特集 2019年4月22日

インスタントコーヒーを茶道の茶せんで混ぜて飲む

茶道で使う「茶せん」という道具がある。
茶道では粉の抹茶を使用し、それをお湯に混ぜてお茶を作るのだが、そのかき混ぜる時に使う道具が「茶せん」だ。

茶道のためだけの道具だと思っていたのだが、これでインスタントコーヒーを混ぜると美味しくなるという。本当だろうか?

1984年岐阜県生まれ。変な設定や工作を用意して、その中でみんなでふざけてもらえるような遊びを日々考えています。嫁が世界一周旅行中。

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茶せんの本来の使い方

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これが「茶せん」
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粉の抹茶を茶碗に入れ、
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お湯を入れてかき混ぜる。この時の道具が「茶せん」。

きっかけはおばあちゃん

そんな茶せんを使ってインスタントコーヒーを作ると美味しくなる。この情報の主は義理のおばあちゃん。お正月に妻の実家に行ったとき、「最近インスタントコーヒーを茶せんで混ぜて飲んでいる」「おいしくなる気がする」と言っていた。

茶道の上品なイメージからだと思うが、その話を聞いて、素直に美味しそうだと思った。
それに、おばあちゃんの知恵袋が言っているのだ。間違いはないだろう。

すぐにでもやってみたかった。
ただ、まだ結婚してから日が浅く、数度しか行ったことがない妻の実家。余計な手間をかけるのが恐縮で「やってみましょう!」と言うことができず、そのまま時が流れてしまった。

この好奇心とモヤモヤ、次におばあちゃんに会うまでに解消しておきたい。

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「ぽたぽた焼にもまだ書いてない、おばあちゃんの知恵袋を開く!」と書こうと思ったら、最近のぽたぽた焼には知恵袋がなくなっていた。

粉末系ドリンクを茶せんで混ぜて作る

ということで、実際に試してみよう。
せっかくなので、インスタントコーヒーだけでなく他にもいろいろな「粉から作る飲み物」を茶せんで混ぜてみることにした。

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それぞれ、お湯や水に入れて茶せんで混ぜる。自然と姿勢が良くなる。

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比較として、スプーンで混ぜたものも作る。姿勢が悪い。
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道具は、お茶のたしなみがある友人ナトリさんに貸してもらった。

ナトリさんは、ほぼ毎週お茶のお稽古をしているような方なのだが、今回の企画を相談したら二つ返事で協力してくれた。「茶せんでコーンスープを混ぜる」なんて聞く人が聞いたら怒られそうだが、理解のある友人がいて良かった。

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飲み手として、もう1人友人に来てもらった。

変化があったのは「インスタントコーヒー」と「コーンスープ」

それぞれ試してみた結果、違いを感じられたのは「インスタントコーヒー」と「コーンスープ」だった。

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インスタントコーヒー 

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インスタントコーヒーでは、茶せんで混ぜたものの表面に細かい泡ができていた。はっきりとした違いが出たことに、一同が「おぉー!」となる。昔ネスカフェのCMで言っていた美味しいコーヒーの証、「クレマが立つ」というやつだ。 

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いつもの濃いコーヒーが、ふわふわでマイルドになった感じ。

そして味の方は、一言で言うと「やわらかくなる」だ。コーヒー特有の苦みや酸味が中和されて奥の方に隠れ、上品で飲みやすい飲み物になった。
一方で、その苦みや酸味を刺激として楽しみたい人からすると、「薄くなった」という感想になるかもしれない。好みは分かれるかもしれないが、おばあちゃんが茶せんコーヒーの方が美味しいと言っていたのは納得だ。


コーンスープ
続いてはコーンスープ。

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茶せんで混ぜた方が、少しだけ表面が黄色い
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「あぁ、なんか、混ざってる感あるね。」

こちらは一言で言えば、「よく混ざっている」だった。
そしてそれによって、ジャンキーなしょっぱさと粉っぽさが薄まり、なめらかで上品なコーンスープになった。家庭の味からレストランの味になった感じだ。

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近所のベーカリーレストランの味!

茶せんというやさしさ

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インスタントコーヒーもコーンスープも、茶せんで混ぜることで「特有の刺激がやわらいだ」という点で共通していた。そしてそれは、茶せんを使うことで「よく混ざる」「空気が含まれる」ことによるものだった。

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今回持ってきてもらった茶せん。毛先が内巻きカールになっていて、素人から見てもよく混ざりそう。

昔、「夜まわり先生」のドキュメンタリーがよくやっていた。

先生は夜の繁華街を歩き、たむろしているトゲトゲした少年少女に話しかける。少年少女は最初は反発するものの、徐々に先生に心を開き、つらい身の上を話し、更生していく。
先生の愛とやさしさが、トゲトゲした少年少女を丸くするのだ。

苦み・酸味・しょっぱさ、それぞれにトゲトゲしていた飲み物たちは、今回茶せん先生の愛とやさしさ(かき混ぜと空気)に出会って丸くなった。そんな感じだ。

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逆に言えば、今までのスプーンでの混ぜ方ではきちんと混ぜきれておらず、彼らが本来持っていたやさしさを引き出しきれていなかったことになる。なんか、今までごめんな、という気持ちになった。

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ごめんな。
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ちなみに、茶せんで混ぜたら苦手な粉薬が飲みやすくなるんじゃないかと思っていたが、そこは全く変わらずまずかった。

食べ物でもやってみた

当初はここまでで終わる予定だったが、飲み物で試して分かった「茶せんで混ぜると空気が含まれる」ということから、「混ぜて作る食べ物に使ったらフワフワになって美味しそう!」という新たな好奇心が生まれたので、後日試してみた。

【試したもの】
・玉子焼き
・ホットケーキ
・フルーチェ
・納豆

その結果、玉子焼きとホットケーキで期待通りのフワフワなものができた。

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どちらも見た目にはほとんど変わりがないが、
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食べると自然と笑みがこぼれるフワフワさ

特に玉子焼きは、箸で混ぜたものとの差は歴然。料理があんまり得意ではない自分でもワンランク上の逸品を作れた感じがした。そのフワフワさとほどけていく卵に、常に口の中がいやされていた。

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箸で混ぜるのに比べて白身がけっこう残っているが、それが良かったようだ。
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ホットケーキの断面。茶せんで混ぜた方に空気の穴が多くできている。
 

義理のおばあちゃんの話をきっかけに試してみた「茶せんで混ぜて飲むインスタントコーヒー」。僕にも違いが感じられて本当に良かった(内心心配だった)。

いろいろと試してみて、茶せんは「やさしさ」をもたらすことが分かった。
そして今回変化を感じられたのはコーヒー・コーンスープ・玉子焼き・ホットケーキと、どれも朝食にピッタリなものばかり。
今度おばあちゃんに会ったら、このやさしい「茶せんモーニング」をふるまおうと思う。

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