オオクワは鯛のメタファー
「ムカデ?そりゃいるよ。だって我々が、虫たちの世界におじゃまするんだから」
そりゃそうだ。だからムカデがいたって当たり前なのだ。当たり前、当たり前・・・とは言うものの、なるべくならお近づきにはなりたくない。足が6本を超える虫は特に苦手だ。よって頭にはキャップ、首・顔にはタオル、そして軍手・長袖・長ズボン・長靴といういでたちで、仕事終わりの夕方、中央本線で山梨へと向かった。
友人H氏とO氏は朝から車で先発して、ポイントを探したりエサを仕掛けたりしているはずだ。ここから2ページ目の途中までは、H氏・O氏の2人の行動の記録である。
H氏・O氏は中央高速で山梨某所へ。とあるICで降り、そこから山間部を目指す。
今回の狙いはオオクワガタ。しかしそれはめったに見られるものではない。お2人は10年前からこのツアーを敢行しているそうだが(ちなみに2人とも30代。高校時代の同級生だそうである)、1度も見たことがないという。
今でこそ、養殖モノならホームセンターなどで数千円で買えるオオクワガタだが、両氏の小さい頃には最低で3万はしたそうだ。
ちょうど、魚釣りに行く人が「今日は鯛釣って帰るからなー!」と言うのと同じ。「オオクワガタ捕りに行く」といっても、オオクワガタは気合入れるための「概念」に近いのだ。
私のフェロモンが勝つか
夜までにすることといえば、場所の下見とエサの仕掛け。これが重要だ。明るいうちに、ポイントとなる木がどこにあるのかアタリをつけておかないと、暗くなった後ではどこがどこだか全くわからない。そしてその木とは、クヌギである。とにかくクヌギを探すのだ。
そしてポイントは、
・樹液が出ている
・カナブンなどが集まっている
そういう物件を探すのだ。聞けば彼らは昼過ぎから18時くらいまでずっと、目を皿のようにしてそのようなクヌギを探していたのだという。すてきな大人だ。
途中、他のものに目移りしながら、樹液のよく出ていそうなクヌギを探して車を走らせる。
昆虫をおびきよせるための仕掛けエサであるが、これはとても簡単。バナナを焼酎に漬けたものだ。本当は1日~2日焼酎に漬け、ぐじゅぐじゅにしておくのがいいそうだが、今回は手軽に、当日買出ししたバナナをチューハイに漬けボンネットの上に放置しておいたものを使う。
あらかじめ渡しておいた、私の使い古しのストッキング。それに詰めて、これはと思う木にくくりつけておく。履きつぶした自分のストッキングに昆虫が集まり、そこで宴会が開かれるのだと思うと、なんだか興奮する。いや、しちゃいかんだろ。