特集 2021年1月18日

ダイレクトメールは 心あたたまる絵手紙で

こんな時代だから、絵手紙

あっという間にポストが埋もれる。

縁のない不動産や「おれがターゲットではなかろう」と思われる美容院のチラシ、水道トラブルのマグネット、その他、諸、々。

どうにも興味のわかないダイレクトメール(DM)も多い。ならばこの殺伐とした世の中、宣伝広告にもぬくもりがあると良いのではないだろうか。例えば、絵手紙のような。

埼玉生まれ、神奈川育ち、東京在住。会社員。好きなキリンはアミメキリンです。右足ばかり靴のかかとがすり減ります。(インタビュー動画)

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> 個人サイト のばなし

絵手紙の”味”に舌鼓を打とう

DMははがきサイズのものも多い。では絵手紙のタッチに置き換えてみたらどうだろうか、というのが今回の趣旨である。

絵手紙によく見られる味のある筆づかいのイラストを一度は見たことがあるのではないだろうか。当サイトでも17年前に(17年前!)編集長の林さんが絵手紙を嗜んでいた。

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絵手紙はじめました。より。男も30代半ばに差し掛かるとみんな絵手紙に想いを寄せるのかもしれない

多少デフォルメされたやさしい筆づかいは、手紙を受け取ったひとの心をほっこりさせる。このタッチを習得したいと思う。

大切なのは”その人らしさ”、という心強い言葉

日本絵手紙協会によると、絵手紙のキャッチフレーズは「ヘタでいい ヘタがいい」。上手に描こうと思わず、その人らしさが出ることが大切とのことだ。

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日本絵手紙協会トップページより。野菜や花のモチーフが目につく

それにしても協会が「ヘタでいい」と背中を押してくれているのはとても心強いことだ。これでどんな仕上がりであれ咎められることはない。色々と参考にしながら絵手紙をしたためてみよう。

絵手紙は、”1秒1センチの線”かつ、大胆に

最近料理のデリバリーサービスに関するチラシがよく届く。その中でも今回作りたいのがデリバリーピザのDMだ。

社会情勢も相まってUber Eatsなど様々サービスを活用しているが、改めて実感したのが「ピザ屋の安定感」だった。
他デリバリーサービスは稀に冷めたり傾いた料理が届くことがあるのだけど、その点で先駆者であるピザ屋の安定感たるや、いつでもすぐにあたたかいピザを届けてくれる。うれしい。

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まずはピザを描こう。チーズが糸引くピザを筆ブラシで描いたら、水彩で色をつける

最近は他業者に押され気味の様子で、やたら値引きの方策を打っているピザ屋である。そんなピザに日頃の感謝の意味を込めてつくったDMがこちらだ。

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あったかいピザがいい。言葉を添えたら完成だ!

ポイントは多少はみ出すくらい対象を大きく描くこと。また、林さん曰く「1秒1センチで線を描く」と良いとのことである。ほー、丁寧かつ大胆!

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印刷してみる。ふだんのDMより手に取りたくなるだろうか、困惑するだろうか

ポジティブなことばを添えよう

絵はがきのモチーフは野菜をはじめとした食べ物が多いため、ピザは比較的違和感の薄いテーマだったかもしれない。食べ物以外のものもこのタッチで描いてみたい。

もう少し観察してみよう。ちまたの絵手紙を眺めていると、ポジティブな言葉がよく添えられいることがわかる。

「ありがとう」「笑顔」「感謝」「一期一会」「元気」…

絵手紙を趣味とする年齢層からだろうか、健康面に関する言葉がとくに多い。健康に関するよく届くDMといえば、ヨガだろう。ヨガのDMを描こう。

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元気でさえいれば

できた!

ポーズは「木のポーズ」だ、リングフィットアドベンチャーでも大変お世話になっている姿勢である。トンッ、トンッと色を置いたら味が出てきた。少しくらいはみ出したって勢いよく色を塗っていくほうが良さそうだ。

日本絵手紙協会のwebサイトには他にも絵手紙を描く上での様々なコツが記されていた。

・筆はてっぺんを軽く持ち、立てて描く
・大胆に、線の歪みや色のはみ出しは味になる
・明るめの色で塗ろう

筆者もこれまでいろんな絵のタッチに挑戦してみたけれど今回はトップクラスのむずかしさを感じている。「味とは?」の壁にぶつかるのだ。味ってなんだ?

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せっかくの絵手紙なのでこのDMは年賀状がてら送ろうと思います

絵と同じくらい”味のある文字”が大切かも

デリバリーやフィットネスが近年増えたDMとすれば、それ以前より安定して多いのが不動産・住宅関連のDMだろう。デイリーポータルZでもよく取り上げられる、マンションポエムが書かれがちなアレである。
光り輝くマンションを携えた不動産のDMを絵手紙にしよう。

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その静謐な邸宅に棲まう

どうだろう、筆(正確にはApple Pencilの筆ブラシ)の勢いで描いたらマンションがマンションに見えなくなった気もする。なんだろう、海底で揺れている生物…?

固着動物みたいなのはさておき、実はこの独特な文字もなかなかむずかしい。ラーメン屋の壁などでもよく見かけるこの捉えどころのない"味"のある字体が、絵手紙を絵手紙たらしめているのではないかと思う。

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試しに書道の有段者にも書いてもらったのだけど、やっぱりどこか違和感が出てくる。誰が見てもこの文字の方が綺麗なのに、絵手紙にした途端このよそよそしさである。

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我が家に届いたDMに紛れ込ませてみる。いいぞいいぞ
いったん広告です

もう止まらないぞ

何かしら商品の広告にもこの絵手紙メソッドは使えるのではないかと思い、いくつか書いてみたので紹介したい。徒然なるままに、というあれだ。

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黒ひげ危機一発

黒ひげ危機一発を売る広告がこの令和に存在するだろうか、というツッコミは胸の中にしまおう。

このおもちゃ、実は「黒ひげを飛ばした人が勝ち」というルールなのだけど意外と知らない方も多い。その啓発の意味を込めてのDMである。
(と、思って書いたけど、改めて調べたら”当初は「飛び出させた人が勝ち」というルールだったが、1995年に「飛び出させたほうが負け」となることとなった”とあった。あぶないあぶない)

言葉の最後に筆者・北向の「北」を模した朱色の印を押したら手紙が引き締まった。ここから先はもう筆者を止められないぞ。

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Google Home

我が家でも宝の持ち腐れとなっているスマートスピーカー。未だ筆者がスピーカーに対して人見知りをしてしまっているのだけど、温かみを足せばより話しかけやすくなるのではないだろうか。

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人生ゲーム

絵手紙は人生に関する言葉も多い。
最後に油田を見つけるのも、所得税に苦しむのも、やたら双子が生まれ車からコマが溢れるのも人生だ。

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ダウジングマシーン

怪しい通販の広告ってあったよな、と思い、ポジティブなダウジングマシーン。

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釘バット
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モデルルーム

釘バットやモデルルームについてはもうポジティブでもダイレクトメールでもなんでもなくなってしまったけど、なんか悲哀があるよなあと常々思っていたのでこの機会に手紙にしてみた次第である。満足しました。

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たくさん集めて薄目で見れば違和感がないのでは!

元気でさえいれば

ちなみに、出だしで描いたヨガのDMは16年前に絵手紙の記事を書いた林さんにお送りした。

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困惑の表情のあと、
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斜めに傾いた木のポーズが送られてきた

よかった、DMの代わりに心あたたまる絵手紙を、大成功です。

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