡蠣にウイスキーをかけて食べるのが定番なんだとか。

これこそ試してみたいじゃないですか。というわけで、アイラモルトのなかでも僕の大好きな「ボウモア 12年」で試してみようと、柿にボウモアをたらりとかけて、仕上げに岩塩をぱらり。

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どんな味か

思いきってひと口でつるっといくと……ん? わ〜、なんだこれは! うまいうまい! 海の要素がひとつもない柿ですが、それはそれとして、岩塩がうまいことボウモアの香りと柿の甘みをつなぎ合わせてくれて、謎に美味しい新しい料理になっている!

僕にはとてもこの味を説明できる語彙力はないんですが、そもそも複雑な味わいのボウモアの魅力を、柿との融合によって今までにない方面から堪能できる、かなりおもしろい組み合わせだと感じました。

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「柿のバター醤油焼き」

牡蠣といえばバターソテーも定番ですよね。そこでちょっと若めの柿を選び、薄切りにしてバター醤油焼きにしてみることに。

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柿を控えめな量の油で炒め
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透明感が出てきたところでたっぷりのバターを追加

この時点で味を確認するべくひとつつまみ食いしてみたんですが、硬さのあった柿が信じられないくらいとろんとろんに柔らかくなっていて、バターの香りをまとい、スイーツとしてめちゃくちゃ美味しい! パンに挟んだりしたら新しい名物になるじゃないの? っていうくらい。

が、今日は、

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容赦なく醤油を投入

いきなり料理の香りに。

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「柿のバター醤油焼き」

これがですね、やっぱりだよ。しょっぱい味つけで料理してみても違和感がまったくない! あまくてとろんとろんの、肉でも魚でも野菜でもない、なにがなんだかわからないけどバター醤油味で美味しい料理。仕上げにふった黒コショウとも相性いいです。

ただ、味や食感に若干メリハリがたりないので、ベーコンと合わせたりするとさらに良さそうかな。柿ベーコンエッグとかもありかも。

「柿のアヒージョ」

ベーコンと合いそうということで、お次はアヒージョいってみましょう。

スキレットに、にんにく、角切りベーコン、そしてもちろん

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柿!

を加え、オリーブオイルを注いだら、今日は手抜きで、市販のアヒージョの素を使って。

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アヒージョの素

アヒージョって以前は、油にてきとうにスパイスやら塩やらをぶっこんで、あとは火にかければいいだけでしょ? なんて思ってしまってたんですが、自己流でやるより、市販のこういう商品を使うほうがちゃんと美味しいんですよね。さすが企業。

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ぐつぐつぐつと数分煮れば
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「柿とベーコンのアヒージョ」完成
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いただきます

すると、うわ〜これまた……油で煮た柿、もはやクリーム! そしてやっぱりベーコンの塩気と合うな〜。通常、しょっぱい方面に味が振り切れがちなアヒージョという料理に、柿が甘さととろりとした食感のアクセントを加えており、すっごいうまいですよこれ。

ふらりと入った店でこんな料理がメニューにあったら、お、ここの店主、ただものじゃないぞ、と嬉しくなっちゃいそう。それを注文するかどうかはまた別として。

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「柿グラタン」

お次はグラタンいってみましょう。これまた手抜きで、市販のレトルトシチューを使って。

使ったのは、「新宿中村屋 濃厚クリームシチューごろごろ野菜のこだわり仕立て」。商品名どおり濃厚さなので、そのままホワイトソースがわりに使っちゃいましょう。

「グリさらパン」にシチューをあけ、

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そこへ角切りにした柿を加えたら

ピザ用チーズをたっぷりのせてグリルへ。全体に火が通ったら、仕上げにパン粉をふって、焦げ目が着くくらいまでさらに焼けば、

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「柿グラタン」完成

もうここまでくると、おいしいのかな? まずいのかな? なんて不安はないですよ。合わないはずがない。

とろりと甘い柿は、説明がなければ一瞬なんだかわからず、「この世でいちばん甘いにんじん?」とか思ってしまいそうですが、つまりそのくらい違和感がありません。

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冬の新定番

「柿フライ」と「柿めし」

さていよいよ、大本命の牡蠣フライ、ならぬ「柿フライ」いってみましょう!

せっかくだから、ごはんと一緒に柿を炊いた「柿めし」も合わせ、「柿定食」を作ってみますか〜。

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炊飯器にごはんと柿をセット

今回はなるべく純粋な柿ごはんの味をみてみたかったので、だしなどは加えず、醤油をちょろりのみ。

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炊きあがり
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いい感じのおこげもできてるけど、はたして味は?

続いて柿フライ。

柿に小麦粉をまぶし、

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玉子を絡める瞬間の、謎の感情
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パン粉もまぶして
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ジューっと揚げれば
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「柿フライ」!

牡蠣フライにならってたっぷりのタルタルソースも用意し、柿めしも茶碗によそって、「柿定食」が完成しました。

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一見牡蠣フライと茶めしの美味しそうなセットだけど
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実は柿めし

まずはごはんをひと口。あれ? これ、柿はどこへいった?

どうやらごはんと一緒にじっくりと炊き込むことによって柿が柔らかくなりすぎ、全体をしゃもじで混ぜる際に原型がなくなってしまったようですね。

気になる味のほうも、柿の主張の薄さが裏目に出たか、今まででいちばん柿の印象がありません。なにが入ってるんだかわからず、ほんのりと甘い薄味の炊き込みごはんでしかないというか。まぁ、ぜんぜんうまいですけどね。

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いざ柿フライ

さてさて、いよいよ大本命の柿フライだ。

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ソースをかけて

さくり、じゅわり、もぐもぐもぐ……あ、あれぇ〜? なんだろう。これまた実体がないというか、加熱された柿がやはり柔らかくなりすぎ、なんらかのフライを食べたのに、なにも食べてないような、フライという概念を食べているような不思議な感覚に。そして、強い甘さとソースの味だけが口に広がる。

やっぱり、カキフライは「牡蠣」に限りますね。

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タルタルソースをたっぷりつけても感想は同じ

最後に食べた柿定食は、全体的にもやがかかったような不思議な一食となりましたが、その他の料理はどれもうまかった。それから、柿×ボウモアは、柿の新たなる可能性を僕に見せてくれました。

まだまだいくらでも応用範囲のありそうな、塩気のある料理の食材としての柿の可能性。旬の今のうちに、あれこれ試して楽しんでみたいと思います。

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