予習をしてから行く
台湾に立つ直前、横浜中華街でチャーハン部の活動があった。台湾で大変人気らしいチャーハン屋の日本店に行ってきたのだ。
全体的にやさしい味付けで、あとから辛さを足したり、ザーサイでアクセントをつけたりするスタイルだった。
台湾人の友達も、台湾のチャーハンは味付けが薄めだと言っていた。なるほど、そういうものなのだな、と舌で確認し、偵察は終わった。
予習は完璧だ。チャーハンを注文し、地元の人と見紛う程スムーズに調味料やザーサイを小皿に盛る自分の姿が浮かぶ。いざ、現地へ。
5月中旬でもびっくりするくらい暑い。これはチャーハンでも掻き込まないとやってられないな。
台湾の友達が付き添ってきてくれたので言葉の壁もすいすいだ。
御礼にチャーハンをごちそうしたけど、有無を言わさずチャーハン屋に連れられてチャーハンを食べさせられるのって、どうなんだろう。チャーハン部しかうれしくない可能性があるな。
わくわくしながら注文票を覗く。台湾では注文票に書く方式をよく見る。
一時期のサイゼリヤみたいだね。サイゼリヤはあの時代に戻ってください。
「牛肉炒飯で!」と書き込もうとしたら、その横に「小辣/中辣/大辣」の文字が。
この店は辛さを選ぶそうだ。そんなの聞いていないぞ。サンプル1でモノをわかった気になっていると、こういうことがある。謙虚に生きようと思った。
ところで筆者は辛さへの耐性があまりない。辛すぎるものを食べているときの気持ちと、怒ったときの気持ちがとても似ている気がして、イライラしてくるから苦手なのだ。何を言っているかわからなくて大丈夫です。
友人が注文票を店員さんに渡しに行ったが、なにやら話し込んでいる。
「うちの店のチャーハンは結構辛いから、小辣でも無理かもよ」とのこと。
じゃあほんのちょっとにしてください。こわいので。
ガツンとくるうまさ、横綱級
めちゃくちゃ辛かったらどうしよう……とか、今口内炎なかったっけ……とか不安がぐるぐる回り、上の空で会話をしながらチャーハンを待つ。
他のお客さんを見てみると、みんな涼しい顔をしてチャーハンを食べている。てことはそんな大したことないのか。
一喜一憂している間に、チャーハンがきた。
まず思った。黒い。こってりしてそうな見た目だ。そして肉がでかい。江ノ島部長が好きそうなタイプのチャーハンだな、と日本に思いを馳せる。
ぱっと見た感じ、辛そうな感じはしない。匂いも香ばしくて辛いもの感はない。
ガツンとくるタイプのチャーハンだ。お米の粒立ちを感じながらも、しっとりしている。
お肉が大きいのも、ごちそう感があってうれしい。
これは横浜で食べたチャーハンとは全然別物だ。
食べるシーンで分かれそうな印象だった。この日みたいに暑くて汗をかいているときには塩気の強いこのチャーハンがいいのかもしれない。
芯から熱くなる辛さ
気がかりだった辛さだが、そんなに強くない。
じわ~っと辛さは感じるが、おいしさの一部として機能しており、むしろ食が進む。
そう思っていた5口目くらいのことである。
一口目の時に感じた辛さがずっと口の中に残り、二口目、三口目とどんどん辛さが蓄積されていく。飛び上がるほど辛いとか、むせるとか、まったくそういうわけではないし、ずっと味はおいしい。でも、ただただ辛いのだ。体の芯からじわじわと熱くなってくる。これはすごい。サウナか???
「辛い料理はやたら赤い」というイメージが強かったが、本当に辛い料理は全体の色なんて関係ないのかもしれない。
あまりの辛さにヒイヒイ言っていると、店長さんらしきおじさんがお客さんたちにライチを配り始めた。台湾旅一番の目的はライチを食べることだったのだが、図らずともここで達成してしまった。
「辛くなったらこれ食べてね」とのことだった。やさしいな。双子の卵とか、当たってほしい。
店長曰く、このチャーハンはコショウを使わず、オリジナルの調味料を使っていて喉が渇かないようになっているとのこと。確かに、辛いから水を飲んだりライチを食べたりするけど、しょっぱさから喉が渇くという感覚にはならない。これが旨さの秘訣か。