米はそこに在る
タイトルに選手権と付けてしまったので、一応優勝を決めますが「(商品名なし)」ということで、みなさん異存はないのではないでしょうか?
備蓄米とか米価高騰とかいろいろあるんですが、結論としては「米はそこに在る」ということがわかりました。米は世界に存在している。以上です。
スーパーで売っているお米といえば「ひとめぼれ」だとか「あきたこまち」みたいな、ブランド名で売られているものがまず思いつきます。
ところが最近、市場に備蓄米が出回るようになってきてから、無味乾燥で色気のない商品名のお米が出回るようになってきました。
お米の名前、どこまで無味乾燥になれるでしょうか?
お米の商品名は、複数の銘柄や産地、産年が異なるお米をブレンドしているブレンド米は、お米の銘柄名ではない商品名で売っています。
今年の春頃に政府が備蓄米を放出しはじめると、商品名に色気のないブランド米が出回りはじめました。
消費者の気を引くような奇抜な名称の銘柄米がある一方、そっけない商品名のブレンド米もなかなか味わい深いなと思い、記録していたものが溜まってきたので見てください。
「備蓄米」
備蓄米だから、備蓄米というド直球ネーミング。商売っ気がないというか、特に右側の米袋に関してはほぼ色気がなく、潔さが突き抜けていて清々します。
左側の備蓄米の方が、水田のイラストや「里山紀行」という謎のキャッチフレーズがあってすこし色気があるわけですが、このなけなしの色気もそれはそれでまた味わいがあるような気がしてきます。消印風の里山紀行。里山からの便り……みたいな意味でしょうか?
「お家ごはん」
ブレンド米の名称としては結構色気があるネーミングですね。とはいえ、米の銘柄そのものをアピールするわけでないところが、絶妙なラインです。
お米の袋に米の調理例の写真があるのもハッとさせられます。そういえば、今までお米の袋に米料理の実例が印刷されたもの、あまりみたことありません。あったかも知れないけれど、少なくとも僕は初めて見ました。
「いつものお米」
お家ごはんと似たテイストになるんですが、いつものお米です。赤の斜め線は赤富士ということのようです。ポーランド国旗ではありません。なかなかスタイリッシュで、シンプルでかっこいい。
「お家ごはん」とか「いつものお米」というのは、まだ商品名をつけようという意思が感じ取られて、売り手の「ぜひご購入ください」という気持ちがこちらに伝わってくるわけですが、次からはもっとハードなやつが来ます。
「国産米」
はい、出ました国産米。商品名に関しては事実しか書いてないという鋭い刃物のようなネーミングです。米の商品名に「国産米」というのは、転校生が「こんにちは、哺乳類です」と自己紹介するみたいな話でしょうか。
稲穂のような模様が、日の丸弁当の梅干しぐらいのアクセントになってますが、商品名の書体がちょっと太めのゴシック体なのもいいです。毛筆体とか古印体みたいなのを使って色気を出して俗っぽくしないという判断もすばらしい。
「かろやか」
最近、お米売り場でアメリカのお米というのも売られるようになってきました。で、米国米(いっぺん言ってみたかった)にも商品名がつけられるのですが、これは「かろやか」でした。
カルローズというのが、ひとめぼれとかコシヒカリに当たる部分で「かろやか」が商品名……ということでよいのでしょうか?
商品名の丸ゴシックも、ハリウッド映画に出てくる日本語フォントそのままの看板感があるのは不思議ですね。
「大地の力」
とっても力強いネーミングです。パワーオブザアースというわけです。英訳するとアース・ウィンド・アンドファイヤーみたいでね。写真は、カルフォルニアの乾いた大地を潤す用水路。そしてその両脇に黄金色の稲穂を垂れるカルローズ……でしょうか?
大地の力。けっこう色気のある商品名だし、それっぽい写真を使っているけれども、これ2、3日見て色々考えたんですが、ツッコミどころが無いんです。普通すぎてある意味無味乾燥になっている。というのがおもしろいです。
「おかずが引き立つこだわり米」
商品の簡単なセールスポイントを「……です。」とか「……ました。」で終わらせて、タイトルの近くに書くと無印良品っぽさが出ますね。
「お米が大好きなあなたのために」という部分にちょっとした色気が出ちゃってますが、これがなければ完全に無印良品でした。
「国産備蓄米」
国産米+備蓄米=国産備蓄米。もう、ここまでくると侘び寂びを感じます。しかも、白一色というデザインも素晴らしい。もはや抽象絵画です。「国産備蓄米」。お米界のシュプレマティスム(抽象絵画の一派)といっていいでしょう。
そして、お米の商品名の無味乾燥さはどんどんエスカレートしていきます。
「米」
出ました、米。もはや、備蓄米だとか国内産ブレンドとかそういう段階ではないやつです。米。米だもんな、納得しかない。
私達が1+1=2という数式を見たときに感じる感情を、まさか米を見たときに思い起こすなんて。
これ以上、無味乾燥なお米は無いだろってぐらい無味乾燥なんですが、いや、まださらに上があるんです。
「(商品名なし)」
商品名なしです。もちろん、本当はあるんでしょうが、消費者に訴えかける商品名は一切ありません。販売業者やなどの必要最低限の表示があるのみです。
わたしたちは、文字という記号を使って言葉や感情をやりとりする以上、文字のくびきから逃れることができないわけです。しかし、この米はそういった文字を排除し「米という存在そのもの」として、そこに存(あ)る。
人が言葉でいちいち仕分けしなくても、世界はすでにそこに在る……ということでしょうか。
タイトルに選手権と付けてしまったので、一応優勝を決めますが「(商品名なし)」ということで、みなさん異存はないのではないでしょうか?
備蓄米とか米価高騰とかいろいろあるんですが、結論としては「米はそこに在る」ということがわかりました。米は世界に存在している。以上です。
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