エンリッチメントとは?
多摩動物公園に出かけた。
ここには、「スカイウォーク」というオランウータンのエンリッチメントがあるのだ。
一見地味だ。
エンリッチメントという言葉の響きは、僕にエンゲージリング的な幸せな輝きを放つものを連想させるのだけれど、行ってみると地味だった。タワーとタワーがロープで結ばれているだけだ。
しかし、野生のオランウータンは樹上で生活するため、オランウータンにとってはこのスカイウォークは幸せな輝きを放つものなのだ。
ひと昔前、動物園に行くと、大抵の動物は一日中眠っていたり、同じ場所を行ったり来たりするなどの異常行動をしていた。これは飼育下の変化に乏しい退屈な環境から来るストレスのため。それを改善するのが先に書いたスカイウォークなどの「エンリッチメント」と言われるものなのだ。
市民ZOOネットワークというサイトを見ると、エンリッチメントについて詳しく知ることができるのだけれど、早い話が「動物を退屈させないいろいろな工夫」をエンリッチメントと言う。動物が活き活きと楽しんでくれれば何でもエンリッチメントなのだ。
チンパンジーのエンリッチメント
次にチンパンジーのエンリッチメントを見に行く。
でっかいアスレチックやアリ塚などがエンリッチメントだ。ロープを伝ったりしてチンパンジーは活発に動いていた。
アリ塚は、ところどころ穴が開いていて棒を差し込むと棒にジュースがつくようになっている。直接ジュースを与えないため、同じ量を飲むのにも時間がかかり退屈をせずにすむわけだ。
雑誌に連載されているマンガを単行本で一気に読むのもいいけれど、雑誌で毎週毎週読み進めるのも悪くないのと一緒だ、きっと。
生態展示とエンリッチメントのズーラシア
別の日によこはま動物園ズーラシアに出かけた。
ズーラシアは多くの動物が生態展示されている。生態展示とは、その動物が生活する場所を模した展示方法のことだ。
ズーラシアではチンパンジーを見つけることができなかった。
ウォーリーより巧妙に隠れている。テレビのリモコンよりも見つからない。
生態展示はその動物が住む環境を知ることができるけれど、なかなか動物を見つけられなかったりもする。お年を召された女性の2人組が「いないわね~、木切ってくれればいいのに」と言っていたのが印象的だった。
生態展示もエンリッチメントのような気がするけれど基本的には別のものだ。
結局は限られた空間なので動物は退屈してしまうのだ(たとえばシロクマは、本来一日に何マイルも歩くので、環境を再現しただけでは退屈してしまう)。
人間だって一日中家にいるとパソコンだって、本だってあるのに退屈することがあると思う。そんな休日が誰しもあるはずだ。それと一緒だ。だから、生態展示でもエンリッチメントが必要なわけだ。
ズーラシアでは、餌を数回に分けて与えたり、餌を隠すなどのエンリッチメントを行っているそうだ。この日は時間が上手くあわず、餌をあげるところを見ることができなかったのが残念だった。