メイクを落とすのに40分かかった
すべて本文中で書いてしまったのであとがきにすることが何もない。今日は銅像になった。そういうことだ。
参考文献:青銅の特徴と日本伝来後の歴史
銅像になりたい、という思いにウソはつけない。自分の心に正直に、今日は銅像になりたい。
善は急げ、という言葉がある。つまりそれは、早く銅像になった方がいい、ということである。
今回は”胸像”になる。
胸像で調べてみると「人間の胸より上の部分をかたどった像のこと」とあり、バストアップまでのものもあれば、胸元までしかないものも見られる。サイズについて特に明確な基準がある訳でもないようだ。
今日はこちらのタイプの銅像になろうと思う。作戦はこうだ。
うまくいくかは分からない。ここまで来たら読者の皆様にできることは筆者を見守っていただくことだけである。
背景のシワも目立つしTシャツを着ていることも丸わかりだ。このままでは厳しいが…
急にヒゲが濃くなったのは別日に撮影したからです。なんでヒゲって生えるんだろうな。
胸像になる目処がついたらさっそく髪の毛から銅像たらしめていく。
今回は青銅…青緑色に近づけていくことなる。取り出したるは1日だけ髪色を染めることのできるヘアスプレー。便利なものがあるのだなー。
引っ越してきたばかりの新居だ、壁を汚したら青緑色の涙を流すことになるのでベランダに移動する。カラッとした良い風。夏はもう終わるらしい。
黒髪がここまで綺麗に染まるとなんだか嬉しい。1DAYクレイジー、8色も色展開があるようだ。休みの日、気分転換に、とか普通に楽しいんだろうな。
というわけで見た目が順調に”負のYouTuber”になった。
ここから巻き返して立派な銅像になれるだろうか。
さて、ここからは銅像になる上でもっとも大切な、肌を青緑色にする工程である。メイク用品の選定は慎重に行いたいが、我々デイリーポータルZには頼りになる味方がいる。
『はじめての3Dポリゴンメイク』でもお世話になった舞台用化粧用品店の三善さんである。
銅像になりたいのですが…と相談をしたところ、”ライニングカラー”なる商品をおすすめしてもらった。舞台メイクや特殊メイク、ショーメイク、ボディペイントなどに使用するものだそうだ。
少し古びた風合いを出すなら茶色を混ぜるのも良いそうだ。
あとはひたすらスポンジでとんとんと叩いていく。ライニングカラーの他にいらない、何も。捨ててしまおう。
このような元の肌の色と大きく変えるメイクをするときに忘れがちなのが鼻の内側だそうで、ここを塗り忘れると悪目立ちしてしまう。
このあたりはMIYAKOさんによるメイク動画で勉強させていただいた。彼女は「異色肌ギャル」として活動されている方で、腕まできれいな緑色にされていた。
異色肌ギャルを自分の師として熱心に観るような未来がおれにはあったのだ。
ちなみにMIYAKO先生も三善のコスメを使っていた。同じでうれしい。
耳を塗るのが難しい。さらに言うと撮影後、もっとも色を落としづらかったのも耳の中だ。原稿を書いている今も耳が緑色である。耳が緑でも入稿はできる。
ところで、筆者がいま目指している青銅とはそもそも、銅を主成分とし、錫(スズ)を含ませた合金のことだそうだ。
添加するスズの量が少なければ10円硬貨のような赤色に、スズが多くなると黄金色になる。それらが大気中で酸化され、やがて青緑色になるのだ。いわゆる緑青(ろくしょう)である。
さて、あまりに自分の写真ばかり並んで居心地が悪かったので強引に青銅の話を挟んだ。ここからはもう、おれだけです。
どうにかこうにかデコルテまで緑色になったので、胸像に見えるよう撮影を重ねる。
肌がうすだいだい色だった昔の自分より、今は背景の黒と肌の色味が近く、簡単には前に浮き出てこないのだ。
どうやら部屋は暗くしたほうが良さそうだ。自分だけに光が当たるようカーテンを少し開けて…外が暗くなる前、日が落ちる前に撮り切るべきだこれは。
なんやかんや調整した末の1枚がこちら。
できた!
よく見るとTシャツの首元がこすれ、緑色が付着しているのがわかるが充分だろう。首から上が浮かんでいるように見える。はず。
こうなってくると白が目立つ瞳の部分も緑色にしたくなってくるが、今日はここまで。これより先は際限のない銅像沼だ。
写真を撮り終えた後は、このままメイクを落とすのがなんとなくもったいない気持ちになり、
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