特集 2024年10月2日

小さいほど高評価!「小さい秋見つけた」選手権を開催した

残暑というにはあまりに厳しい暑さのせいで「秋はなくなった」とまで言われる昨今だが、それでもやっぱり秋はある。あるのだ。
今回は日常の中で見つけた「小さな秋」、もとい「秋を感じさせる小さな何か」の、その「小ささ」を競い合う遊びを思いついたので、紹介したい。

変わった生き物や珍妙な風習など、気がついたら絶えてなくなってしまっていそうなものたちを愛す。アルコールより糖分が好き。

前の記事:ハンザキ祭りでハンザキ獅子舞に頭を噛まれてきた

> 個人サイト 海底クラブ

「小さな秋を探そう」の呼びかけに集まる人々

「それぞれの小さい秋を持ち寄って比べたらおもしろいのでは!?」と思いついたのは9月末の金曜の夜のことだった。サトウハチローの「小さい秋みつけた」の歌詞があまりに詩情たっぷりなのに触発されてのことだ。
その目論見は、あくまで小さくて些細でニッチな秋を見つけて愛でること。秋たけなわになってしまってはむしろやりにくいに違いない。そこでさっそく、翌々日の日曜に「小さい秋見つけた」選手権を催すことにした。急な誘いにも関わらず自分を入れて4人が集まることになった。持つべきものはフットワークの軽い友達である。

image19.jpg
ライターの拙攻さんから、参加できない代わりにメッセージが届いた。拙攻さんはモズの声ならぬ婆の声に秋を感じるらしい。すばらしい。求めていたハイコンテクストでニッチな「小さい秋」がさっそくみつかってホクホクした。
image35.jpg
京都市内の鴨川と高野川が合流する鴨川デルタと呼ばれる場所に集合した。
image15.jpg
近くには豆大福で有名は「ふたば」という和菓子屋があって、いつも長蛇の列ができているのだが、
image10.jpg
ここにも小さな秋が!これはかなりわかりやすい秋。
image13.jpg
集まった人たち。左から順に野咲さん、暴力と破滅の運び手さん、蜂本さん。

一応「選手権」と銘打ったので、まずルールを説明することに。とはいえこれがなかなか難しかった。もともと「秋を感じさせる何かの小ささ・微かさを比較したらおもしろいのでは」という思いつきから始まった企画だが、言うまでもなく秋を感じさせる何かのサイズを測るための基準など存在しない。
苦心した末に、物理部門と解釈部門の二つに分けることにした。それぞれのレギュレーションは、ざっくりと以下のような感じである。

物理部門
秋を感じさせる物を持ってきて、その物理的なサイズを競う。

解釈部門
自分にとっての秋を連想させるものを持ってきて、なぜ自分がそれを秋だと感じるのかをプレゼンし、その奥ゆかしさを投票で競う。持ってこられないものの場合は写真でも可。

例えば拙攻さんがメッセージで語ってくれた隣家の婆の笑い声などは解釈部門に属するべきものであろう。隣家の婆の笑い声は、それ単体ではまったく秋らしくないけれど、コンテクストと合わさることで「小さな秋」となるのである。着眼点、ストーリー、屁理屈が「うまい!」と感じさせた人が勝者となる。なんだか歌合せのようである。

image12.jpg
参加者はみな気合が入っていたが、野咲さんに至っては秋に対する感度を高めるため土曜のうちに秋の季語を復習してきたという。たいへんな人に勝負をふっかけてしまったかもしれない。

小さな秋を求めて、散策開始

一時パラついて主催者の肝を冷やした雨も上がり、一同は思い思いの小さな秋を探すべく鴨川デルタ近辺に散っていった。

image14.jpg
河岸に向かって歩く者。
image24.jpg
桜の木の根元を一心に見つめる者。
image36.jpg
筆者。負けてられないぞ!
image18.jpg
わかりやすい秋があった。

とりあえずキープ。でもそれほど小さくないし捻りも効いてないかな。

image9.jpg
色づく気配を見せ始めたイチョウ。まったく小さくはないけれど、間違いなくこれは秋!
image3.jpg
お彼岸の時点では開いていなかったヒガンバナもようやく咲き始めた。
いったん広告です
image20.jpg
桜の木の下だけ赤っぽく染まった歩道。
image16.jpg
この赤い色は、モンクロシャチホコという桜の葉を食べる蛾の幼虫の糞が溶けたものである。8〜9月頃に発生する虫だから、秋だけでなく晩夏も混じっているとはいえ、これはなかなかに小さいぞ(物理)。
image25.jpg
虫といえば、水溜りを覗いてもボウフラがいないと秋という感じがする。この不在も小さな秋(解釈)だ。

こうして意識して探してみると、世界は秋の兆しに溢れていることに気付かされる。気温こそなかなか下がってくれないものの、我々に秋の訪れを感じさせるものは日一日と確実に増えているのだ。
そして、植物や虫のような自然物だけでなくて、人の生活にも秋はじわじわとにじり寄ってきていた。

image5.jpg
店頭に並ぶ松茸(アメリカ・カナダ産)。
image27.jpg
きゅうりが値上がりし、逆に茄子が値下がりしたのも秋っぽい。
image21.jpg
叩き売りされる花火。
image2.jpg
若干暑さが和らいだ状態で見る、こういう夏を意識したデザイン。物悲しさがあって却って秋を強く意識させられる気がする。

ただ、売れ残った花火や夏を意識したデザインなんかは、人によっては秋というよりも夏の終わりだと感じられるだろう。このあたりの線引きは非常に曖昧である。どういう説明をつけるかが悩ましいのだ。

⏩ 参加者が持ち寄った「小さい秋」の発表

▽デイリーポータルZトップへ つぎへ>
20240626banner.jpg
傑作選!シャツ!袋状の便利な布(取っ手付き)買って応援してよう

 

デイリーポータルZのTwitterをフォローすると、あなたのタイムラインに「役には立たないけどなんかいい情報」がとどきます!

→→→  ←←←

 

デイリーポータルZは、Amazonアソシエイト・プログラムに参加しています。

デイリーポータルZを

 

バックナンバー

バックナンバー

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