特集 2019年11月1日

顔マネでふりかえる、東京モーターショー2019

こういうタイプの記事です。

東京モーターショーへ行ってきた。

車好きしか行ってはいけない場所のように思われがちだが、実はチケットさえ買えば誰でも入れるし、車を詳しく知らなくても楽しめる方法があるので、今回はそのあたりを紹介したいと思います。

行く先々で「うちの会社にはいないタイプだよね」と言われるが、本人はそんなこともないと思っている。愛知県出身。むかない安藤。(動画インタビュー)

前の記事:バス乗り場ではカレーを食べよう~地元の人頼りの旅in新潟~

> 個人サイト むかない安藤 Twitter

車が人に見える問題

車は正面から見ると人の顔に見えることがある。厳密に顔というよりも、パーツの形やレイアウトから、ある種の感情を見た人に抱かせるのだ。

これは科学誌「ヒューマンネイチャー(Human Nature)」に掲載された論文にも詳しい※1。人が車を正面から見てそこに表情を連想するのは、潜在的に危険を判断する場合、もっとも手っ取り早い指標として「表情」に関する情報を見逃さないよう発達したことによるのだという。

デイリーポータルZにも過去に、これについて書かれた記事がある※2

※1 参考文献:Karl Grammer, “Cars have their own faces”: cross-cultural ratings of car shapes in biological (stereotypical) terms, Evolution and Human Behavior (2012)
※2 参考記事:安藤昌教, 「自動車顔マネ選手権」, デイリーポータルZ (2013)

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自動車顔マネ選手権」より。書いたの僕ですが。

今回は最新の車の顔傾向がどうなっているのかを見るため、東京モーターショーへ行ってきた。進化した車もやはり表情を想起させるのか、それとも別の未来を見させてくれるのか。楽しみである。

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わーい。

今回は別の案件で付き合いのあるデンソーから招待してもらったこともあり、顔マネをする前にデンソーのブースを見に行った。

デンソーのブースに展示してあった車は、もはや家みたいだった。

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鼻につくポーズなのは写真を撮ってくれた会場係の人に指示されたからです。

この車、人工知能で会話ができ、行き先を伝えると自動でそこまで運転してくれて駐車までしてくれるのだとか(いまのところは想定)。運転する必要がなくなった乗客は、乗っている間に買い物したりできる。

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買い物は巨大なテーブルみたいなタブレットで行う。リビングがそのまま移動するみたいなイメージ。

買った商品は駐車している間にトランクに届いているのだとか。未来はどこかの段階で僕たちの想像をはるかに超えてしまった。

他にも未来の車たちが、想像ではなく実体として展示されていた。それを眺めるだけで楽しい。

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街でこれを見て車だと気付く人がどれだけいるだろう。
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住める。
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これはモーター。自動車の心臓部分である。もう内燃機関という言葉は死語になるのかもしれない。

顔マネするぞー、と思ってやってきたのだけれど、未来を見据えたコンセプトカーについては、これは正直無理だなと諦めた。だって車が人に似ている、というところがはじまりなのに、もはや車にすら見えないんだから。

もちろん来年とか再来年、そのくらいの、もう少し近い未来に発売されそうな車たちも紹介されているので、今回はこちらをメインに真似していきたいと思う。

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車の形をしていると安心します。

さてここからいよいよ顔マネをしていくわけだが、ご存知のとおり車は工業製品である。そもそもにおいて生きものである人間が顔マネできるような対象ではないのかもしれない。そこで、厳密に似せることはできないけれど、なんとなくニュアンスは伝わる、くらいの顔マネが本稿の狙いである。

説明しても分かりにくいので例を挙げてみる。

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ALPINE A110S。フランスの車で「アルピーヌ」と読む。

こういうことである。

いま例を挙げたことでさらにわからなくなった読者が半分くらいいた気がするが、ほら国際政治とか宇宙科学とかだってそうだろう。すべての人が平等に同じ水準で理解するというのは難しいのだ。それが世界だ。

なので続けます。

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環境省が出展していた「木からつくったミライのクルマ」。植物由来の次世代素材CNF(セルロースナノファイバー)で作られている。特徴的なドアの開き方も真似のしどころだ。

最近はあまりこまめにウォッチしていなかったのだが、僕は学生の頃は車が好きで、道行く車は一目見ただけでだいたいその車種を言い当てることができたものだ。村上春樹にあこがれてMT(マニュアルトランスミッション=自分でクラッチを踏んでギアを変えながら運転する)の小さなオープンツーシーターに乗っていたこともある。

