秘密の特訓開始
私が選んだ絵のモデルは、ショートケーキ。モチベーションが上がる題材を選んだ。おいしそうならやる気が途中で失せることもあるまい。
とりあえず、資料を見ずにそらで描いてみたら大変なことになった。
なんでこんなに破れかぶれなんだ。
一応本気で描いたつもりなのだが、どう見ても投げやり。心のどこかで「これから上手く描くんだからこんなもんでいいや」とか思ってしまっているのかもしれない。
ここから先は用意した写真の資料を元に、きちんと忠実に描いていく。きちんと、だ。
気合いを入れ直して第一段階へ。
第1段階・手元を見ないで描く
描く対象だけを見て、えんぴつを持つ手は見ずに描いてみる。こうすることで、描く物に集中できるのだそうだ。
ケーキに挑む前に、難しいと諦めていたの自分の手を描いてみた。
ちょっと美術の教科書を思わせるタッチに。ぶさいくながら確かに進化した気がするぞ。
手元を見ないで描くため、一カ所一カ所、できるだけずらさずに描かなければならない状態に追いやられる。自然と描くのに時間がかかった。こんなにじっくり物を描いたのは初めてかもしれない。
同じ手法で、ショートケーキも描いてみよう。
「あれ、なんだ、ここに線描くのでいいのかな? 感覚がつかめない。あ、イチゴのつぶつぶ付け忘れた。影とかこの辺に描いても大丈夫かなあ……」
文字通り暗中模索の中、完成。
あわわわ。
手のひらのように、ひとふで書きができるものならいざ知らず、ショートケーキは見ないで描くと何がどこにあるのかさっぱりつかめない。どうにもならない、気持ちの悪い物が描けてしまった。
手のひらには有効な練習だったけど、ケーキを描くとなると これは明らかに手法の選択ミスだ。
それでもなんとなく、描く対象にのみ注目することと、その感覚はわかった気がする。気を取り直して、第2段階へ進む。