一生に一度は殴られてみたい
ガラス瓶で頭を殴られるのが、子どもの頃からの夢だ。
いったいなにを言っているんだと思われそうだが、もちろん本物のガラス瓶で殴られたいわけではない。アクション映画などでおなじみの、戦いの最中に瓶を頭に叩きつけられ、派手に砕け散るあのシーンのことである。
子どもの頃からジャッキー・チェンが大好きで、弟とよくカンフーのまねごとをしていた。ジャッキー映画に限らず、アクション映画では瓶を使った乱闘シーンをよく見かける。
あれから数十年、年齢を重ねてもあの頃の憧れは色あせない。瓶で頭を殴られたいという熱い想いは、今も胸の奥で静かに燃え続けている。
長年の夢を今、実現したい。
飴細工?それとも…
アクション映画で使うガラス瓶といえば、飴細工と相場が決まっている。しかし、いちから作るとなるとなかなかハードルが高い。作り方もあれこれ調べたが、どれも失敗オチの予感しかしなかった。
過去のインタビューでジャッキーが「飴細工はかえって危険。本物の瓶のほうがいい」とコメントしていたことをふと思い出す。先ほど挙げた『レッド・ブロンクス』でも本物の瓶が使われていたらしい。さすがジャッキー、やることが違う。
しかしあれはジャッキーだからできることで、わたしが見よう見まねで本物の瓶を使ったらただの事故だ。ジャッキーがやれば名シーン、わたしがやれば労災案件である。
飴細工は作れない、本物の瓶は危険、ほかになにかいい方法はないだろうか。
編集の石川さんに相談したところ、『セメダインBBX』を使って作るのはどうかと助言をもらった。
セメダインBBXは、貼ってはがせる性質を持つ接着剤。接着したものをあとから取り外したり、位置を調整したりできる優れものだ。
BBXの力を借りて、早速割れる瓶を作ってみたい。
ペットボトルで試す
はじめに、ペットボトルを使って試作品を作ってみよう。
説明にある放置時間に沿って放置し貼り合わせる、予定だったが、放置中に掃除を始めたらすっかり忘れてしまい5倍くらい長い時間放置してしまった。
みそ汁が温まるのを待つあいだに洗いものを始めたら鍋のことをすっかり忘れてみそ汁が吹きこぼれたり、レンジが終わるのを待つあいだにべつの料理を始めたら温めたものを取り出さないまま何時間も経っていたり…そんな毎日を繰り返し、わたしは一生懸命生きている。
数時間乾かしたのち、これを使って殴ってもらおう。
試作品で殴ってもらう
夜になった。早く殴ってもらいたくて、わたしはうずうずしている。
ペットボトルでも、これから殴られることがわかってるとそれなりに怖い。予告ありの痛みという点では、注射を打つ前の「チクッとしますよ」と同じだ。身構える時間がある分、逆に恐怖を感じるのかもしれない。
うまくパリーン!と砕け散ってくれるとうれしいのだが…
あらかじめ切って貼り合わされているペットボトルでも、殴られると普通に痛い。予想はしていたが、予想通りに痛くて思わず笑ってしまった。
そして、頭に当たったペットボトルはというと
粉々とまではいかなかったが、ひとつの部品を残してほとんどがバラバラになった。
殴った側いわく、振りかぶった勢いで頭に当たる前に一部が飛んでいったかもしれないとのこと。動画で見返したら、振りかぶった勢いかわたしの頭に当たった反動でかわからないくらいのタイミングで、ペットボトルの底部分が飛んでいっていた。
これらの結果から、試作品で得た気づきとしては
② パーツをもっと細かく、多く切る
③ 接着後放置時間にほかのことを始めない。忘れるから
この3点だ。
改善を重ねれば精度が上がっていき、最終的に瓶が砕け散るように見せられそうな気がしてきた。
殴られる恐怖と多少の痛みは伴ったが、いい試し殴りだった。
再度試作する
1回目の反省を活かし、試作品第2号を作る。
1回目と同様ペットボトルだが、今回はパーツの数も増やしたい。
ただ、多く切り過ぎてどれがどこのパーツか自分でもわからなくなり焦った。まるで立体パズルじゃないか。
貼り合わせる作業もより慎重に。ペットボトルの薄い切り口に適量のBBXを塗る作業が難易度高めだが、はやる気持ちを抑えてできる限り丁寧に塗ったつもりだ。
さぁ、これを使って再びぶん殴ってもらおう。
試作品第2号は砕け散るか
再び、空手の稽古場にて。今週もペットボトルとともに参加。
痛いのはわかってるのでもうさっさと殴っちゃってください。
試作品第1号での反省を生かしよりしっかりくっつけたら、今度は割れなくなる不具合が発生。割れもせず、飛びもせず、ただただペットボトルでぶん殴られる事態に。
BBX、接着の塩梅が難しすぎる…
あらかじめ衝撃を与えたおかげか、最終的には頭に当たって無事割れてくれた。
ちなみに初回から割れた回までのあいだに2回、ただのぶん殴り事件を挟んでいることもここに記しておきたい。
接着力が強すぎたのか、多く切り出し復元に苦労したパーツも期待したほどはバラバラにならなかった。
本番用は第1号ほど弱すぎず、第2号ほど強すぎず、ちょうどいい接着具合を目指すしかなさそうだ。

