特集 2023年4月13日

竹ぼうきで横笛を作る

職場での作業中に竹の端材が出たので、ふと思い立って横笛を作ってみることにした。

ありあわせの道具で雑に作った笛に息を吹き込むと、ポーッという笛らしい音が出た。かすれたような素朴な音色だったが、自分の新たな可能性を発見できたようで嬉しかった。

……待てよ?普段使っている竹ぼうきも穴を開けたら笛になるのではないだろうか。
 

1993年生まれ。京都市伏見区出身、宮崎県在住。天性の分からず屋で分かられず屋。ボードゲームと坂口安吾をこよなく愛している。

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端材で作った竹笛

まずは端材で作った試作品の笛をお見せしたい。

一番右の穴が歌口(息を吹き込む穴)

この端材は、竹でポールを作っているときに不要な部分としてカットしたものである。長さは50cmほどで、枯れている竹なので水分が抜けていて軽い。

ノコギリで歌口の穴を開けると、雑に加工しただけなのに笛っぽい見た目になった。しかも驚くべきことに、冗談半分で息を吹き込んだら一発で音が出たのだ。

これ以降の動画も、音が出せるだけで演奏は下手です

適当に穴を開けただけの竹が笛らしい音色を響かせたことにうっかり感動してしまった。初めて触った楽器なのに一発で音を鳴らせたのもすごい。おれはすごいぞ!という気持ちで頭がいっぱいになった。

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市販の龍笛(雅楽で使う笛)と比べても遜色ない

いい笛ができて気分がよくなった私の脳はフル回転をはじめ、竹ぼうきを笛にすると最高に面白い!という結論に即座にたどり着いた。こういうときの高揚感は生活を豊かにしてくれる。

はじめに断っておくと、竹製の道具を笛に加工するというアイデアは既に世の中にあるらしく、ほうきで作った笛を販売している職人までいるようだ。

ほうき笛を作った最初の人類になれなかったのは残念だが、やりたい気持ちで溢れているのでそのまま突き進むことにする。 

竹を笛にする下準備

竹ぼうきを日常的に使う職場に勤めているので、廃棄予定のものをいくつか貰ってきた。

今年のホウキは豊作です!

加工するにあたって不便なので、まずは竹ぼうきの柄と穂を分解しよう。これは経験があるので勝手がわかっている。

柄の部分を地面に叩きつけるだけ

穂の部分を握りしめて柄を地面に何度も叩きつけるのだ。そうすると次第に針金の固定がゆるんでくる。

職人っぽさ出すために作務衣を着ています

金具が外れたら、あとは力づくで引っ張って穂と柄を分離させる。当然ながら穂の部分はあとからはめ込むので保管しておく。 

最終的にこうなれば何でもいい

次に竹の内部の節をくり抜いていく。節を取り除かないと、演奏するときに息がうまく外に抜けてけていかずに音が出づらいのだ(たぶん)。

リコーダーを例に考えてみても吹き口から先っぽまで空気が流れるようになっているだろう。おそらく楽器を作る上で重要なポイントなのである。 

ドライバーをあてがってハンマーで叩き、節に小さな穴を開ける
穴が開いたら
ステンレスの棒を打ち込んで内部の節を砕く

竹の節がくり抜けたら、あとは息を吹き込むための歌口と音程を操作する音孔を彫るだけである。ここまでかなり順調だ。 

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竹の棒を笛にしていく

小刀を使って竹の棒を笛に加工していく。まずは息を吹き込む歌口から作る。

かっこいいナイフを買った。かっこいい!

大体のあたりをつけて、何度も同じ箇所を削って皮を薄くする。

突破口が開いた!

薄くなった部分にナイフの刃先を突き刺して穴を開けて、そのままグリグリ広げる。 

既製品と比べても結構いけてる

穴が広がったら、演奏時に口元を傷つけないようにささくれを取り除き、これをもって歌口の完成である。

端材でつくった笛は歌口をつくっただけで音が鳴ったので、これも同様に音が出るはずである。

さっそく試奏してみよう。良い音が鳴るイメージで思いっきり息を吹き込む。

何の音が出るかな?

 「スコーーーーーーッ!!!」

息の音しかしないぞ

……まったく何の音も出なかった。いや、正確に言えば浮き輪の空気を抜くときのような音は鳴っている。スコーッ!スコーッ!と、自分が吐いた息の音がそのまま響いているのだ。

納得できなくて息を入れ続けていたら酸欠でクラクラしてきた。楽器を作っていたつもりが、気づけばそれは腹式呼吸ダイエットの器具になっていたのである。

何も考えずに穴を開けまくったら音が出た

諦めずに行き当たりばったりで追加の音孔を開けまくったら何とか音が出るようになった。なにが功を奏したのだろうか。

穴の数は歌口と音孔を含めて11個である。ちなみに私の指は10本なので全部押さえて演奏することはできない。

柄と穂を再び組み合わせて完成!

最後に音が出るようになった柄と穂を再度組み合わせれば、ほうき笛の完成である。 

⏩ ほうき笛が響く!

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