特集 2018年12月14日

筑後川水辺のドボクさんぽ

筑後川は雄大だなあ、水流れてないけど

忙しいときに限って、グーグルマップなんかで知らない場所の地図を眺めたりしてしまう。先日も、九州最大の河川である筑後川を上流から河口までたどっていたら、なんだか気になる施設をいくつか見つけたので、実際に見に行ってみた。

1974年東京生まれ。最近、史上初と思う「ダムライター」を名乗りはじめましたが特になにも変化はありません。著書に写真集「ダム」「車両基地」など。
(動画インタビュー)

前の記事:専門家と行くダム見学会に参加した

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暴れ川になりたい

筑後川は、熊本県の阿蘇山麓から大分県、そして福岡県へと九州北部を西に横断し、最後は佐賀県に入って有明海に流れ出る。昔から暴れ川として有名で、関東地方を縦断する利根川、四国を横断する吉野川と並んで、日本三大暴れ川に数えられている。

日本三大暴れ川、声に出したい日本語である。もし馬に生まれ変わったら暴れ馬になりたいし、川に生まれ変わるなら思う存分に暴れ、暴れ川と呼ばれ恐れられたい。などと思ってしまうのは、思春期にちょっと不良に憧れるみたいな感情だろうか、と思ったけどもういい歳なので単に日頃のストレスかも知れない。

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暴れ川のイメージ

そんな、全国に名を轟かす暴れ川を抑え、その水を使うため、筑後川にはいろいろな施設が造られている。上流には洪水と戦うダムもいくつかあるけれど、今回は中流から河口にかけてのエリアを見てまわった。

と言いつつスタートはダム

スタート地点に選んだのは大分県と福岡県の県境にある夜明ダム。ちょうど筑後川が山あいから平地に流れ出てくる場所にある。

山間部(右)と平野(左)の境にある

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夜明ダム

九州電力が管理している夜明ダムは、川幅いっぱいにゲートが並んだ、ダム好きから見ればいかにも発電用といったたたずまい。高さは15mで、日本の河川法で定められているダムの定義の下限ピッタリなので、ダムとしては大きくないけれど、直下にいた釣り人と比べるとダムという構造物の巨大さが分かるのではないかと思う。

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釣り人ってホントどこにでもいるなー

夜明ダムにも暴れ川に因むエピソードがあって、建設中の1953年に大雨ですさまじい濁流に襲われ、ずらりと並んだ水門外側の左右両岸が決壊してしまったという。

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当時の状況はよく分からないけれど、この部分が崩れてしまったのだろうか

また、記憶に新しいところでは去年(2017年)の九州北部豪雨のときにも、増水の影響でなんと管理事務所が流されてしまった。暴れるにもほどがあるだろう。

酷い仕打ちを何度も受けて少し悲運だけど、筑後川の豊富な水量を今日もせっせと発電所に送っている健気なダムだ。

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この場所に管理事務所があったという

豪雨の爪痕

夜明ダムを出発して下流に向かうと、遠くの山肌のあちこちに、木がなくなって茶色い地面がむき出しになっているところが見えた。おそらく去年の九州北部豪雨のときに土砂崩れが起こった場所なのだろう。

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いたるところがこんな感じだった

このあたりの福岡県朝倉市は特に被害が大きかったところで、筑後川に流れ込む支流を少し遡ると、洪水で水や土砂に押し流され、元の地形や街並みがどんなだったか分からないくらいに何もなくなっている場所がいくつもあって、豪雨と被害の規模の大きさに目眩がした。

筑後川に沿って走る国道386号沿いも、洪水の被害を受けて廃屋になった家や店舗、更地になっている土地が目についた。

江戸の堰と昭和の水路

夜明ダムから5kmほど下流に、ダムというほど大きくはないけれど、川を横切る段差が造られている。これは1674年に築造された大石堰だ。徳川将軍で言うと3代家光、5代綱吉に挟まれてちょっと地味な4代家綱の時代である。

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こういう堰も興味あるのだけど無数にあるので追いかけはじめるとキリがない

現地の看板やネットで調べた情報によると、もともとこの場所からは、下流の土地に水を送るための用水路が地元の人々によって1664年に開削された。10年後、その水路を拡張した際に、確実に大量の水を引けるように大石堰が造られたらしい。ただ現在見られるのは、昭和になってから改修された姿のようだ。

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左が筑後川、右が分岐する用水路
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開削から350年以上経ったいまでも下流の土地を潤している
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堰を造って水位を一定に保つことで安定して水を引くことができるのだ

腰が抜けるような巨大なダムも良いけれど、川の流れに溶け込むこういったゆるやかな堰も良い。人生にもっと時間とお金があったなら、こういう河川構造物をじっくり見てまわって過ごしたい。

しかし今日は日没までに河口まで行かなければならないのだ。先を急ごう。

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