他にもいろんな案出ました
トルー:ステーキの鉄板焼きが一番かもしれないですね。
北向:お好み焼き、焼きそばとか。下の板が冷たいか熱いかの違いですからね。
トルー:ほぼコールドストーンですからね
北向:ホットアイアン(hot iron)ですね。
トルー:「ホットアイアンへようこそ!」
新型コロナウイルスが依然猛威をふるっている。外出やイベントは自粛され、都庁や太陽の塔が赤く染まり、そして、コールド・ストーンの、アイスクリームを混ぜるときに歌うあのサービスが中止になった。
歌を絶やしてはいけない。
筆者はそう思ったのだ。
アメリカ・アリゾナ州発祥のアイスクリーム屋『コールド・ストーン・クリーマリー』をご存知だろうか。
大きな特徴はふたつ。
ひとつはその"コールド・ストーン"の名の通り、冷やされた石板のうえでアイスクリームやフルーツを混ぜ合わせる独特なアイスの作り方。そしてもうひとつが、そのアイスを混ぜるときに店員がハッピーな歌をうたう、というエンターテイメント性である。
他に類を見ないその斬新なサービスは日本へ上陸した際も受け継がれ、内気な日本人たちの度肝を抜いた。
圧倒的な”陽”の空気もあって人を選ぶ店ではあったが、こうやって歌のサービスが中止となるとさびしい。店舗で表立って歌うことはできなくとも、筆者がこうして個人的に混ぜて歌いあげようと思ったのだ。
北向:というわけです。
トルー:わかりました。
店員さんの格好に着替えたら準備は万端(競り市のコスプレみたいになったが)。さて、今日は歌って混ぜるぞ!
アイスクリームと歌の相性の良さは明らかなので、今日はほかに歌いながら混ぜてしっくりくる料理を探していこうと思う。
コールド・ストーンのサイズ表記は独特で、小さい方から「Like it」、「Love it」、「Gotta Have it」となる。今回はこの表記を流用し、しっくりこなかったらLike it、しっくりきたらGotta Have it、といったように評価することにした。
先に最終結果を並べると下記のとおり。
ハッ、ちなみに今回作ったものたちは飛沫などを考慮し、持ち帰って筆者が食べました。
さあ行くぞ!5品目、それぞれ紐解いてこう。
さて。混ぜる食べ物といえばまずは納豆だろう。余談であるが最近納豆を克服した筆者にとってこれが人生で初めての納豆パック開封である。
糸を引きすぎる納豆にギャーギャー騒いでしまったが、歌います。コールド・ストーンへようこそ!
歌っているのは、アルプス一万尺のメロディに乗せたコールド・ストーンオリジナルの歌詞の曲である。公式サイトによると、このような歌が50曲以上あるらしい。
北向:納豆、どうでした。
トルー:あのー、楽しいけど最上級ではないですね。
北向:あれ、どの辺が減点ですかね。
トルー:うーん…自分でやるよってなっちゃうんですよね、相手に混ぜてもらう申し訳なさがある。
なるほど、そういう心理状態になるのか。
確かに納豆って”自分で混ぜるもの”の代表格だ。これを目の前の相手が混ぜている。しかも健気に歌いながらである。「自分で混ぜますんで」と萎縮してしまうのも頷ける。
北向:やっぱりアメリカにしか馴染まない文化なんですかねー。
トルー:でも、歌いながら混ぜるのって日本の温泉地でありますよね、草津に。
北向:あ!湯もみだ!!
そうか、日本にも昔からある文化なんだ!そう考えると日本人にとっても違和感はないのかもなー、勇気をもらったのでもう少し可能性を探ってみよう。
北向:例えば、”歌わずに混ぜているだけ”を見ているのはどうですかね?
トルー:これこそ本当に「ぼくがやりますよ」って言いたくなりますね。
北向:そうですよね。
トルー:普段の納豆を混ぜるスピードより遅いんですよね。
北向:あ〜、歌うテンポと同じじゃないと混ぜるのが合わせづらくて。
トルーさんの的確なアドバイスにより倍の速度で混ぜたら「だんだん粘り気が出る様子がワクワクしてきた!」とのことで評価があがった。
わかった、16ビートで納豆を刻むんだ。
16ビートの納豆なら「Love it」でもいい…と悩みながらも、「Like it」に着地。基準とされるのはトップバッターの悲しい宿命である。
※この記事、読む人はどんな心構えで読めばいいのかなと考えたんですが、コールド・ストーンが新事業を展開するための企画会議に参加した気持ちでいるのがいいと思いました。どうですか。
続けて、これも練ることをアイデンティティとした『ねるねるねるね』。
今回唯一の甘味であり、立ち位置はコールド・ストーンに近いと言えよう。
粉を開封しトレイに水を入れたら心のスネアドラムが鳴り出した。よし、歌ってみよう。
トルー:わぁ、これ歌に合いますね!そういうお店みたい。
北向:おっ好評ですね!
