ちょっと聞いてよ 2023年5月15日

謎の種子を揉むだけでできる、台湾スイーツ「オーギョーチ」を作ってみた

愛玉子(オーギョーチ)という名前を聞いたことがある方も多いだろう。バーミヤンのデザートメニューにも名を連ね、比較的知名度の高い台湾スイーツだが、何からできているかと問われると判然としない。海外の寒天ゼリーみたいなやつ……くらいの認識だ。

先日、アメ横を歩いていたらオーギョーチのキットらしきものを見つけた。意外な中身だが、はたしてこれだけでスイーツを作ることができるのだろうか?

日本ソムリエ協会認定ワインエキスパートの花屋。花を売った金で酒を買っている。

前の記事:【検証】「水出し」と「氷出し」で、緑茶の味はどう変わる?

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件のキットがこちら。「台湾特産」のシールが貼られ、烏龍茶などで有名な阿里山で採れたらしきことがわかる。
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バーコードには「Taiwanアイギョコ」の文字。アイギョコというのかい。本当かい。奇妙な名だね。

見るからにスイーツ作り用のキットだが、封を開けた中身を見て、呆気に取られてしまった。

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謎の種子、ガーゼ、以上。

ここからどうやって、プルプルつるつるのゼリーを作れというのだろう。無論説明書などというものは入っておらず、手がかりは何一つとしてない。

「愛玉子 とは」「愛玉子 作り方」「愛玉子 なに」など、五里霧中の検索ワードを入力しまくったところ、得られた情報は以下のようなものだった。

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まず、この粒々の正体。台湾固有の、愛玉子(アイギョクシ/和名:カンテンイタビ)というクワ科植物があり、その種子だそうだ。

オーギョーチとは台湾語での呼び名で、この種子には多量のペクチンが含まれている。
ペクチンといえば、ジャムをトロトロにするときなどに使う、天然のゲル化剤だ。柑橘の種などにも含まれるが、アイギョクシはとにかくペクチン含有量が多く、水に入れて揉むだけでゼリー状に固まるという。
ただし、wikipediaによると水にはカルシウムが含まれている必要があり(おそらくペクチンの性質による条件)、軟水では凝固しないらしい。

その情報を信じるならば、日本の水道水で固まるのか甚だ怪しいが、とにかく作ってみないことにはわからない。

今回はdanchuのこちらのページと、Youtubeで見つけた「成功率100%的洗愛玉作法」をうたうこの動画を参考に、オーギョーチ作りに挑戦してみた。

手探りオーギョーチ レシピ

愛玉子の種:15g
水:750cc

■シロップ
水:375cc
きび糖:90g
レモン果汁: 1個ぶん

 

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オーギョーチ自体にはほとんど味がないため、先にシロップを仕込んでおく。水にきび糖を入れ、溶けるまで熱しながら混ぜるだけ。レモン汁は後入れだ。
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そして気になるゼリー部分の作り方。参考にした資料どちらも、ガーゼにくるんだ愛玉子の種を水に浸けて、ひたすら揉んでいた。うまくいけば5分〜10分ほどで固まってくるらしい。
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3分ほど揉んでみたところ。水がうっすら濁っただけで、特になんの変化もない。本当にこれがゼリー状に仕上がるのか不安になってきた。
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揉み始めてから5分が経過。さっきより色が濃くはなったが、トロッと感はさほどない。やはり日本の水道水では固まらないのだろうか。
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先ほどのYotube動画を見返しつつ、激しく揉んでいたらガーゼがほどけてしまった。誰もこの写真を見て「スイーツ作りの最中だ」とは思わない。
最後にザルで濾す工程があるため、ガーゼの口を結び直して、いったんこのまま揉み続けてみることにした。

……が、10分以上経っても一向に固まり出す気配がない。これはやはり水のカルシウムが足りないせいだろうかと思い、急遽こちらの材料を追加した。

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きび糖をティースプーンに1杯(分量外)。きび糖はミネラルが豊富で、100gあたり23mgほどのカルシウムを含んでいる。カルシウムが原因なら、これで固まり出すはずだ。
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きび糖を混ぜるや否や。ものすごい速度で固まりだした! 白く泡立っているのはすでにゲル化した部分だ。急いでガーゼを絞って取り出し、ムラがでないよう全体を混ぜ続ける。
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あまりにも凝固のスピードが速く、ザルで漉すことができなかった。わざわざ一度別容器に移したゼリーは、網目を通れず筆者の手をべちょべちょにして落下。もう濾すのは諦めて、このまま固めてしまうことにした。
おぼえがき:ガーゼがほどけて散った種子は、ゼリーが固まり始める前に漉さなければならない。

 

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全量をボウルに戻して、数分放置しただけでこのぷるぷる具合だ。どうやらきび糖のおかげで、凝固はうまくいったらしい。

ワイルドに種子ごと食べることになってしまったが、まあこの量でお腹を壊すようなことはないだろう。万が一壊れたら追って報告します。 

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オーギョーチは冷蔵庫に入れると分離してしまうらしく、常温で30分ほど放置することにした。その間に、粗熱をとっていたシロップの仕上げをしよう。

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仕上げといっても、レモンを絞って入れるだけ。
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よく混ぜて保存容器に移し、冷蔵庫でしっかりと冷やしておく。
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30分後、オーギョーチの様子を見たら、すごくしっかりと固まっていた。謎の種子を水の中で揉むだけでゼリーができる。これは体験として、かなり面白い。

そんなわけで、手探りオーギョーチの完成だ。

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プルプル! つやつや!

いかがだろうか。園芸コーナーから買ってきたみたいな、ぎっしり入った種のパックが、こんなにも涼やかなスイーツに変貌した。
酸っぱいもの好きの筆者は追加でレモンスライスを入れてみたが、クコの実なども入れてみたらより綺麗だろう。

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肝心な味はどうか。ゼリー部分には、やはりほとんど味はなく、ほのかに漢方茶のような香りだけがある。食感はゆるいゼリーそのもので、飲むように食べられてしまう。

筆者がばら撒いた種子の部分も、食感として大して気にならない。
シロップのレモンの酸味がよく合っているため、甘さを控えめにした、レモン果汁を目一杯いれたシロップを、たっぷりとかけるのが美味しい食べ方であるように思う。

食べている時の感覚としてはトコロテンに近い。夏場のスイーツとしては完璧な味だ。

 

のちに調べ直したところ、愛玉子のペクチン抽出については、pH4(トマトくらい)かつ室温が最適とのことだった。
途中で追加したきび糖のミネラルは、ペクチンの凝固に役立ったはずなので、ご自宅で試される際はきび糖も併せてご用意いただき、必要に応じてレモン汁でpHを下げていただくといいだろう。シロップ作りにも使えて一石二鳥だ。

愛玉子のキットは、アメ横まで足を運ばずともネットストアで気軽に入手できる。
「揉むだけ」でほとんど完成してしまうので、お子様をお持ちの方やお菓子作りが苦手な方にも、ぜひ挑戦してみていただきたい。

オンラインでも謎の種が買えます

アリサン 愛玉子 20g

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