特集 2022年7月12日

砂浜にミステリーサークルを作る

ミステリーサークルとは、小麦畑なんかに一夜にして現れる巨大な幾何学模様のことである。

どうやって作られたのかは置いておいて、あれって小麦畑に作るよりも砂浜とかに作った方が楽なんじゃないか。

作ってみました。

行く先々で「うちの会社にはいないタイプだよね」と言われるが、本人はそんなこともないと思っている。愛知県出身。むかない安藤。(動画インタビュー)

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> 個人サイト むかない安藤 Twitter

なんでミステリーサークルは小麦畑にできるのか

ミステリーサークルは70年代、80年代を中心に、世界中で話題になった現象である。小麦畑に一夜にして巨大な幾何学模様が出現するのだ。すごい。当時子どもだった僕はとにかく興奮した。

しかしせっかく作った小麦をなぎ倒された農家にとっては悲劇ではないか。みんなが見に来るから悲しんでもいられないだろう。調査とか入ったら今年の食いぶちどうするのだ。もっと誰にも迷惑をかけない場所に作ればいいのに。当時からそう思っていた。

そうだ、砂浜なんてどうか。

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イギリスで見つかったミステリーサークルを研究した本を読むライター江ノ島さん。

今回はオカルト現象に造詣の深いライターの江ノ島さんに手伝ってもらった。彼はかつてミステリーサークルのジオラマを作っていたほどのミステリーサークル好きである。

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江ノ島さんの作ったミステリーサークル(俺の考えたミステリーサークルはジオラマで作れる

さいきん江ノ島さんは仕事が立て込んでおり、今朝も職場で朝を迎えてその足で来てくれたらしい。心なしかいつもよりも言葉数が少ないのはそのせいだろうか。

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それともミステリーサークルの謎を何か知っているからだろうか。
 
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お菓子とお茶を買ったら元気になったのでおなかがすいていただけかもしれない。

ミステリーサークルは大規模農場に出現することが多い。広いし作りやすいのだろう。

しかし、作りやすさで言ったら砂浜だって負けていないと思う。広いし、たとえ誰かに見つかっても叱られることもなさそう。理屈で考えると砂浜にこそ作るべきなのである。

なのにいつも小麦畑に作られているのはどうしてなのか。砂浜に作ってみることで、作者の意図が読み解けるかもしれない。

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今日はここに作ることにします。

ミステリーサークルを作ろう

ミステリーサークルの作られ方には様々な説がある。宇宙人説、人間説、竜巻説、動物説、地球のエネルギー説などなど。

いまでは人が作った説でほぼ落ち着いているということで、今回は実際に再現してみた人の記録なんかを参考にして道具を選んでみた。

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それがこれである。

 まずは参考書である。これは前に江ノ島さんといっしょにオカルトに詳しい本屋に行ったときに買ったものだ。主にイギリスに80年代に出現したミステリーサークルについて研究された本である。

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こういうのをまじめに作ってる世の中がいい。
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今回はこのCheesefoot Headというところに1983年に現れたサークルを参考にする。簡単そうだから。

小麦畑にサークルを作る場合、木の板の両端に紐をつけたものを移動させながら小麦を倒していく方法が知られているが、今回は砂なのでいわゆる「とんぼ」のような形に木材を組み立ててみた。

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現場で組み立てる主義。
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いやしかし暑いですね。
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できました。

土曜日の朝である。いちばん人が少なそうな時間帯を選んだつもりだったのだけれど、さっそくジョギング仲間に見つかってしまった。あれ、なにやってんの?と。

「今日はミステリーサークルを作ろうと思ってね」

説明しようとするとどこまでさかのぼっていいのかわからなかったので簡潔に話したが、友だちは「へえ」と言って走り去った。小麦畑なら通りかかった友人に見つかることも少ないのかもしれない。

道具をもう一つ紹介しよう。針金で作ったターゲットを付けた帽子である。これは直線を引くときに使う。ミステリーサークルは夜中に出現することが多いため、人が作る場合は星や鉄塔など、遠くにあるものを目印にしたと考えられているらしい。

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これで遠くにある目印を定めて歩くとまっすぐ歩けるという。
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ちょっと江ノ島さんにこれを使って歩いてもらえますか。
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…。
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……。
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………。

