元気でさえいれば
ちなみに、出だしで描いたヨガのDMは16年前に絵手紙の記事を書いた林さんにお送りした。
よかった、DMの代わりに心あたたまる絵手紙を、大成功です。
あっという間にポストが埋もれる。
縁のない不動産や「おれがターゲットではなかろう」と思われる美容院のチラシ、水道トラブルのマグネット、その他、諸、々。
どうにも興味のわかないダイレクトメール(DM)も多い。ならばこの殺伐とした世の中、宣伝広告にもぬくもりがあると良いのではないだろうか。例えば、絵手紙のような。
DMははがきサイズのものも多い。では絵手紙のタッチに置き換えてみたらどうだろうか、というのが今回の趣旨である。
絵手紙によく見られる味のある筆づかいのイラストを一度は見たことがあるのではないだろうか。当サイトでも17年前に(17年前!)編集長の林さんが絵手紙を嗜んでいた。
多少デフォルメされたやさしい筆づかいは、手紙を受け取ったひとの心をほっこりさせる。このタッチを習得したいと思う。
日本絵手紙協会によると、絵手紙のキャッチフレーズは「ヘタでいい ヘタがいい」。上手に描こうと思わず、その人らしさが出ることが大切とのことだ。
それにしても協会が「ヘタでいい」と背中を押してくれているのはとても心強いことだ。これでどんな仕上がりであれ咎められることはない。色々と参考にしながら絵手紙をしたためてみよう。
最近料理のデリバリーサービスに関するチラシがよく届く。その中でも今回作りたいのがデリバリーピザのDMだ。
社会情勢も相まってUber Eatsなど様々サービスを活用しているが、改めて実感したのが「ピザ屋の安定感」だった。
他デリバリーサービスは稀に冷めたり傾いた料理が届くことがあるのだけど、その点で先駆者であるピザ屋の安定感たるや、いつでもすぐにあたたかいピザを届けてくれる。うれしい。
最近は他業者に押され気味の様子で、やたら値引きの方策を打っているピザ屋である。そんなピザに日頃の感謝の意味を込めてつくったDMがこちらだ。
ポイントは多少はみ出すくらい対象を大きく描くこと。また、林さん曰く「1秒1センチで線を描く」と良いとのことである。ほー、丁寧かつ大胆!
絵はがきのモチーフは野菜をはじめとした食べ物が多いため、ピザは比較的違和感の薄いテーマだったかもしれない。食べ物以外のものもこのタッチで描いてみたい。
もう少し観察してみよう。ちまたの絵手紙を眺めていると、ポジティブな言葉がよく添えられいることがわかる。
「ありがとう」「笑顔」「感謝」「一期一会」「元気」…
絵手紙を趣味とする年齢層からだろうか、健康面に関する言葉がとくに多い。健康に関するよく届くDMといえば、ヨガだろう。ヨガのDMを描こう。
できた!
ポーズは「木のポーズ」だ、リングフィットアドベンチャーでも大変お世話になっている姿勢である。トンッ、トンッと色を置いたら味が出てきた。少しくらいはみ出したって勢いよく色を塗っていくほうが良さそうだ。
日本絵手紙協会のwebサイトには他にも絵手紙を描く上での様々なコツが記されていた。
筆者もこれまでいろんな絵のタッチに挑戦してみたけれど今回はトップクラスのむずかしさを感じている。「味とは?」の壁にぶつかるのだ。味ってなんだ?
デリバリーやフィットネスが近年増えたDMとすれば、それ以前より安定して多いのが不動産・住宅関連のDMだろう。デイリーポータルZでもよく取り上げられる、マンションポエムが書かれがちなアレである。
光り輝くマンションを携えた不動産のDMを絵手紙にしよう。
どうだろう、筆(正確にはApple Pencilの筆ブラシ)の勢いで描いたらマンションがマンションに見えなくなった気もする。なんだろう、海底で揺れている生物…?
固着動物みたいなのはさておき、実はこの独特な文字もなかなかむずかしい。ラーメン屋の壁などでもよく見かけるこの捉えどころのない"味"のある字体が、絵手紙を絵手紙たらしめているのではないかと思う。
試しに書道の有段者にも書いてもらったのだけど、やっぱりどこか違和感が出てくる。誰が見てもこの文字の方が綺麗なのに、絵手紙にした途端このよそよそしさである。
何かしら商品の広告にもこの絵手紙メソッドは使えるのではないかと思い、いくつか書いてみたので紹介したい。徒然なるままに、というあれだ。
黒ひげ危機一発を売る広告がこの令和に存在するだろうか、というツッコミは胸の中にしまおう。
このおもちゃ、実は「黒ひげを飛ばした人が勝ち」というルールなのだけど意外と知らない方も多い。その啓発の意味を込めてのDMである。
(と、思って書いたけど、改めて調べたら”当初は「飛び出させた人が勝ち」というルールだったが、1995年に「飛び出させたほうが負け」となることとなった”とあった。あぶないあぶない)
言葉の最後に筆者・北向の「北」を模した朱色の印を押したら手紙が引き締まった。ここから先はもう筆者を止められないぞ。
我が家でも宝の持ち腐れとなっているスマートスピーカー。未だ筆者がスピーカーに対して人見知りをしてしまっているのだけど、温かみを足せばより話しかけやすくなるのではないだろうか。
絵手紙は人生に関する言葉も多い。
最後に油田を見つけるのも、所得税に苦しむのも、やたら双子が生まれ車からコマが溢れるのも人生だ。
怪しい通販の広告ってあったよな、と思い、ポジティブなダウジングマシーン。
釘バットやモデルルームについてはもうポジティブでもダイレクトメールでもなんでもなくなってしまったけど、なんか悲哀があるよなあと常々思っていたのでこの機会に手紙にしてみた次第である。満足しました。
ちなみに、出だしで描いたヨガのDMは16年前に絵手紙の記事を書いた林さんにお送りした。
よかった、DMの代わりに心あたたまる絵手紙を、大成功です。
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