缶ぽっくりは缶の数だけある
背の高い缶で作る缶ぽっくりもわかりやすくおもしろいが、低いツナ缶の缶ぽっくりもスピードが出ておもしろい。弱い缶が潰れないようにそーっと歩くのも楽しい。缶ぽっくりは缶の種類の数だけあると言っても過言ではあるまい。過言どころか当たり前のことしか言ってない。
みなさんも自分にぴったりの缶ぽっくりを探してみてください。か、家にあった空き缶で適当に作る缶ぽっくりがいちばん正解のような気もします。
一斗缶で缶ぽっくりを作ってもう3年( 「一斗缶で缶ぽっくり」 初出:2004年6月27日)。
あのころは一斗缶にこだわっていたけれど、別の缶でも楽しい缶ぽっくりが作れるのではないか。大きいだけではなく、もっと趣のある缶ぽっくりができるかもしれない。
3年前よりも老獪な缶ぽっくりを目指します。
※2007年6月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。
もっと趣のある缶ぽっくりができるのではないだろうか。なんて書いたが、実はとあるムックの編集部から共同企画のオファーがあったのだ。
ワールドフォトプレスから出る「冒険缶詰」というムックである。
3年前の一斗缶で缶ぽっくりの記事を見て、いっしょにいろんな缶ぽっくりを作りませんかとメールがきたのだ。インターネットを通じて知らない人から「あーそーぼー」と声をかけられたのだ(そういえば最近そうやって人んちの前で叫んでる子どもいませんね)。
しかし僕が缶ぽっくりのオーソリティのような扱いである。わはは。オーソリティに恥じないようにいくつか缶を用意した。桃缶、粉マスタード缶、ホワイトソース缶…。缶を用意するという建前で好きなものをキロ単位で買っただけといえばその通りだ。
粉マスタードは撮影の前に挨拶がわりにおすそわけした。
子どものころ、近所のバス停に見たことないお菓子を配るおばさんがいたが、初対面の人にマスタードの粉を配りながらその人のことを思いだした。あ、いまおれ、あの人だ。
撮影は駒沢公園で行った。しかし雨のため歩道橋のしたに陣取って缶ぽっくりを作った。ものによっては缶が堅くて用意したキリではうまく穴が開けられない。
同行した横山さんが(今回、撮影協力のため、横山さんと大北さんが同行しています)キリを回さずに、キリの後ろを石で叩くとスムーズに穴が開くことを発見した。
石を使うことが便利だと発見したのだ。
石を使う方法は瞬く間に関係者に広がった。何万年もこんな感じで石器が普及したのだろう。いま僕は品川区でいちばん石器時代の人の気持ちがわかる男である。
視点が高くなるだけでなんでこんなに楽しいんだろう。缶ぽっくりに乗っただけでみな一様にだらしない笑顔だ。缶ぽっくりの前では老若男女も貧富の差もない。いや、言い過ぎた。缶ぽっくりにのってても貧乏は貧乏だ。
次のページはどの空き缶が缶ぽっくりに適しているかを観察します。
10種の缶に乗ってみて、そのなかでのおすすめは1号缶。高さもあって、缶も丈夫で歩きやすい。しかも騒音も少ない。ただ、1号缶は手に入れるのが難しいので400g程度の桃缶の大きさでもいいだろう。
ツナ缶などの平べったい缶も独特の履き心地があって面白かった。高い缶をハイテクスニーカーにたとえるならば、ツナ缶はデッキシューズである。
かっこよく言ったつもりがただの高さの話になっているような気がする。
缶ぽっくりの履き心地を確かめるために我々3人は走ったり草むらを歩いたりしていたのだが、だんだん楽しくなってきてただはしゃいでた。
草むらに入ったり、走り回ったり、通りかかった子どもに缶ぽっくりを自慢したり。
カメラマンも僕らのテンションの高さに気づいていつのまにか僕らの写真ばかり撮ってくれている。
「あ、そのポーズかっこいい!」
ほめられると嬉しいのでまた新たなポーズをとる。 雨が降ってようがお構いなしである。ウェブマスターとして横山、大北というはしゃぎスキルが異常に高いふたりを連れてきたのは誇らしい。が、ちょっと恥ずかしい。
「この写真、アルバムだしたときのジャケットに使えるよ!」
興奮して横山さんは言うが、缶ぽっくり乗ってるアーティストなんて見たことがないし、たぶんこれからもいないと思う。
と、ここまでの取材は実は4月に行ったものなのだ(だから微妙に厚着だったりするのだが)。6月に入ってあのときのようすが載っているムックが発売された。
冒険缶詰 ワールドムック619
ワールドフォトプレス
1600円+税
いろんな缶詰が載っているカタログ的な本のうしろのほう、半ページほど我々のはしゃいだ写真が載っていた。
ほかの記事とのトーンの違いに注目です。
背の高い缶で作る缶ぽっくりもわかりやすくおもしろいが、低いツナ缶の缶ぽっくりもスピードが出ておもしろい。弱い缶が潰れないようにそーっと歩くのも楽しい。缶ぽっくりは缶の種類の数だけあると言っても過言ではあるまい。過言どころか当たり前のことしか言ってない。
みなさんも自分にぴったりの缶ぽっくりを探してみてください。か、家にあった空き缶で適当に作る缶ぽっくりがいちばん正解のような気もします。
▽デイリーポータルZトップへ | ||
▲デイリーポータルZトップへ | バックナンバーいちらんへ |