江ノ島さんは線に沿ったかのようにまっすぐ歩いていった。

「まっすぐ歩けますねー-!すごいですねー-」

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「いや、でも安藤さん、だいたいの人はこれなくてもまっすぐ歩けるんじゃないですかね。」

たぶんそうである。しかしこれが夜ならきっとそうはいかないだろう。

道具は揃った。さっそく制作にとりかかりたい。

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レッツゴークレイジー。

まずは中心に杭を打ち、ロープの一端をとりつける。

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杭はキャンプ用のペグを使用。
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ロープの長さは5メートル。
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ロープをピンと張った状態で歩いてもらい、このロープに沿って円を描くようにとんぼを動かしていく。
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するときれいな円が描ける。

ここまでは特に難しいことはなかった。とんぼを持つ人とロープを持つ人の息が合わないとけんかになるかもしれないなと思ったくらいだ。

「安藤さん、これ、こう傾いてますよ!あっちから見るとこうなってるから、もっとあっち行った方がいいと思います」

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江ノ島くんが体を使って地面の傾斜について説明しようとしていたが、何度聞いてもわからなかった。
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なんでわかんないかな。

ロープに沿って同心円を描くようにとんぼを動かして円を大きくしていく。砂の場合、押すより引く方がやりやすい。

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一人でロープを引っ張りながらとんぼを動かすのはちょっとしたコツが必要です。
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途中で石があると衝撃でロープの貼りがゆるむのだ。
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でもこれ、真夏の昼間にやるもんじゃないなと
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キ二人で同時に思った。

ミステリーサークル騒動が一つの収束を迎えたのは、「自分たちが作った」というイギリス人が出てきたときのことである。二人で夜中に作ったのだと。

僕らも二人で作業してみて思ったのだけれど、これ、一人では足りないが二人いればなんとかなると思う。最初は二人で作るなんてぜったい無理!と思っていたが、やればできる。

中心のサークルができたら東西南北の位置に小さなサークルを作っていく。この時に最初に作った「帽子ターゲット」が役に立った。

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サークルの中心にターゲットを置いて方向を決めて
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ロープの長さで位置を確定していく。

江ノ島くんは言う

「こういうのは安藤さん、遠くから指示を出す監督役みたいな人が一人必要なんじゃないですかね。」

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確かに誰かが遠くから指示してくれるとやりやすいだろう。

そう言うと江ノ島くんは荷物が置いてある高台へと走っていった。自ら監督役を買って出てくれるのだろうか。

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いいやつである。
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と思ったらお茶を飲んで帰ってきた。

真夏の砂浜である。足元から体力が砂に吸い取られていく。

巨大で複雑なミステリーサークルが夜中に作られているのは、人目を避けるため意外にも涼しいからではないか。あと小麦畑だと身を隠して作業ができるのだろう。砂浜だと隠れるところがないから周囲から丸わかりだ。カップルが僕らを見て進路変更していく。

2時間くらいかけて完成したミステリーサークルがこちらである。

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自分で言うのもなんだが、なかなかいい。

 5メートルのロープを使って作ったので、大きなサークルは直径10メートルである。東西南北に配置した小さいサークルを含めると全長20メートルほど。ミステリーサークルとしては小型かもしれないが、達成感はなかなかのものだった。もっとでかいものが完成して遠くからそれを見た時の感動は計り知れないだろう。小麦畑に作った宇宙人や人間たちも、その充実感に酔ったに違いない。

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達成感(あと腰の痛さ)がすごい。

しばらくミステリーサークルを眺めながら「なかなかいいね」「思った以上にかっこいいですね」などと話していたところに釣り人が通りかかった。

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釣りのおっさん思いっきり踏んでいって笑った。

 ミステリーサークルは近くで見てもそこにあるとは気づかないものなのかもしれない。人生みたいである(てきとうに締めた)。


結論:砂浜はミステリーサークル作りにそこそこ適している

砂浜なら作物を痛めることがないし、失敗してもやり直しがきく。代わりに人目に付くし暑いのが難点だが、前述のとおりいいところもあるので、いつかミステリーサークルが砂浜に出現することもあると思いますよ。

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