特集 2023年5月10日

絶景の野付湾、氷上チカ釣り体験

ワカサギのようでワカサギでない魚を釣って分けて食べる。

凍りついた水面に丸い穴を開けて釣る魚といえばワカサギが有名だが、北海道の野付半島ではチカというしゃれおつな名のワカサギよりちょっと大きい魚が釣れ、シーズンになると地元の人を中心に釣り人のテントが、凍りついた海の氷平線をむこうに回してに立ち並ぶ。

チカは食べておいしいだけでなく、コミュニケーションを生み出す。そんな地元のつながりに少し飛び込ませてもらった。

1975年神奈川県生まれ。毒ライター。
普段は会社勤めをして生計をたてている。 有毒生物や街歩きが好き。つまり商店街とかが有毒生物で埋め尽くされれば一番ユートピア度が高いのではないだろうか。
最近バレンチノ収集を始めました。(動画インタビュー)

前の記事:新型コロナが生んだ民芸・オリジナルマスクコレクション

> 個人サイト バレンチノ・エスノグラフィー

吹雪の氷平線に並ぶテント群

1月の終わり、野付は朝からやや吹雪いていた。どうしたものかと待ち合わせの場所に行ってみたが、ごうごうと吹き付ける風に舞う雪の向こうにはテントが並んでいた。

南極物語かよ。

 テントのほうへ歩いていくと、突然草木は無くなり一面の広大な雪原が広がる。何もない。わざとらしいくらいに何もない。

草原の向こうは別世界。

それもそのはず、そこは海の上、北海道は野付半島の内側に広がる野付湾である。12月の下旬ぐらいから厚い氷に覆われ、1~2月の厳冬期になると楽勝でウォーキングできるようになる。

外海はめっちゃ荒くれているのでモーゼでもない限りウォーキング不可。

広大な海上で待ち合わせ。

ここで待ち合わせていたのは当サイトのサケや道東記事の取材でおなじみ、標津サーモン科学館の西尾さんである。この時期の休日のご当地レジャー、「氷上チカ釣り」にまぜてもらう事となったのだ。

西尾さんと長男の諒太くん、GoPROのキャプチャなので氷平線がえらいことになっている。

西尾家は1時間ほど前からここにテントを作り、釣りをはじめていた。

「せまいところですがどうぞ」

そんな感じで招くところなのかと氷上の別荘におじゃますると、細長い魚体をきらめかせながら無数の魚が雪を叩いていた。

西尾さん「1回すでにフィーバーが来て、それからコンスタントに釣れています」

このどかどか釣れている「チカ」という魚は何なのか。あまり聞いたことがないし、関東ではスーパーで見かけたりもしない。

野付半島といえばシカだがチカとは関係ない。
いったん広告です

 「本州では東北でとれるみたいですがあまり知名度はないですよね。北海道ではポピュラーな魚です。知らない人に雑に説明する時はワカサギのでかいやつと言います(笑)」

――ああ、でもたしかにワカサギっぽいですよね。

「どちらも同じキュウリウオ科の魚です。他にはシシャモなんかも同じ仲間ですね。サケ科とも近くてサケのようにアブラビレがあります」

なんといっても名前がおしゃれでいいよね「チカ」、月曜日のユカみたいで。

――パッと見ワカサギよりかなりでかい印象ですが。

「今年はかなり大きいのが釣れている印象ですね。ただサイズが同じぐらいになると見分けるのはけっこう難しいです」

突然飛び込むマニアック見分け図「ワカサギは背ビレの前端が腹ビレの前端より後ろにありますがチカはその逆になります」。就職試験とかで「どっちがワカサギですか」と聞かれた時のためにおぼえておこう。(標津サーモン科学館提供資料に筆者が加筆)

――釣りに使う道具はワカサギといっしょなんですか?

「ほぼ変わらないです。まずは穴を開けないとはじまりません」

テントや釣り道具はそりに乗せてポイントまで運ぶ。

体を支点にハンドルをぐるぐる回して穴を開ける。間違えてタイムラプスモードで撮影してしまったことだしタイムラプスで見ていただこう。

開けた穴にコマセを少々、水深が浅いので短いしかけで竿を垂らす。餌はサシ(虫エサ)

「氷でよくわからないかもしれませんが、ここの水深は1mもないくらいで魚を目で追いかけられるほど浅いです。数ある釣りの中でも魚との距離がミニマムに近いのではないかと思います」

ちょっとすると、こくんと竿先がおじぎする。
釣れた!やったぜ!

休む間もなくチカが釣れる。釣りというより漁の様相を呈してきた。超イージーではないか。

たわいのない会話がはずむ爆釣の模様をどうぞ。

「だめな時は本当に釣れません。ぼうずとまではいかなくとも3時間ねばって3匹とか......。回遊魚なのでそのルートに当たらなかったり、潮の流れなんかにも影響を受けると聞きますけど必勝法はないですね」

ヤンキー座りでたばこのかわりにチカをただ見つめる。不漁の時はこんな感じか。

我々と少し離れたポイントでやっていた方は「いやあ今日はさっぱりだったわ」とわずかなチカをそりに乗せて引き上げていた。豊穣と不毛は隣り合わせなのだ。

またがんばりましょう。

⏩ 釣れたチカを料理して食べます!

▽デイリーポータルZトップへ つぎへ>

banner.jpg

 

デイリーポータルZのTwitterをフォローすると、あなたのタイムラインに「役には立たないけどなんかいい情報」がとどきます!

→→→  ←←←

 

デイリーポータルZは、Amazonアソシエイト・プログラムに参加しています。

デイリーポータルZを

 

バックナンバー

バックナンバー

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