コーンスープ占いとは
コーンスープの上に生クリームがぐるっとかかっていることがある。
メニューの写真はきれいな円になっているが、実際はかなり多種多様で一期一会なラインを観察することができる。作り手のクセやポリシー、その時のキッチンの状況などが表れるのだと思う。
いつ誰が作ってもおいしい料理ができるシステマチックな環境の中「コーンスープの上にかかってるやつ」にだけは『人間』を感じた。
この血の通ったランダム性に僕の一日を委ねたい。占ってもらおうじゃないか。行く先を。
11:00 1カ所目 サイゼリヤ お茶の水駅前店
さて、そんなルールを決めて僕は今サイゼリヤにいます。
事前の検索で、サイゼリヤとロイヤルホストのコーンスープにはクリームがかかっていそうということが分かっている。
今回は東西南北どちらに行っても別のサイゼリヤがありそうなお茶の水駅前店をスタートに選んだ。
開店と同時にサイゼリアに入ってコーンスープを頼んだ(10時開店、この原稿の掲載が11時である。なんてスリル)。
間に合うか、大丈夫かとあわあわしているうちにコーンスープが来た。
机に置く動きでスープが大きく揺れた。あ、今日終わりか、と一瞬投げ出しそうになったが目を凝らしたら作者の動きが見えてきた。
占いの結果が出た。南東! 南東に向かいます!!
12:00 2カ所目 サイゼリヤ八丁堀店
コーンスープの上のやつに導かれてお茶の水から南東、八丁堀のサイゼリヤに来た。
八丁堀店はお昼時で賑わっていたが、並ばずに入れるぐらいの混み具合。これは明確なラッキーである。コーンスープの上のやつありがとう。
早速またコーンスープを頼んだ。1301。
一見分かりにくいがもう慌てない。初めてじゃないんだ。
南東に来た後に北西に行くってことは戻るのか、お茶の水に?
僕に何をさせたいの、コーンスープの上のやつは?
信じるものがなくなりそうだった時、編集担当の林さんが「お茶の水通り過ぎていいんじゃない?」とナビゲートしてくれて完全に腑に落ちた。なるほど、こことお茶の水を結ぶ延長線上に導いているのだな。
僕はコーンスープの上のやつに従って北西に行きます。
占いではないスパゲッティを食べて気がついたのだけど、占った後のコーンスープは特別な食べ物だった。スープと一緒に「北西」という情報も食べているからだろうか。占いの結果を最後食べるって、儀式めいていて良い。
13時30分 3カ所目 サイゼリヤ ドンキホーテ後楽園店
お茶の水の向こう側、後楽園のサイゼリヤを目指した。
近づいてみたら滑り台があって、昼寝をしている人がいた。
コーンスープの上のやつが僕に見せたかった景色を堪能しながらサイゼリヤに着いた。
コーンスープを頼む。
しばらく考えてこのラインを導き出した。
描き始めと描き終わりが逆の可能性もあるが、ドットが大きい方が終わり、と考えるのが自然だろう。占い結果、これでいこう。
地図を見る。真東にはサイゼリヤがない。どうしよう。
15時30分 サイゼリヤ 市川インター店
地図アプリで探すが、後楽園の真東にサイゼリヤがない。代わりに「洋食」「コーンスープ」「コーンポタージュ」などで探すがうまくいかない。天井を見上げた。
しかし、ふと地図の縮尺を変えると想定よりずっと東にサイゼリヤがあった。
ここ?本当にここでいいの?コーンスープの上のやつが連れて行きたかった場所はここ?尋ねてもコーンスープは黙って東を指すばかりである。
遠くを指されると途端に決意が必要になる。でも行こう。コーンスープの上のやつが行けって言うんだから。えいやと席を立って電車に乗った。
顔をカッカさせて大江戸線、新宿線と乗り継ぐ。今このパートを書いているのは新宿線の車内です。窓の外に江戸川が見える。向かいの席のおしゃれなおじいさんに西陽が当たって画になるなとか思っていた。
みんな自分の意思で移動しているんだろうか。僕は自分の意思で移動していない。コーンスープに乗れって言われて新宿線に乗ってるぞ。どうだ。
のどかで素敵な住宅街だった。3回の移動を終えたのでここが僕のラッキースポットということになる。ラッキースポットにふさわしいきれいな黄色いサイゼリヤ。
特に祝われずに席に着いて、最後のコーンスープを頼んだ。
皿の縁ギリギリにある方が描き始めだろう。ポタッとドットになっているのが描き終わり。
このサイゼリヤから北北東の方向に歩いてみよう。ラッキーが待っているから!
17時 最後のサイゼリヤから北北東へ
ちょうどいい方向に伸びている路地があったので、ラッキーを求めて歩く。
小さいラッキーを拾いながら歩く。歩きながらコーンスープの上にあるあれの形を思い出していた。4つの「あれ」で何かの形になるかと思ったが、特に見出せるものはなかった。
ラッキーとはなんだ。コーンスープは僕に何を言いたかったんだ。
白い。観光地にある、景観に配慮した茶色いコンビニを思い出した。そういう理由なのかな。
見ていると、このDの文字がコーンスープの上のやつに似て見えてきた。ここなんじゃないか。
そう確信して店内に入ると一番くじをやっていた。これか。これをやれってのか。やったことないよ、一番くじ。
恐る恐るレジの方にくじをやりたいと申し出ると「ドラゴンボールね!」と言って箱を差し出した。他に何かあったのかもしれない。でも、いい。ドラゴンボールでいい。
くじを引いた。念を込めて下のやつを。
A賞が一番良い賞。G賞は下から3番目。決して「ラッキー」とは言えない。
お金を使ったことで、ここで一旦これまでのことを思い出した。
良かったこと
- 散歩楽しい
- 天気が良い
- 初めての一番くじ
- レジの方がフレンドリーだった
- タンブラー、全然嬉しい。使うし
パキッとしたラッキーはないが、悪いことも起きていない。ここで振り返ってもう一度デイリーヤマザキの看板を見た。
このDもどこかを指しているのだとしたら、まだコーンスープ占いは終わっていないのかもしれない…。