特集 2023年8月10日

「コミケ雲」の作り方、気象予報士に聞きました

話にはよく聞くけど、室内に雲なんて、ホントにあり得るの?

夏のコミケ前になるとよく出てくる「今年は暑いからコミケ雲が出るかも」みたいな話。

あまりに多い参加者数、ものすごい熱気のせいで、過去に何度か屋内である会場で「雲」が目撃されたことがあるそうです。

ただ、ボクも夏コミに5〜6回は参加していますが今までコミケ雲なんて見たことないんですよね。室内に雲が発生するなんて、本当に起こり得るのか? 気象予報士の増田さんに話を聞いてきました!

1975年群馬生まれ。ライター&イラストレーター。
犯罪者からアイドルちゃんまで興味の幅は広範囲。仕事のジャンルも幅が広過ぎて、他人に何の仕事をしている人なのか説明するのが非常に苦痛です。変なスポット、変なおっちゃんなど、どーしてこんなことに……というようなものに関する記事をよく書きます。(動画インタビュー)

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そもそもの話として、たくさんの人が集まったからといって、室内に雲ができるということはあるんですか?

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はい、これはあり得ますね。

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ただ単に湿気で視界がくもっているわけじゃなく、「雲」と呼んでいいと。

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はい、雲と呼んでいいと思いますよ。

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アッサリと。じゃあどんな条件が揃うと室内で雲が発生するんでしょうか?

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雲っていうのは細かい水滴が集まったものなんですね。その元になる、目に見えない水蒸気がたくさんあった方ができやすいわけです。空間が広がるほど水蒸気の密度は薄まるので、同じ人数がいるとしたら、狭い空間の方ができやすいといえますね。

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あ、そうなんですね。でも、狭いワンルームで鍋をやっていたとしても、「鍋雲」みたなものはできないじゃないですか。

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まずは湿気がたくさんあることが条件なんですが、なおかつ、それが冷やされないと雲のような形で見えてこないわけです。

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そうか、コミケが開催されるビッグサイトは天井も高く、メチャクチャ広いですけど、それだけに床と天井付近の温度差はありそうですね。

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室内全体がエアコンで冷やされちゃうと、熱気も何も出ませんから。下から人の熱気でウワーッと水蒸気が上がって、それが天井近くで効率よく冷やされると雲ができやすくなると思います。
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上と下の温度差も重要な要素なんですねぇ

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じゃあ、もっと湿気があったら雨が降る可能性もあるんですか? 「コミケ雨」みたいな……。

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雨が降るほどの雲って、相当に分厚いんですよ。それくらいの厚み、水分がないと雨として落ちてこられないので。

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雨が降るくらいの雲って、どのくらいの厚みが必要なんですか?

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もう何百メートルとか、そういうレベルです。ビッグサイトだと、天井の高さもせいぜい数十メートルというところでしょうから、それでは雨が降るというところまではいかないと思います。ただ、集まった湿気が天井にくっついて大きくなって、それが落ちてくる可能性はありますね。

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ああ、お風呂の天井みたいな。

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そうですね。ただその液体の由来は、みなさんの汗とかなので……あまり想像したくないですけど(笑)。

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イヤだなー……。でも、水蒸気になっているということは、蒸溜されてみんなの脂みたいな成分は含まれていないと考えて大丈夫ですよね!?

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ただ、普通の雨もそうなんですけど、雨って空気中に漂っているチリや埃にくっついて落ちてくるものなので……。コミケの場合、雲が発生するくらい人が多いということは、人が動くことによって発生したさまざまな細かい物体が舞いあがって、それをふくむ液体が落ちてくるということで……。

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それは……「恵みの雨」とか言ってられないですね。
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■コミケで発生する水蒸気にくっついているモノとは…… 

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コミケに限らず、室内のスポーツ大会とかでも雲ができる可能性はあるんですか?

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ものすごい数の観客が入っていれば可能性はありますけど、スポーツ大会の場合、スポーツをする空間が必要なので、そこまでギュウギュウってわけじゃないですよね。

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そうか、あれだけの空間が人だけでいっぱいになっているシチュエーションって、かなり特殊ですよね。なおかつ、人が一気に入ってきた方がいいですよね。

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確かに。ゆっくり入場していると、その分、熱気も逃げてしまうので。さらにそこから、同じ空間に長時間いてもらった方がいいですね。

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コミケの場合、新型コロナ以降はちょっと変わっているみたいですけど、以前は炎天下に数十万人が並んで、開場と同時にドドドーッと入ってくるみたいな感じだったんですよ。

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炎天下で大勢が並んでいるということは、みなさん、熱気をため込んで入場するということですから、雲はできやすくなります。さらにいえば、外が暑いタイミングで入場してもらうとよさそうですね。

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なるほど、午後に開場した方がコミケ雲はできやすいと。……メチャクチャ過酷なコミケになりそうだけど。
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出入り口の開け閉めの際も、外の蒸し暑い空気が流れ込んでくるような状況が理想的(!?)​​​​

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これって野外でも起こり得るんですか? 例えば、人がいっぱいいる都市の方が雲ができやすいとか。

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確かに屋外であっても、大勢の人がいればたくさんの水蒸気が発生するわけですが、密閉されていないと、蒸気も逃げ放題になってしまうので……。

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GLAYの野外駐車場ライブとかは、一箇所に何十万人と集まっていましたけど、その上だけポカッて雲ができることはないわけですね。

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すごい湿気があっても、ちょっと風が吹けば一瞬で拡散されてしまうので、野外はなかなか難しいですね。

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逆に、自宅でも実験できますかね? 部屋の上の方をエアコンで冷やしつつ、ガンガンにお湯を沸かしたりして。

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十分に湿気があった上で、冷やせば雲っぽくなると思いますが、いくら湿度100%近くになったとしても、その水蒸気にくっつくものがないと水滴として現れてこないんです。だから「人が多い」というのも重要な条件なんでしょうね。

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室内で雲を作るためには、湿気が逃げない状態になっている、天井付近が冷えている、色んなものが空気中に充満している……という条件が必要なんですね。

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空気中に充満している「何か」というのは当然……。

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人が動くことによって舞いあがるほこりやチリっていうことになりますね。
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あまり意識したことはなかったけど、確かに……

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うわー……。コミケ前日にはよく、「お風呂入ってきてください」って呼びかけられていますけど、ニオイとかそういう話以前に、会場内に飛び散るほこりやチリ対策という意味もあるのかも。

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感染対策で換気をしていたら雲はできなそうですね。

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それはそうですね。

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そうか、空気中に色んなものが充満しているということは、その中にウイルスが混ざっている可能性もありますもんね。コミケ雲が見えたら、そっちの意味でも心配した方がいいのか。

⏩ 次ページに続きます

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