その頃は自分がいつか東京モーターショーで車の顔マネをするようになるとは思ってもみなかった。未来とは予想できないものなのだ。

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ホンダのNSXといえば泣く子も黙る国産スーパースポーツカーである。アルミモノコックボディは憧れとともに(強度大丈夫?)と機械系の学生に常に心配の種にされた。もちろん強度は大丈夫だし、それは高くて買えない憧れに対するやっかみでもあったわけだけれど。
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ホンダのNSXに対抗できるスポーツカーといえばニッサンスカイラインGT-Rだろう。バブルの時期に技術力のすべてをつぎ込んで開発された最強のスポーツカーで、車好きには「伝説」とすら言われた。24時間耐久レースで2位に20周以上の差をつけて優勝したときにはおしっこもらした。
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マツダのロードスターは独自の路線で多くのファンを獲得した車ではないかと思う。運転していておもしろく、買ってからも自分でいじりまわせる魅力がある。ファミリーユースではないかもしれないが、レンタカーを借りるときはよくこれを狙っている。

いわゆるスポーツカーと呼ばれるタイプの車は、前の部分がとがっていてライトがつり目にレイアウトされているものが多い。おそらくその方が強そうに見えるからだ。先に紹介した論文でも、車の「顔」として好かれるのは「力強さ」をイメージさせる車だと書かれている。

対してファミリー向けの車は「おとなしく」「友好的で」「子供っぽい」表情が人気なのだとか。

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完全に笑わせにきている。
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丸みを帯びた「友だち」デザイン。こういう車は高速で後ろに付かれても威圧感がなくていい。
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こちらはちょっと困った表情の中にも知的さが感じられるデザイン。最近の車にはこういう複雑な感情をあわせもつデザインが多いような気がする。

お気づきかと思うが、今回は車の細かい仕様、たとえばパワーだとか重量だとか駆動形式だとか、そういうところには特に触れない。ただ単に、前から見て顔マネできるかどうかを考えて見て回っている。車について詳しく知りたい方はカーグラフィックでも読んでほしい。

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魚でいうとジンベイザメとかマンタあたりだろうか。何考えてるのかわからないけど、たぶんいいやつ。
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びっくりして時が止まったような表情。
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一方、これなんかは完全に子どもの顔をイメージしたと思われる。かわいい。
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これなんかも子どもの顔がベースになっているのではと思う。
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これは犬だろうか。スペースクラフトっぽさもある。
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「へー、そうなんだー。」

もはやどんな車も顔に見えてきた頃ではないかと思う。

展示はこのあと一般向けの車から特殊用途の車へと移っていく。それに伴い、顔マネも深く難しくなってくる。

特殊車両系

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横の人、食べられる寸前だ。
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顔マネしにくい車体についてはドアー等を表現に取り入れるのもアリです。
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写真を撮っていて、おれこんな顔できるんだ、という発見もあった。
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ダフトパンクだろうか。

人が写りこもうとする問題

顔マネをするにあたり、ひとつ困った点を付け加えておきたい。

よく要領を知らないまま行ったのでそもそもこういうものだったら申し訳ないのだけれど、車の写真を撮ろうとすると人が寄ってきて隣に立ってくれるのだ。

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とくにお願いしていないのにポーズまできめてくれる。
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サイズ比較のためだろうか。

今回は顔マネの部分を写真に合わせたかったので、できるだけ車単体で写真を撮りたかった。そこで毎回「申し訳ないんですが車だけ撮らせてください」とお願いした。仕事を奪うようで申し訳なかったが、こちらも仕事である。そこはビジネスライクにいきたい。

以上、2019年の東京モーターショーからお届けしました。次は2年後らしいので技を磨いておきたいと思います。


顔マネできなくなる未来はくるのか

車のデザインの流行りや流れについては詳しくないのでなんとも言えないのだけれど、僕が知る限り、角ばったデザインから流線形を帯びたものに変わっていった90年代後半あたりが顔マネするには最もいい車種が揃っていたと思う。マーチとかヴィッツなんかが流行っていた頃だ。その頃に比べて、未来に向かう車たちは少しずつ人の顔から離れて行っている気がした。この先、いつまで車の顔マネしていけるのかわからないが、続けられる限り真似していきたいと思っている。

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この人も家に帰って顔マネするんだろうか。
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