同じ空気を吸う
情報が十分に行き渡り、写真や映像はどんどんと綺麗なり、そこに行かなくても、それらを読み、見るだけで満足しがちな現在。だからこそ現地の空気を肌で感じることが大切なのだ。クリスマスブーツと同じ空気を吸ったのだ。つまり私はもうクリスマスブーツなのかもしれない。メリークリスマス!
クリスマスブーツというものがある。ブーツにいろいろなお菓子が入っている、クリスマスの時期になるとスーパーなどに並ぶあれだ。子供の夢が詰まったブーツとも言える。クリスマスから連想するものに、必ずクリスマスブーツは浮かぶのではないだろうか。
そんなクリスマスブーツ発祥の地は、滋賀県の草津。温泉地ではない方の草津だ。天井川が有名で、東海道と中山道の分岐点にある宿場町。もちろん琵琶湖もある。そんな地を巡ってみたい。
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ハロウィンが終わると、街はクリスマスの色を帯び始める。店先にクリスマスツリーが設置され、商店街にはジングルベルが流れ、駅前はイルミネーションで輝き出す。街はクリスマス一色になるのだ。
そんな数あるクリスマス要素の一つが「クリスマスブーツ」だ。このブーツには夢が詰まっている。子供の頃、買ってもらうのが楽しみだった。だって、いろんなお菓子が入っているのだから。
このクリスマスブーツ発祥の地が滋賀県の「草津」。外国じゃないのか、という驚きはあるけれど、草津なのだ。滋賀県の草津なのだ。温泉地ではない方の草津だ。ぜひそんな草津に行ってみたい。夢をくれたあのクリスマスブーツが生まれた地を見たいのだ。
クリスマスブーツは別に草津に行かなくとも、スーパーなどに並んでいる。今までの私はそう思っていた。しかし、先日友人から、好きなアイドルの故郷に行った、という話を聞いてハッとしたのだ。
そのアイドルは東京でも見ることができる。しかし、友人は生まれ育った街を知りたいと思ったのだ。ステージで見ているだけではダメなのだ。もちろん故郷に行ってもそのアイドルはいない。しかし、その街のことを知り、同じ空気を吸いたいと思ったのだ。これが愛なのだ。
どのような場所でクリスマスブーツは生まれたのか。夢をくれたクリスマスブーツだから、その生まれた場所の空気を吸いたい。そう思い私は草津に着くと深呼吸をした。ひんやりとした心地よい空気だった。
草津市は水津に対する陸津を意味するそうだ。草津宿本陣の宿帳には吉良上野介やシーボルトの名前もある。草津には歴史上の偉人たちがたくさん来ているのだ。そんな場所でクリスマスブーツは生まれたのである。
また草津は旧草津川が天井川として有名だ。宿場町である草津宿の特徴として歌川広重などが浮世絵に描いている。ちなみに天井川とは川底が人家よりも高くなった川のこと。川の下をトンネルが通る光景を草津ではよく目にする。
現在、旧草津川は廃川となり、跡地をまちづくりの資源として活用するため、草津川跡地公園とした。「de愛ひろば」や「ai彩ひろば」などと名付けられた綺麗な公園だ。しかも広い。近くに住みたいと感じる。
クリスマスブーツを見に行く
草津を歩いた。まだまだ魅力はあるけれど、クリスマスブーツを見に行こうではないか。クリスマスブーツの街なのでクリスマスが近づけば、商店街にクリスマスブーツギャラリーができたりするそうだ。私が行った時はまだだったけど。
間違いないのだ。草津はクリスマスブーツ発祥の地なのだ。東海道と中山道の分岐点で、宿場町として栄え、天井川があり、その天井川はいま立派な公園になり、さらにクリスマスブーツ発祥の地。草津、いろいろありすぎだ。
クリスマスというと、クリスマスツリーがメインになってくるけれど、発祥の地だけあり大きなクリスマスブーツだ。もちろん草津駅前にはツリーもあったけれど、ブーツも忘れない。スーパーはどうだろう。
東京出身の人が東京タワーにあまり登らないように、草津の人はクリスマスブーツを買わないのかな、と一瞬思ったけれど、お店によってはしっかりと売っていた。東京・狛江に住む私の近所のスーパーではあまり売っていなかったので、比べれば草津は並んでいると言える。
クリスマスブーツは草津駅近くにある「近商物産」で生まれた。昭和30年頃のことだ。今も高いシェアを誇っている。クリスマスブーツと言えば今も昔も草津ということ。確かにあまり見たことがない募集もあった。
クリスマスブーツを作る内職に、クリスマスブーツを作るワークショップ。東京に住んでいるのでクリスマスブーツを作る内職はできないし、日時があわないのでワークショップにも参加できない。そこでもう自分で草津っぽいクリスマスブーツを作ろうと思う。
クリスマスブーツ発祥の地である草津を訪れたので、草津っぽいクリスマスブーツを作りたい。そうなると野菜ということになる。草津は近畿最大級のビニールハウス群があり、施設野菜の一大産地となっている。
草津の最多栽培野菜である「水菜」、滋賀発の伝統野菜「日野菜」などを買いつつ、赤カブや唐辛子などクリスマスカラーである赤や、雪を表現するべく小カブなどを買い、草津宿でも愛された歴史ある「うばがもち」も購入した。
生け花のようである。クリスマスブーツにはいろいろなお菓子が入っている。それが野菜になったのだ。スペースを考え、どれを入れるか考えると楽しい。水菜は多めにと鍋みたいなことを言いながら作った。
緑と赤で「ザ・クリスマス」みたいなクリスマスブーツができた。クリスマスブーツ発祥の地「草津」にふさわしいクリスマスブーツになったのではないだろうか。草津の地を知り、草津のクリスマスブーツを作る。そう、それが本当のメリークリスマス。メリクリなのだ。
情報が十分に行き渡り、写真や映像はどんどんと綺麗なり、そこに行かなくても、それらを読み、見るだけで満足しがちな現在。だからこそ現地の空気を肌で感じることが大切なのだ。クリスマスブーツと同じ空気を吸ったのだ。つまり私はもうクリスマスブーツなのかもしれない。メリークリスマス!
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