特集 2020年6月25日

水族館でおなじみのあの魚『モンガラカワハギ』を食べる

水族館や鑑賞魚店などでよく見かける、不思議な体型に白黒模様のあの魚。
実はあれ『モンガラカワハギ』という南方系のカワハギなのだが、食用にされることがほとんどない。

カラーリングのインパクトは数ある日本産魚類の中でもとりわけ凄まじいが、一体どんな味がするんだろうか?

1985年生まれ。生物を五感で楽しむことが生きがい。好きな芸能人は城島茂。(動画インタビュー)

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水深100メートルから来たピエロ

事件は沖縄で魚釣りをしていて起きた。

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沖縄で釣りしてたんですわ
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そしたらなんか

水深100メートルでウメイロというおいしい魚を狙っていると、本命ではないが本命以上に嬉しいゲストが現れた。

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見覚えのあるド派手な魚が釣れたんですわ。めちゃくちゃ嬉しかったんですわ。

表題のモンガラカワハギである。浅海性の魚でこんなに深い場所で採れるのは珍しいらしい。
テレビや本で、あるいは水族館でその姿は何度となく見てきた魚だが、生きたまま手に取ってみるのは初めてのことだった。
うーむ、まじまじ見ると記憶以上に綺麗で可愛らしい配色だ。

ちなみにこのモンガラカワハギ、英語ではクラウントリガーフィッシュという。クラウンはピエロ、トリガーは銃の引き金だ。

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ピンと立つ背びれがトリガー(引き金)に見立てられる
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トリガーは畳むことができ、
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敵に襲われると岩の隙間へ潜り込んで突き立て、つっかえ棒として機能する。こうなったらウツボやタコでも引きずり出すのは簡単でないだろう。
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オレンジ色に塗り上げられた厚いくちびるに隈取りのような目元はたしかにピエロっぽい

まず魚屋で見かけることはないモンガラカワハギが手に入った。
飼育するもよし、リリースするもよしと思ったが、深場から引き揚げてきたので水圧差で目や内臓が飛び出している。これは…食べるほかないな!

包丁いらずでさばける

沖縄においてカワハギ類は一般的に安価な下魚として扱われる。

また、本土のカワハギと違って肝臓などの内臓を食用にしない。種によっては毒性を持つ個体が混じるためである。

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有名なのはソウシハギ。内臓にパリトキシンという神経毒を持つことがある

しかも大きな頭部には身がほとんどついていない。
そのため、食用に解体する際はかなり豪快に頭ごと内臓を毟り取って胴の身だけを調理する。

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捌き方は簡単。肛門から頭頂部へ向けてハサミを入れ
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ヒレを基部から切り落として
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丸裸にしたら
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頭をメリっと折り取る
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あとはベリベリ皮を剥いたら下ごしらえ終了。

実はこのモンガラカワハギもシガテラ毒を持つことがあると言われている。

当然、内臓は廃棄が推奨されるが、今回は肝臓を身と一緒に煮付けにして試食してみることにする(読者のみなさんは真似しないように)。
 

味は可もなく不可もなく…

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モンガラカワハギの煮つけ。生前の姿を知っているだけに頭と皮がないと見栄えがしない気がするなぁ。
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あー、まあ…。身は可もなく不可もなく。肝臓もさほど…。

歯ごたえは本土のカワハギよりギュギュッと固い印象。

…味は悪くない。が、あの外見のインパクトからすると拍子抜けするほど個性のない味。
というか、味がやたら薄い。淡白すぎる。
さばいてからもっと寝かせて熟成させるべきだったのかも?

こうなると肝臓の旨みに期待してしまうが、残念ながらこちらもカワハギには遠く及ばない味。中毒の危険があるとはいえ、沖縄の人々が廃棄してしまうのも納得。
いかにカワハギが、その肝が、食材として優秀かを再認識できた。

モンガラカワハギ、利用法としてはやはり「食べる」ではなく「見る」のがオススメです。


カワハギの肝和え食いてえ~

本文中でも触れたが、沖縄のカワハギ類(その多くはモンガラカワハギ科)は水産的な価値が低い。
そのため市場にはめったに並ばず漁師(あるいは趣味の釣り人)が他の魚を狙っていて混獲されたものをハサミ一本でさばき、唐揚げなどにして自家消費する程度にとどまることが多い。
味も扱いも本土のカワハギとはえらい違いなのである。

うーん、この記事を書いていたら無性にカワハギの肝和えが食べたくなってきた。沖縄在住の身としては当分おあずけだが。

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本種以外もモンガラカワハギの仲間は奇抜なルックスのものが多い。食材としては人気に欠けるが、観賞魚としての需要は根強いぞ。

 

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