顔マネできなくなる未来はくるのか
車のデザインの流行りや流れについては詳しくないのでなんとも言えないのだけれど、僕が知る限り、角ばったデザインから流線形を帯びたものに変わっていった90年代後半あたりが顔マネするには最もいい車種が揃っていたと思う。マーチとかヴィッツなんかが流行っていた頃だ。その頃に比べて、未来に向かう車たちは少しずつ人の顔から離れて行っている気がした。この先、いつまで車の顔マネしていけるのかわからないが、続けられる限り真似していきたいと思っている。
東京モーターショーへ行ってきた。
車好きしか行ってはいけない場所のように思われがちだが、実はチケットさえ買えば誰でも入れるし、車を詳しく知らなくても楽しめる方法があるので、今回はそのあたりを紹介したいと思います。
車は正面から見ると人の顔に見えることがある。厳密に顔というよりも、パーツの形やレイアウトから、ある種の感情を見た人に抱かせるのだ。
これは科学誌「ヒューマンネイチャー(Human Nature)」に掲載された論文にも詳しい※1。人が車を正面から見てそこに表情を連想するのは、潜在的に危険を判断する場合、もっとも手っ取り早い指標として「表情」に関する情報を見逃さないよう発達したことによるのだという。
デイリーポータルZにも過去に、これについて書かれた記事がある※2。
※1 参考文献:Karl Grammer, “Cars have their own faces”: cross-cultural ratings of car shapes in biological (stereotypical) terms, Evolution and Human Behavior (2012)
※2 参考記事:安藤昌教, 「自動車顔マネ選手権」, デイリーポータルZ (2013)
今回は最新の車の顔傾向がどうなっているのかを見るため、東京モーターショーへ行ってきた。進化した車もやはり表情を想起させるのか、それとも別の未来を見させてくれるのか。楽しみである。
今回は別の案件で付き合いのあるデンソーから招待してもらったこともあり、顔マネをする前にデンソーのブースを見に行った。
デンソーのブースに展示してあった車は、もはや家みたいだった。
この車、人工知能で会話ができ、行き先を伝えると自動でそこまで運転してくれて駐車までしてくれるのだとか(いまのところは想定)。運転する必要がなくなった乗客は、乗っている間に買い物したりできる。
買った商品は駐車している間にトランクに届いているのだとか。未来はどこかの段階で僕たちの想像をはるかに超えてしまった。
他にも未来の車たちが、想像ではなく実体として展示されていた。それを眺めるだけで楽しい。
顔マネするぞー、と思ってやってきたのだけれど、未来を見据えたコンセプトカーについては、これは正直無理だなと諦めた。だって車が人に似ている、というところがはじまりなのに、もはや車にすら見えないんだから。
もちろん来年とか再来年、そのくらいの、もう少し近い未来に発売されそうな車たちも紹介されているので、今回はこちらをメインに真似していきたいと思う。
さてここからいよいよ顔マネをしていくわけだが、ご存知のとおり車は工業製品である。そもそもにおいて生きものである人間が顔マネできるような対象ではないのかもしれない。そこで、厳密に似せることはできないけれど、なんとなくニュアンスは伝わる、くらいの顔マネが本稿の狙いである。
説明しても分かりにくいので例を挙げてみる。
こういうことである。
いま例を挙げたことでさらにわからなくなった読者が半分くらいいた気がするが、ほら国際政治とか宇宙科学とかだってそうだろう。すべての人が平等に同じ水準で理解するというのは難しいのだ。それが世界だ。
なので続けます。
最近はあまりこまめにウォッチしていなかったのだが、僕は学生の頃は車が好きで、道行く車は一目見ただけでだいたいその車種を言い当てることができたものだ。村上春樹にあこがれてMT(マニュアルトランスミッション=自分でクラッチを踏んでギアを変えながら運転する)の小さなオープンツーシーターに乗っていたこともある。
その頃は自分がいつか東京モーターショーで車の顔マネをするようになるとは思ってもみなかった。未来とは予想できないものなのだ。
いわゆるスポーツカーと呼ばれるタイプの車は、前の部分がとがっていてライトがつり目にレイアウトされているものが多い。おそらくその方が強そうに見えるからだ。先に紹介した論文でも、車の「顔」として好かれるのは「力強さ」をイメージさせる車だと書かれている。
対してファミリー向けの車は「おとなしく」「友好的で」「子供っぽい」表情が人気なのだとか。
お気づきかと思うが、今回は車の細かい仕様、たとえばパワーだとか重量だとか駆動形式だとか、そういうところには特に触れない。ただ単に、前から見て顔マネできるかどうかを考えて見て回っている。車について詳しく知りたい方はカーグラフィックでも読んでほしい。
もはやどんな車も顔に見えてきた頃ではないかと思う。
展示はこのあと一般向けの車から特殊用途の車へと移っていく。それに伴い、顔マネも深く難しくなってくる。
顔マネをするにあたり、ひとつ困った点を付け加えておきたい。
よく要領を知らないまま行ったのでそもそもこういうものだったら申し訳ないのだけれど、車の写真を撮ろうとすると人が寄ってきて隣に立ってくれるのだ。
今回は顔マネの部分を写真に合わせたかったので、できるだけ車単体で写真を撮りたかった。そこで毎回「申し訳ないんですが車だけ撮らせてください」とお願いした。仕事を奪うようで申し訳なかったが、こちらも仕事である。そこはビジネスライクにいきたい。
以上、2019年の東京モーターショーからお届けしました。次は2年後らしいので技を磨いておきたいと思います。
車のデザインの流行りや流れについては詳しくないのでなんとも言えないのだけれど、僕が知る限り、角ばったデザインから流線形を帯びたものに変わっていった90年代後半あたりが顔マネするには最もいい車種が揃っていたと思う。マーチとかヴィッツなんかが流行っていた頃だ。その頃に比べて、未来に向かう車たちは少しずつ人の顔から離れて行っている気がした。この先、いつまで車の顔マネしていけるのかわからないが、続けられる限り真似していきたいと思っている。
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