水上人形劇は遊びから伝統芸能までカバーする
お風呂場で人形遊びをした記憶がないと書いたけど、今回の撮影でなんとなーく懐かしさはあったので、きっとそういう過去も自分にはあるんだろう。水上人形劇を「眠っちゃう、だがそれがいい」と評していた友人は、もしかしたらお風呂での人形遊びを無意識にイメージしていたのかもしれない。いや、さすがにこじつけがすぎた。今言えることは、世界が平和に戻ったら水上人形劇見に行ってくださいまし。
水上人形劇をご存じですか。
それはベトナムの伝統芸能。外国人旅行者にも人気だが、セリフはオールベトナム語。だが伝統芸能なので問題なし。以前なんとなく土産に買った人形がうちに転がっていたので、人形劇やってみた。舞台は家の「お風呂場」だ。
水上人形劇は「ベトナムでするべき10のこと」的な記事にほぼ載っているやつ。10から5に絞っても食い込むかも。伝統音楽の生演奏と、演者たちが声をあて、コミカルな人形たちが民話や伝説を再現する。
その最大の特徴は、名の通り「水の上」で行うこと。舞台裏から水中をくぐらせた棒やら糸やらで人形を操作する、これが門外不出とされていて、11世紀頃からあるんだとか。えっ!そんなに長かったの…。
はじめて見た当初はなんのこっちゃだったが、のちにベトナム人の友人から「眠っちゃう、だがそれがいい」と聞いて、なんとなく理解した。リズミカルなセリフの掛け合い、琴や銅鑼の音、人形たちがパチャパチャと水を跳ねながら駆け回る様子。大阪人が吉本新喜劇を見て「オチは同じ、だがそれがいい」と思うのに似てるかもしれない。
いや、ちょっと違うかもしれない。
観賞帰りに見かけたお土産用のミニ人形、「使えるかも!」と思って買ってビニール袋から取り出してすらいなかった。家といえば人形遊びだ、でもこれは水上用、となればお風呂場で人形劇やってみたい。
よく考えてみればお風呂場は子どもの人形遊びをする場所としても定番だ。水上人形劇は実は誰しも原体験なのかもしれない。と思ったけどお風呂場で遊んだ記憶が一切ないわ。実際ないのか、覚えてないのか。家の者(親)に聞こうかと考えたが、風呂場に人形を持ち込むのがバレると家にいすぎておかしくなったと思われそうなのでやめた。
と、ここで気づく。人形劇なのに人形が一体しかない!
さすがに心許ないぞ、まいったな、水に浸けても問題なくて人形らしさがあるものは…と思ったらちょうどいいもの発見。
もともと実家にあった妹の持ち物だが、嫁入り道具に選ばれていないのでまぁ勝手に使っても文句は言われまい。
お湯を張る。しかしこれが張ればいいって訳じゃないんだな。本場では人形から舞台裏につづく棒や糸が見えないように、水が深緑だったり茶色だったりと着色されてる。とはいえ実家の浴槽に絵の具を入れたらめちゃ怒られるし、私だってそんな風呂に入る気はしないし。
バブ!あちがった温泡(ONPO)!知らない!これを機に覚える!
おぉ。おぉ。ディープグリーン。当初は外まで入浴剤を、なんなら人形も買いに行かないといけないと思っていたが、奇跡的に家の中にあるものだけで事足りた。なんて世間の空気を読んだ家なんだ。家に謝意を感じたのはなかったよ。正確には入浴剤とサウスパークだけど。
湯量は少なめ、なぜなら色を濃くしたいから。
風呂場で人形遊びをするのなら、どうやったって自分も入らないといけない。というより、本場の水上人形劇も舞台の裏で腰まで水に浸かって人形を操っているそうだ。よーし、名人形使いになってやるぜ!
足が、すね毛が、映り込む!申し訳ない!申し訳ない!でも触れないのもおかしいし!いやこれ、浴槽思ったより小さかったね。大きさとしては一般家庭並だと思うが、いかんせん人形劇の舞台として狭かった…。かと言って広げられるワケもないので、足が映らないように浴槽の隅っこを舞台にするというウルトラC(でもない)で進めます。
水中から手を忍ばせて操作しようと思っていたけど、人形の裏の糸を引っ張れるような持ち方をすると、どうしても手が見える。こんなときに限って人よりちょっと大きめの手が目立つ。いや、関係ないな。隠すために少量にバブ、じゃなかった温泡(ONPO)を入れたのに。
人間、基本は手がふたつ。人形劇と言いながらベトナム人形とカートマン(サウスパークのキャラ名)を持つのが限界だった。というか、私はどういうつもりでこれだけ人形を集めたんだろう。なんかもう自分でも何をしようとしているのか分からなくなってきた。家という勝手知ったる環境なのに、過去の企画でたぶん一番予定通り進まない。
手足は隠しきれず、そもそも水は透けていて、動けるのは二体までで背景は溺死風人形。本場水上人形劇の技術の高さがうかがえますね!というよりお風呂場はあれだ、なにもかも人形遊びだ。すみません。
お風呂場で人形遊びをした記憶がないと書いたけど、今回の撮影でなんとなーく懐かしさはあったので、きっとそういう過去も自分にはあるんだろう。水上人形劇を「眠っちゃう、だがそれがいい」と評していた友人は、もしかしたらお風呂での人形遊びを無意識にイメージしていたのかもしれない。いや、さすがにこじつけがすぎた。今言えることは、世界が平和に戻ったら水上人形劇見に行ってくださいまし。
▽デイリーポータルZトップへ | ||
▲デイリーポータルZトップへ | バックナンバーいちらんへ |