特集 2020年4月21日

ベトナムの伝統芸能をお風呂場で

水上人形劇をご存じですか。

それはベトナムの伝統芸能。外国人旅行者にも人気だが、セリフはオールベトナム語。だが伝統芸能なので問題なし。以前なんとなく土産に買った人形がうちに転がっていたので、人形劇やってみた。舞台は家の「お風呂場」だ。

1984年大阪生まれ。2011~2019年までベトナムでダチョウに乗ったりドリアンを装備してました。今は沖永良部島という島にひきこもってます。(動画インタビュー

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水上人形劇は1000年つづく癒しの演劇

水上人形劇は「ベトナムでするべき10のこと」的な記事にほぼ載っているやつ。10から5に絞っても食い込むかも。伝統音楽の生演奏と、演者たちが声をあて、コミカルな人形たちが民話や伝説を再現する。

水上人形劇
全体像はこんな感じで/©Gryffindor
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こんなコミカルな人形が水上を駆け回る/©kkinjo

その最大の特徴は、名の通り「水の上」で行うこと。舞台裏から水中をくぐらせた棒やら糸やらで人形を操作する、これが門外不出とされていて、11世紀頃からあるんだとか。えっ!そんなに長かったの…。

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火花を使った「龍が火を吹く」など派手めなギミックも

はじめて見た当初はなんのこっちゃだったが、のちにベトナム人の友人から「眠っちゃう、だがそれがいい」と聞いて、なんとなく理解した。リズミカルなセリフの掛け合い、琴や銅鑼の音、人形たちがパチャパチャと水を跳ねながら駆け回る様子。大阪人が吉本新喜劇を見て「オチは同じ、だがそれがいい」と思うのに似てるかもしれない。

いや、ちょっと違うかもしれない。

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舞台脇にいるセリフと音楽を担当するみなさん

観賞帰りに見かけたお土産用のミニ人形、「使えるかも!」と思って買ってビニール袋から取り出してすらいなかった。家といえば人形遊びだ、でもこれは水上用、となればお風呂場で人形劇やってみたい。

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「コミカルなおっさん役」だったはず、間違えてたらごめん。
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温水洋一さんか、海原はるか師匠に似てる。

入浴剤で舞台を準備する

よく考えてみればお風呂場は子どもの人形遊びをする場所としても定番だ。水上人形劇は実は誰しも原体験なのかもしれない。と思ったけどお風呂場で遊んだ記憶が一切ないわ。実際ないのか、覚えてないのか。家の者(親)に聞こうかと考えたが、風呂場に人形を持ち込むのがバレると家にいすぎておかしくなったと思われそうなのでやめた。

と、ここで気づく。人形劇なのに人形が一体しかない!

さすがに心許ないぞ、まいったな、水に浸けても問題なくて人形らしさがあるものは…と思ったらちょうどいいもの発見。

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サウスパークから来たお前たちだ!

もともと実家にあった妹の持ち物だが、嫁入り道具に選ばれていないのでまぁ勝手に使っても文句は言われまい。

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意外としっくりきておる
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写真を送ってみたが、妹からの返事はない。

お湯を張る。しかしこれが張ればいいって訳じゃないんだな。本場では人形から舞台裏につづく棒や糸が見えないように、水が深緑だったり茶色だったりと着色されてる。とはいえ実家の浴槽に絵の具を入れたらめちゃ怒られるし、私だってそんな風呂に入る気はしないし。

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そんなときに救世主!

バブ!あちがった温泡(ONPO)!知らない!これを機に覚える!

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しかもディープグリーン(深緑)色と来たってんでい!

おぉ。おぉ。ディープグリーン。当初は外まで入浴剤を、なんなら人形も買いに行かないといけないと思っていたが、奇跡的に家の中にあるものだけで事足りた。なんて世間の空気を読んだ家なんだ。家に謝意を感じたのはなかったよ。正確には入浴剤とサウスパークだけど。

湯量は少なめ、なぜなら色を濃くしたいから。

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浅すぎてゴン!と、入浴剤のイメージとはかけ離れた音がした。
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さて、立派なディープグリーンな舞台は出来上がるでしょうか。
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お風呂場で水上人形劇は悪戦苦闘

風呂場で人形遊びをするのなら、どうやったって自分も入らないといけない。というより、本場の水上人形劇も舞台の裏で腰まで水に浸かって人形を操っているそうだ。よーし、名人形使いになってやるぜ!

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うん…。
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足の行き場がない!!

足が、すね毛が、映り込む!申し訳ない!申し訳ない!でも触れないのもおかしいし!いやこれ、浴槽思ったより小さかったね。大きさとしては一般家庭並だと思うが、いかんせん人形劇の舞台として狭かった…。かと言って広げられるワケもないので、足が映らないように浴槽の隅っこを舞台にするというウルトラC(でもない)で進めます。

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うん…。
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手が隠れてねぇ!!

水中から手を忍ばせて操作しようと思っていたけど、人形の裏の糸を引っ張れるような持ち方をすると、どうしても手が見える。こんなときに限って人よりちょっと大きめの手が目立つ。いや、関係ないな。隠すために少量にバブ、じゃなかった温泡(ONPO)を入れたのに。

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うん…。
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ダメだ~!二体しか操作できない!!

人間、基本は手がふたつ。人形劇と言いながらベトナム人形とカートマン(サウスパークのキャラ名)を持つのが限界だった。というか、私はどういうつもりでこれだけ人形を集めたんだろう。なんかもう自分でも何をしようとしているのか分からなくなってきた。家という勝手知ったる環境なのに、過去の企画でたぶん一番予定通り進まない。

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大前提として、ぜんっぜんお湯も透けてるしね。色の濃さって湯量に比例しないの!?

手足は隠しきれず、そもそも水は透けていて、動けるのは二体までで背景は溺死風人形。本場水上人形劇の技術の高さがうかがえますね!というよりお風呂場はあれだ、なにもかも人形遊びだ。すみません。

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近づけて手をごまかそうとしたらYouTuber風カメラアングルっぽくなった
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改めて本物と見くらべてみよう。私は今、久々に恥ずかしい。
 

水上人形劇は遊びから伝統芸能までカバーする

お風呂場で人形遊びをした記憶がないと書いたけど、今回の撮影でなんとなーく懐かしさはあったので、きっとそういう過去も自分にはあるんだろう。水上人形劇を「眠っちゃう、だがそれがいい」と評していた友人は、もしかしたらお風呂での人形遊びを無意識にイメージしていたのかもしれない。いや、さすがにこじつけがすぎた。今言えることは、世界が平和に戻ったら水上人形劇見に行ってくださいまし。

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大枚はたいて!?ごめん。

 

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