特集 2024年10月16日

念願のチョコレートのたたき売りに行く

「チョコのたたき売り、買ってみたいので見ててください」

安藤さんとアメ横を歩いていたら、急にそんなことを言われた。

上京してからずっとやってみたかったそうだ。たしかにたたき売りのお店、実際に買いに行ったことはないかも。長年の小さい夢、叶えてもらいましょう。

1993年東京都生まれ。与太郎という柴犬と生きている普通の会社員。お昼休み時間に事務員さんがDPZを見ているのを目にしてしまい、身元がバレないかハラハラしている。

前の記事:飴玉は2個舐めてもいいかもしれない


上野アメ横と言ったら、「入れちゃえ入れちゃえ」

上野と言ったらアメ横。昼下がりにアメ横を歩くとだいたいお昼から飲んでいる人たちや、いろんなお店の掛け声が入り乱れている。

そんな中でも有名なのが、威勢のいいおじさんが「入れちゃえ入れちゃえ~!」といいながらお菓子を袋にたくさん詰めてくれるチョコレートのたたき売りだ。たぶんアド街に100回くらい出てる。

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ライターの與座さんにも来てもらい、お店を探す。

11時過ぎで、まだ開いてないお店も多々あり、人もアメ横にしてはまだ少ない。でもたたき売りのおじさんはきっといるはず。安藤さんを筆頭に、例の店を探す。

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安藤さん「え、あれじゃない??」
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安藤さん「あったあった!これ!!」
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たしかに、チョコレートたたき売りと書いてある。ここだ!

看板におまけとかいていたら、もうそれはおまけじゃなくてレギュラーメニューではないのかと一瞬よぎったが、下町でね、そんな理屈っぽい話は野暮なんです。

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ぬるっとはじまり、急に盛り上がる

お店を見るなりずんずんと進み、サービスの説明を受ける安藤さん。

この日、筆者はシンプルなクレープを食べるまでの葛藤に付き合ってもらったのだが、優柔不断な自分とのあまりの差にびっくりする。すべてが速い、これがむかない安藤。

安藤さん「これってどうやってやるんですか?」

お店の人「ここに見せてるお菓子をあれして、たたき売りします」

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お菓子の種類はランダムのようだ。店内はおびただしいほどのたたき売りの張り紙が。

お店の人「この内容でよければはじめるということで、やりますよ」

安藤さん「じゃあ、やってもらってもいいっすか」

お店の人「はい、やりますよ~~」

はじまった。しかもぬるっと。

一人の店員さんが袋を開けて待ち、もう一人がお菓子を見せる。

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お店の人「はい、まずはもちもち大玉チョコボール3つ~」

お菓子をひとつずつ袋に落としていく。店員さんは「どんどんいきます~!」の声とともに新たなお菓子を見せてくれる。 

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「抹茶味小枝、限定商品~!!」

限定のチョコ3つ、これだけでほぼ1000円近く行くのでは……。

「こんな入れてくれるんですか?」「え~すごい!」 はしゃぐ與座さんと筆者。安藤さんは「う、うれしい……!」と喜びに打ち震えている。

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「ポップキャンディも入れちゃいます~!」

チョコじゃないのに……! 

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「もう一個小枝入れちゃえ~」

このあとも、12時まで限定でもう一個おまけしちゃうとか、ついでにカントリーマアムもとか、おまけの連続がつづいた。

お店の人「全部で2000円以上入って1000円です~!」

一同「うわ~~~~!!!!!」

日本語としても商売としても破綻している。どう考えてもおかしいけど、もう感嘆の言葉しか出てこない。

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安藤さん「安い!!!うれしい!!!」

お値段以上の量、そしてエンターテインメント要素に高揚感MAXの安藤さん。ぱんぱんに入った袋を渡されて、終了。

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安藤さん「涙出るほど楽しかった……」
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「こんなだよ!?だって!!!!」

見てたよ。見てたから。最前で、自分のためにやってくれるたたき売りを目の当たりにして、興奮が収まらないようだ。大人がここまで興奮している姿、久々に見たかもしれない。

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40年やっている

これだけで儲けが出るとはとても思えない。お土産用のお菓子も別で売っているのでそっちで売上を立てているのだろう。

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ちゃんと銘菓っぽいやつも売ってる。

お店の人に話を聞くと、なんと40年もやっているとのこと。

與座さんが「一回思いついただけで40年食えんだ」と呟いた。すげえよな。

たたき売りに喜ぶ我々の声につられて、このあとお客さんが結構来ていた。賢いシステム。

改めて、安藤さんに話を聞く。

―――今回どうしてたたき売りに行ってみたかったんですか?

「チョコレートのたたき売りは、僕がはじめて東京に来た頃から気になっていました。でも派手すぎてどういうシステムで誰が買うのか、どうやって買ったらいいのか(当時はその場で値段交渉していくシステムだと思ってた)わからなくて、チャレンジできずにいました。」

―――やってみた感想は?

「意を決してお願いしてみたら完全に最高でしたね。1000円渡すとただおっちゃんが袋に好きにチョコレートを放り込んでいってくれるシステムで、こちらは交渉とかなにもしなくていいです。

おっちゃんはさすがプロで、ほんとはすごい良いものだけど今日はオマケだ入れちゃえ!みたいな雰囲気で豪快にかつ迅速に放り込んでくれるので気分がいいし、メニューの端から端まで全部ちょうだい!くらいの富豪になった気分になれます。1000円であの気分にさせるのはすごい。」

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パンッパンになるまで入れてくれるから、お手頃なのに豪遊してる気分になる。

―――夢をかなえて、世界の見え方は変わりましたか?

「同じ1000円使うならチョコレートのたたき売りに使いたい、と、脳がたたき売り換算になっていました。2000円飲み放題、とか言われても、だったらチョコレートのたたき売り2回やるから、と。

あとこの日は暑かったので、外で取材しているあいだじゅう、ずっとチョコが溶けないかばかり気にしていました。月餅さんがバターシュガーのクレープをぐずぐずいつまでも買わないので、早く買えやチョコが溶けるだろうって思ってました。」

―――実際のお菓子の内容的にはどうでしたか?

「わくわくしながら家に帰って、袋を開けてみたら保冷剤が入っていました。親切!

内容に関しては、正直自分で買うかと言われたら買わないラインナップかもしれないですが(ほとんど知らないお菓子だった)、だからこその出会いもあるのかもしれません。チョコがたくさん手に入って得、というよりも最高に興奮するエンタメとして体験してもらいたいです。英語でやったらニューヨークに出店できると思います。」

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始まった瞬間のうれしそうな背中よ。本当に良かったですね。

たたき売りをしたいと言われたとき、その場の空気に乗っかれなかったら気まずいのでは、と不安に思っていた。しかしやってみると、なるほどこれがプロかと思うほどスムーズに、気がついたら盛り上がっている自分に気づかされる。ディズニーのアトラクションみたいだ。

上野の究極のエンタメは、美術館でも、動物園でもなく、チョコレートのたたき売りかもしれない。

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この笑顔が、証明です。

 

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