ドイツの不思議なおにぎり
おにぎりはおいしい。これほどコンパクトで便利でうまいものがこの世にあるだろうか。初めておにぎりを作った人にデザイン賞をあげたいくらいだ。
日本食がまだ世界であまり知られていなかった時代は、黒い海苔が気持ち悪がられたり、変な目で見られたりしたが、食のグローバル化とともに海外でもおにぎりの知名度が上がり、人気の食べ物となってきた。
実は私が住むドイツでも、もうずいぶん前からオーガニックスーパーなどでおにぎりが売られている。
前からちょっと気にはなっていたが、おにぎりは自分で作れるのでなかなか買う気にはならなかった。値段も2.99ユーロ(約420円)と日本と比べると高いが、周りの友人が食べているのは見たことがあった。
だがこのおにぎりたち、よくよく見ると中の具がとても変わっているのだ。
おにぎりにアボカド・パクチー・ライムだと?!だ、誰だ、こんな具を考えたのは!
日本人が間違っても思いつかない具
日本人がびっくりする、ファンキーな具のおにぎり。それを作っているのが、ベルリンのおにぎり会社 RiCE UP Onigiri だ。
この不思議なおにぎりについて、創業者の一人であるアレフさんと電話で話を聞くことができた。
撮影の合間にパパッと食べる上に、おいしいおにぎり。ドイツで仕事の合間に食べるといったら、フライドポテトなどの不健康な選択肢しかなかったので、なんて便利でおいしい食べ物なんだと感激しました。
ドイツにもおにぎりがあったらいいのに、と思いながらカメラマンの仕事を続けていたアレフさんは、後の共同創業者のトーステンさんと出会い、2011年にライスアップ社を設立したそう。
ライスアップの一号店ですね。当時は一日に80〜100個ほどのおにぎりを販売していました。まあ、一番売れていたのはコーヒーだったんですけどね。
日本人にとっては変わった具ですよね。ライスアップとしては日本食にあまり馴染みのないドイツ人におにぎりを食べてもらうのが目的なので、ドイツ人の口に合う具を考えるようにしています。
創業当初はハワイの日本食レストランで経験を積んだシェフと一緒におにぎりを作っていましたが、当時も今も具のアイディアは私たちが自ら考えています。
ちなみに、うちの子供たちの大好物はピーナッツです。
でも普段日本食を食べない人におにぎりを手に取ってもらって、食べてもらうのはとてもやりがいがあります。
おにぎりは便利でおいしい食べ物なので、ドイツでもっと広まってほしいと思っています。
意外と米に合う変わり種具材たち
さて、アレフさんに話を聞いたことだし、この不思議な具のおにぎりたちを実際に食べてみよう。
まずは一番無難そうな「鮭&西洋わさび」だ。
日本人として受け入れやすい具だが、鮭の味付けが薄いので食べながら飽きてしまいそうな気がする。期待していたのでちょっと残念だ。
- 最も日本のおにぎりっぽい具
- わさびがマイルド。わさびが苦手な人でも食べれる
- 全体的に味が薄い。もう少し塩味が効いてたほうがおいしいと思う
味の評価 ★★☆☆☆
次も比較的無難そうな具で行ってみよう。
うん、おいしい。これは日本人でも抵抗なく食べれる味だ。チーズなんか入れちゃっても絶対うまいと思う。
- 白菜がシャキシャキしてて良い
- ドイツ人向けなのか、キムチはあまり辛くない。でもなかなかイケる
- マヨっぽいソースもクリーミーでおいしい
味の評価 ★★★★☆
では次は変わり種おにぎりを食べてみよう。
かぼちゃのおにぎりかあ〜と思っていたが、思いの外おにぎりの具として馴染んでいた。ふんふん、考えることが面白いな。
- かぼちゃとしいたけを醤油で煮詰めた感じ。ちょっとピリッとする
- 日本のかぼちゃと違ってそれほど甘くはない
- しいたけが苦手なのだが、しいたけの主張が弱かったので食べれた
味の評価 ★★★☆☆
次はアレフさんイチ押しの「鮭&ピリ辛すもも」おにぎりだ。
アレフさんからジャムが入っていると聞いていたので、どんな恐ろしいおにぎりかと思ったら、思いの外おいしかった。少し違和感はあるが、思ったよりイケるじゃないか。
- すももジャムが意外と鮭と合う
- 確かに梅干しとは全く別物
- ちょっと甘くてスパイシー
味の評価 ★★★☆☆
そしてずっと謎だった「和風ピーナッツ」も試してみることに。
一体どのあたりが和風なんだろう。恐る恐る食べてみる。
これ、日本にもある味だ!なんだっけ。ああ、ピーナッツ味噌だ!
材料を見てみたら確かに味噌が入っていた。これはなかなかおいしい。うちでも真似させてもらうかもしれない。
- ピーナッツ味噌だ!
- シャリシャリと歯応えが良い
- ピーナッツの甘味と味噌が良く合う
味の評価 ★★★★☆
お次は人気ナンバーワンのアボカドおにぎりを食べてみよう。
うーん。可もなく不可もなく、というところだろうか。ワカモレは好きだが、やっぱりナチョスとかの方が合うんじゃないか。
- こりゃワカモレだ
- ライムがさっぱりしていて具自体はおいしい
- パクチーの味があまりしない
- タコスが食べたくなる
味の評価 ★★★☆☆
あと残り2種類。次は同じく黄緑色の「枝豆&西洋わさび」。
うーん。枝豆はおにぎりに結構あうと思うのだが、ちょっとパンチが足りない気がした。パルメザンチーズを入れたらもっとうまくなるのではと思う。
- 見た目がきれい
- わさび風味のグリーンピースのおつまみの味がする
- もうちょっと塩味が効いてても良いと思う
味の評価 ★★★☆☆
そして最後の変わり種は「ヴィーガン照り焼きスモークサーモン」だ。
ヴィーガンスモークサーモンとは、植物由来の食材をスモークサーモンに真似て作った物である。生まれて初めて食べる食材だ。
でもにんじんはにんじんだよね〜と思いながら試食。
これは意外だ。食べているのはにんじんなはずなのに、スモークサーモン風味が口いっぱいに広がる。不思議だけど、嫌いじゃないぞ。
- にんじんなのにスモークサーモンの味がする不思議
- スモーキーでちょっと和風な味付けがおいしい
- 味付けがしっかりしていて白米に合う
味の評価 ★★★★☆
おにぎりは偉大
アレフさんたちによって、先入観にとらわれずに作られたおにぎりたち。初めて目にしたときは正直言って「こんなのおにぎりじゃない!」と思い、あまり認めたくなかった。
海外に住んでいた小学生時代、同級生の前でおにぎりを出したときに「気持ち悪い」と言われた時の苦い思い出がまだ心の片隅に残っていて、それに対する反感というか、簡単に受け入れたくない気持ちがあったのだと思う。
でもアレフさんと話していて、おにぎりが本当に好きなんだということがわかった。そうか、おにぎりが好きな人は、好きな具を入れて食べれば良いんだ。おにぎりの具はこうじゃなくちゃいけない!というルールはないよな、と思えるようになってきた。