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特集


フェティッシュの日曜日
 

一斗缶で缶ぽっくり

 

子供のころ、業務用の缶詰で缶ぽっくりを作っている同級生がいた。

僕はすごくうらやましかった。あれより大きな缶ぽっくりを作りたい。中村より大きいやつを。あ、名前を出してしまったが、ことあるたびに思い出していた。中村の缶ぽっくり。

やり残したことに折り合いをつけるため、初夏の土曜日、代々木公園に向かいました。
(text by 林 雄司 / photo by 住 正徳


 
代々木公園
水がきもちいい。
昨日も3時まで飲んでいた。
「おお!」 「おー」


僕が考えた海ごはん山ごはん

6月26日、代々木公園は思い思いの休日を過ごす人たちがたくさんいた。楽器の練習、絵を描く、ベンチで昼寝、フリスビーであそぶカップル。

思い思いの振れ幅のいちばん端に「缶ぽっくり」がある。

まずは缶についた汚れを洗う。この一斗缶は南青山の和食屋さん「京菜」でもらってきた。

気温は30度を超えているので水が気持ちいい。一斗缶に太陽が反射して水がきらきら光る。

いま僕、「海ごはん山ごはん」みたいじゃないだろうか。さわやかな男女が外でごはんを食べる番組だ。撮影係として同行してもらった住さんにそういうと、

「いや、どちらかというとホームレスです。」

ああ。たしかに、ホームレスの人が同じ缶でたき火をしているのを見かけるな…。缶切りでふたを開けながら話をする。

「でも、これは僕の25年来の夢ですから」
「四半世紀越しの」
「今日のことも25年後に思い出すんですかね」
「………。」

58歳の僕はどんな思いで一斗缶ぽっくりを思い出すだろう。意外に缶ぽっくりに乗っていたりするのだろうか。

ふたが取れた。我慢しきれずに缶の上に乗ってみる。

「おお!」(林)
「おー」(住)

缶は約30センチなので2メートルの視点だ。がぜんやる気が出てきた。

缶の横に穴を開けて…
あれ、ひもが通らない

いろんな知恵を総動員して

ひもを通す穴を開ける。

「これでいいかな。あれ、通らない」
「なんか知恵が試されている気がしますね」

缶ジュースを買うように訓練されてるチンパンジーってこんな気分なんだろうか。ウキ?ウキキ?

穴をドライバーやペンチで広げてロープを通す。このロープは住さん提供の「船も結べるロープ」だ。ロープを適当な長さで結ぶ。結び方は住さんが知っていた「船も結べる結び方」である。

まだ片方だけだけど、乗ってみる。ひもを引っ張ってみる。

こ、こ、これは…、おもしろい。おもしろいぞ!

ひもを引っ張ると自動的に足があがる感覚、力まかせの浮遊感。

「船だって結べます」
「お、おもしろい!」
 

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