特集 2024年3月8日

『ドラえもん』の「学校のうら山」っぽい展望台に登る

『ドラえもん』に出てくるのび太が通う「学校のうら山」のモデルはどこの山なのか。

漫画に出てきた学校のうら山の景色にすごく近いところがあるという話なので行ってみた。

鳥取県出身。東京都中央区在住。フリーライター(自称)。境界や境目がとてもきになる。尊敬する人はバッハ。(動画インタビュー)

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『ドラえもん』に出てくるのび太の町はどこか?

てんとう虫コミックス『ドラえもん』を、ボロボロになるまで繰り返し読んだぼくにとっては、『ドラえもん』の作中にたびたび登場する「学校のうら山」は、実家の裏にあった山よりもよく知っている。

実際に『ドラえもん』を読んでいて、のび太の町はどこにあるのか、モデルとなった町はどこにあるのか、というのは気になるところだろう。かくいう子供のころのぼくもそうだった。

のび太の町がどこにあるのかに関しては、てんとう虫コミックス(以下てんコミ)15巻『不幸の手紙同好会』で、スネ夫の住所が「東京都練馬区月見台すすきヶ原3-10-5」と出てくるので、のび太やスネ夫が住む町は練馬区だ。とよく言われている。

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藤子・F・不二雄『ドラえもん』てんとう虫コミックス15巻P58(小学館)

 てんコミ21巻の『未来の町にただ一人』では、2125年の野比家の住所として「トーキョーシティネリマブロックススキガハラストリート」(なぜか「月見台」は消えている)となっているので、てんコミの設定としては、のび太の家のある区は「練馬区(ネリマブロック)」となっているのだろう。

ということは「学校のうら山」も、練馬区のどこかの山だろうか……と想像してしまいがちだが、そうは問屋が降ろさない。

そもそも、練馬区の地形を眺めてみても、裏山ほどの小高い山というのはちょっと見当たらない。

練馬区の地形図を見てほしい。

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練馬区の地形図

練馬区北側の荒川に隣接した崖と、石神井川周辺の谷になっている所以外は、ほとんどが平べったいのがわかると思う。

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藤子・F・不二雄『ドラえもん』てんとう虫コミックス28巻P126(小学館)

子供の頃に「学校のうら山」のモデルになった山が練馬区のどこにあるかを特定しようとして、東京都区分地図の練馬区を穴が開くほど探したことがある。結局「練馬区の小学校のすぐ近くに山っぽいのがあるところはねえな……」となった記憶がある。

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日本誕生で出てきた「学校のうら山」

デイリーポータルZ編集部の林さん(『ドラえもん』大好き)が「川崎の生田の展望台のある山がドラえもんに出てきた裏山っぽいんですよ」という。わざわざ案内してくれるというので、向ヶ丘遊園駅に集合した。

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展望台の場所を案内してくれる編集部林さん

 林さんは、生田緑地の枡形山の雰囲気がドラえもんの裏山っぽいとという。検索すると大長編に出てくる裏山の景色が似ていると書いているブログがあったと話していた。

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藤子・F・不二雄『大長編ドラえもん9のび太の日本誕生』てんとう虫コミックスP23(小学館)

しかし当日駅で「(景色は似ているけれども)展望台まで結構キツい登山道なんですよね……のび太がうら山に行くシーンで、そんなシーンあったかなって思うんですよね……」と、ふんわりとしたことを言い出した。

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「けっこうキツイ坂道登るシーン、あったっけな……」

だんだんと枡形山が「学校のうら山」っぽいかどうか自信がなくなってきたらしい。

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のび太の町のモデルは小田急線沿線説もある

のび太の住む町が練馬区とすると、学校のうら山っぽいところが生田緑地にあるのはおかしい。

しかし、のび太の町のモデルは、練馬区ではなく、小田急線沿線という可能性もある。

子供のころ、てんコミ2巻『地下鉄をつくっちゃえ』で、のび太がパパやママたち一家全員で家に帰るために電車を待つシーンで、駅の看板に「しん…」「みな…」と書かれているのに、気付いたことがある。

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藤子・F・不二雄『ドラえもん』てんとう虫コミックス2巻P129(小学館)

当時、鳥取の田舎に住んでいたぼくは「しん…」は新宿駅で、次の駅の「みな…」は「みなみ…」だろうとあたりをつけ、該当する駅を、東京都区分地図帳で探し出し、はたしてそれが、新宿駅の次が南新宿駅の小田急線であることを突き止めた。

もちろん、今思えば、F先生もA先生も、生田緑地の近くに自宅を構えられ、亡くなるまでそこで暮らしていたので、自分の住んでいる町をモデルにしたことは容易に想像できる。

西村「のび太の町がどこかって話は、矛盾する設定がいろいろあるんで、あくまでモデルにしたと思しき町が複数あるぞ、ぐらいの感じに思ったほうがいいんでしょうね」

林「昔、村上春樹が、フォルクスワーゲンのラジエターと小説に書いて、当時のフォルクスワーゲンは空冷式だったから、ラジエターなんかなかった。でも、あくまで別の宇宙の話だってことにできる。と言ってて、言い切ったな〜と思いましたよ」 

こういったことは、あくまで創作物の設定であるわけで、そういうものだと作者が言えばそれまでであり、間違いとか正解という話ではない。

そんなことをツラツラと話しつつ、枡形山展望台の麓までやってきた。

⏩ 次ページに続きます

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