東京の最西端と最東端にあるバス停とは?
東京都内のバス停の東西それぞれ端っこにあるバス停はどこなのか。実はこれがちょっと面倒くさいというか、ややこしい。
東京バス協会が発行する『東京都内乗合バス・ルートあんない』という都内を走るバスとバス路線が網羅された書籍がある。これによると、東京都最西端のバス停は、奥多摩町の留浦(とずら)というバス停だ。
そして、最東端のバス停を調べると、江戸川区にある京成バスの「江戸川スポーツランド」というバス停が最東端だろうということがわかる。
留浦は山梨県との県境にちかく、江戸川スポーツランドは千葉県との県境に近い。直線距離だと約84キロほどだが、道なりの距離をはかるとおそらく100キロは超えるだろう。
しかし、ここで忘れていけないのは、東京都には島しょ部があるということだ、もちろんこちらも東京都であることには変わりない。
調べてみると、江戸川スポーツランドよりも東側にある小笠原諸島の父島で運行している小笠原村村営バスの境浦海岸というバス停が「東京都のバス停最東端」ということになるらしい。
ということは、最西端から最東端まで「バスだけ」を乗り継いで移動するのはそもそも不可能なことがわかる。途中で小笠原行きのフェリー(片道3万円ぐらい、24時間かかる)に乗ることが必須となってしまう。
そんなわけで、今回は「東京」の定義を「東京都区部と多摩地域」ということにして、その最西端から最東端まで移動する……ということにしたいと思う。
始発で奥多摩に向かう
東西バス移動の旅。朝4時に起床し、自宅の最寄り駅から始発列車で留浦に向かう。
電車を乗り継ぎ、奥多摩駅までやってきた。奥多摩駅からは県境を超えて、山梨県の丹波山村(たばやまむら)まで向かう西東京バスの路線があるので、さらにそれに乗り換えて留浦に向かう。
この日は、あいにく天気がよろしくなく。翌日には東京にも雪が降るという予報があった(2日後、実際に雪が降り都心部でも雪が積もった)が、奥多摩は一足早く雪が降っていた。
山道をくねくねと走るバスに1時間ほど乗ると、ついに留浦の停留所までやってきた……のだけれども、今回は県境を超えたかったので、留浦からふたつ先にある鴨沢というバス停まで行く。
鴨沢は山梨県丹波山村だが、県境に隣接しているため、ほぼ東京都といってもいい。
そもそも東京の「多摩」という地名は、丹波山地方を流れていた「丹波(たば)川」が転訛して「多摩川」と呼ばれるようになり、多摩川が流れる下流の地域を「多摩」と呼ぶようになったのが有力な説という。
県境の橋を渡る直前に「ここから先は、東京都のシルバーパスが使えません」という、県境の非情さを告げるアナウンスがきける。
橋を渡ると、すぐに鴨沢のバス停に到着。
朝5時すぎに自宅を出発し、電車とバスを乗り継いで鴨沢に到着したとき、時刻はすでに9時すぎとなっていた。丹波山村鴨沢地区のようすをしばしごらんいただきたい。
もう、ここまできたということで、ひと仕事終わったような心もちになってしまうが、これから江戸川区の東京都最東端バス停まで、バスだけを乗り継いで向かわなければいけない。
バスを降りて、辺りの写真を撮っていると、バス停の前に居たおじさんが声を掛けてきた。話を聞くと「登山するならそんな格好じゃだめだ」と注意された。ぼくらは登山するわけではないことと、このままバスで折り返すだけですと伝えて許してもらった。
ついでに、バスが出るまで時間が潰せそうなところがこの近くにあるか聞くと「ちょっと歩いた先に休憩所があるけど、猫がいるから、猫アレルギーじゃなかったらそこがいいんじゃない?」と教えてくれたのでそこに向かうことにした。
猫カフェで時間をつぶす
おじさんに教えてもらった通り、しばらく歩くと休憩所が見えてきた。バスの時刻までそこで待機させてもらうことにした。
鴨沢は、東京都の最高峰である雲取山への登山口がある。この日もこれから登るのか、下山してきたのかわからないが、登山の装備をした人が何人か居た。この休憩所は、そういった人たちのための施設のようだ。
休憩所で飲みものを頼み、椅子に座って一息つくと、人なつこい猫が出迎えてくれた。
しばらくすると、外を散歩していたもう一匹の猫も帰ってきて、ストーブの前の椅子に座って、暖まり始めた。
しばらく猫を撫でていると、先程バス停で声をかけてきてくれたおじさんが休憩所にやってきた。ここはおじさんの店だったらしい。
おじさんは、福島の安達太良山の山小屋で働いていたが、数年前にこちらで登山者などのための休憩所を開設したのだという。
ひとしきりそんな雑談をしていたのだが、山小屋からの無線が入ると、おじさんは下山する登山者を迎えに行くために出かけていった。
留浦スタート
バスの時刻が迫ってきたので休憩所を辞し、留浦バス停に向かう。
留浦のバス停のすぐ近くに、留浦の浮橋がある。
浮橋は文字通り、水に浮かせた板を向こう岸まで繋げて人が渡れるようにしてある橋だ。
本来ならば、向こう岸まで渡れるらしいのだが、残念ながら、今はダムの水位が低いため、封鎖されてしまっている。立ち入り禁止の黄色いテープが過剰に事件性を感じさせてしまう。
さて、東京最西端のバス停・留浦。
このバス停から江戸川区のバス停までバスだけに乗って行くことになる。
バスの時間11時20分まで30分ほどあったので、トイレに行って帰ってくると、すでにバスが来ているという。事前に調べた時刻では11時20分となっていたが……どういうこと?
来ているバスの行き先をみると、奥多摩駅となっているので、えいままよ、と急いで乗ってしまった。
あわてて乗ったので、バスの写真を撮ることができなかった。今後、うろたえながら乗ったバスはバスの写真が無いことをご了解いただきたい。
スマホで調べてみると、どうやら一本早い便の10時55分奥多摩駅行きバスに乗ったらしい。予定が狂うわけでないので大丈夫だが、焦ってしまう。
『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』みたいに、現地でそのつど調べて乗るのも面白いけれど、ちょっとそういうのはしんどいので、申し訳ないけれど今回は事前に下調べをした上で乗り継ぎをやっている。
バスはさきほどきた道をそのまま逆に折り返し、ゆっくり走る。途中で下山してきた登山客を何人か乗せ、30分ほどで奥多摩駅に到着。
時刻は11時26分。次に乗り継ぐ予定のバスは12時14分発なので、40分ほどの余裕がある。
駅前にだし巻き定食の店があったので、そこで昼食をとることに。
なんとなく偶然入った店だったのだが、ここが大当たりだった。
だし巻きたまごというか、玉子焼きというと、おかずとしては二軍のような気がするけれど、この店のだし巻きたまごは、だしがあふれるほどみずみずしく、だしの味もしっかりついていてかつ、ふわふわしており、ご飯のおかずとして絶品だった。だし巻きたまごへの認識が改まる一品ではないだろうか。
などと、のんきに食レポしている暇はなく、時刻は刻々と近づいている。あわてて店を出てバス停に向かう。
時刻通り到着したバスに乗り込み、川井駅まで向かう。