トルー:見ていて楽しいです。
トルー:なんでしょう、原宿で買えた!みたいな。
北向:あ〜、レインボーわたあめだ。
北向:展開があるのもいいですね、粉を入れて、色が変わって。
トルー:それも大きいかも!
北向:ストーリーがあると楽しいんだ。
トルー:あとは納豆より「ウソだろ」って思わなかったですね。
北向:納豆はウソだと思ったんですか。
トルー:最初に「コールド・ストーンへようこそ!」って言うじゃないですか、「そんなわけないだろ」って。
北向:はい。
トルー:ウソじゃんって。
北向:まあ、ウソですからね。
トルー:評価はもう、「Gotta Have it」で。
北向:すごい!これは番狂わせだな〜。
非日常が溶け込んだねるねるねるね、まさかの最高評価を獲得。アイスクリームの次の展開が見えてきたかもしれない。場が荒れてきたぞ!
3つめは”混ぜる”以外の可能性を探るため、”揉む”から参戦。きゅうりの浅漬けである。その昔、から揚げを揉みながら歌うCMがあったことを思い出したのだ。
なつかしCMに賭けた可能性やいかに、歌って揉むぞ!
北向:えー…この揉んだやつを30分くらい冷やします。
トルー:歌ってもらってすぐ食えないのがな。
北向:「ご歓談ください」が発生する。
トルー:そのテンションのまますぐ食べたいですよね。
トルー:納豆のときと同じ「なんなんだろう」というのがありますね。
北向:それは混ぜてないからですか?
トルー:食材ですかね、日常的すぎるのかな。
北向:歌いながら調理してもらうことが非日常ですからね。それに釣り合わないのか。
北向:揉む側も違和感ありましたね、見た目もまったく変化しないし。
トルー:ああーそっか!それが変なんだ。
北向:きっと浸透してるんだろうな、くらい。
粘り気が出てワクワクした納豆よりも低い、とのことで、新しい評価「Not good…」とした。だめかー。
これまでの傾向から「非日常の華やかさ」「見た目の変化」が大事であるということがわかってきた。ふうむふむ、このあたりを意識しながらあと2品、歌っていきたい。
北向:そもそもの発端がこれなんですよね。歌いながら混ぜたいなと思って。
トルー:そうか、確かにこれかなりコールド・ストーンですね。
そうでしょうそうでしょう!期待を込めて歌います、ようこそコールド・ストーンへ!
北向:あ、これ歌いながらだとむずかしい!
トルー:すごい、動きが多かったですね。
北向:ご飯を返したり、(おこげをつけるために)押し付けたり、工程が多いんですよ。
この日のためにビビンバの混ぜ方の動画を見たり毎日歌を口ずさんできたのだ、筆者は。
北向:ただ、接客側からするとお客さんの顔を見ながら混ぜるのがむずかしいんですよ。”うつむいて歌っちゃったな…”という反省が。
トルー:反省が。
トルー:ビビンバの混ぜ具合って個人的な好みがないですか。
北向:あー、ありますね。でも混ぜてる人が歌ってると「もういいです!」って言いづらい。
トルー:歌い終わるの待っちゃいますね。
やってみないとわからないものだ。石焼きビビンバはもう一歩が伸びずLove itに落ち着く。
これはねるねるねるねが最強か!?最後はちらし寿司だ!
トルー:ちらし寿司はおばあちゃんが作ってる光景とかイメージありますよね。
北向:あー、孫達がワクワクしながら覗き込んでるあれですね。
最後にもう一度聴いてください。北向ハナウタで、コールド・ストーン版アルプス一万尺です。
トルー:いや、かなり良かったですね!
北向:お!
トルー:自分では普段やらない作業ですし、非日常な道具もいいですね。
北向:桶あるとテンション上がりますね、店員側も楽しかったです。
トルー:縁を「カッ」と叩くのもいいですね。
ちらし寿司、テンションが上がってついつい桶の縁を叩いてリズムをとってしまった。
▼評価点:
・非日常な作業と料理道具
・具材が混ざっていく様子の楽しさ・エンターテイメント性
・刺身を盛り付けたあとの華やかさ・おもてなし感
▼改善点:
・ご飯を冷ます必要がある
・すごい酸っぱい匂いがするので咽せる
トルー:華やかさも考えると…今日はちらし寿司が一番ですね。
北向:おー!Gotta Have itだ!!
やっぱり実践って大事だ。当初はそこまで期待していなかったちらし寿司だが、初代「歌って混ぜたい料理」はトルーさんの支持も後押ししたちらし寿司に決定したい。
酢の匂いがめちゃ咽せるという点は大きな課題だけど、お客様の笑顔が一番である。歌うならちらし寿司。それが我々の総意だ。
トルー:ステーキの鉄板焼きが一番かもしれないですね。
北向:お好み焼き、焼きそばとか。下の板が冷たいか熱いかの違いですからね。
トルー:ほぼコールドストーンですからね
北向:ホットアイアン(hot iron)ですね。
トルー:「ホットアイアンへようこそ!」
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