淡路島のお祭りに現れるという「ピンス焼き」
大阪から兵庫県の明石まで電車に乗って行き、明石駅から少し歩いたところにある乗船場から高速船「ジェノバライン」で淡路島の岩屋港へ向かう……というコースが好きで、天気のいい日によくやっている。
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岩屋港からほど近い岩屋商店街の中に「扇湯」という古い銭湯があって、そこに入るのも楽しみだし、同じ建物に併設された「ふろやのよこっちょ」という立ち飲みスペースで風呂上がりの一杯を飲むのも最高だ。
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先日、その「ふろやのよこっちょ」で飲んでいたらお店の方に「今度、だんじりがあるんですよ。岩屋のだんじり、絶対見た方がいいですよ」と教えていただいた。
それを聞いて思い出す。そうだ、たしかずっと前にも淡路島・岩屋のだんじりがすごくいいと教えてもらったことがあって、港町のお祭りっぽい雰囲気もすごく魅力的だし、その日は町がパッと華やいで、屋台も出て……そうだ、「ピンス焼き」というのが名物だとその時に聞いたな。
急いでスマホのスケジュールアプリを確認したところ、岩屋でだんじり祭り(正確には「石屋神社 秋季例大祭」というお祭りらしい)が開催される2023年9月16日・17日、私の予定はあいていた。
そして暑過ぎるほどによく晴れた9月16日の土曜、私はお祭りを見に行くことにしたのだった。
ゆっくりと町を練り歩く岩屋のだんじり
いつも通り、明石港の乗船場から「ジェノバライン」に乗る。すごいスピードで、出発から13分で淡路島の北部の岩屋港へ到着する。船の乗客がいつもより多く感じたのはお祭りの日だからだろうか。
岩屋港に着いて「だんじりはどこらへんに出ているのかな」と、とりあえず歩き出してみたのだが、すぐにわかった。お囃子と歌が遠くから聞こえてきて、そっちへ向かえばいいだけだったのである。
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だんじりというと、岸和田のすごいスピードでカーブを曲がっていく荒々しいお祭りがイメージされることが多い気がするが、この岩屋のだんじりはゆっくりと町を練り歩いていくスタイルのようだ。
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だんじりの前方には着飾った女性たちが乗り、扇子を振りながら踊っている。だんじりの脇にマイクを持った歌い手の女性がいて、「曳き唄」を歌う。曲目は「デカンショ節」だったり「東京音頭」だったり、バラエティに富んでいた。
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また、面白いのが、だんじりはゆっくり進みながら通りの要所要所でストップする。止まるとすぐに、だんじりの前に板が組まれて即席の舞台ができあがり、そこで町の小学生たちが歌に合わせて踊りを披露するのだ。
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と、もうすっかりだんじりに魅了されてしまったのだが、そうだった、ピンス焼きだ。
ありました、 「池田のピンス焼き」
岩屋商店街のあちこちに屋台が出ていて、色々な物が売られている。
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そんな中に「池田のピンス焼き」の屋台もあった。
屋台付近は撮影禁止マークがついていたので、ここからは文章でのレポートにしようと思うが、2基の焼き台に、ひしゃくで巨大な容器からタネが注ぎ入れられる。半球形にくぼんだ鉄板がホットサンドメーカーみたいにがっちゃんと上下にかみ合わされ、じっくり焼き上げられていく。
しばらくして焼き上がったらそれが一か所に集められ、袋に入れられてワンパッケージのできあがり。お店の方はよどみなく作業をされているが、並んでいる人がとにかく大勢いて、私は購入するまでに30分弱並んだ。地元の方もお祭りでピンス焼きを買えるのが楽しみらしい。
ようやく手に入れたピンス焼きがこれである。
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こんな感じで、そう、ピンス焼きとは要するにベビーカステラなのである。
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ピンス焼きの「ピンス」の由来には諸説があり、鉄板を「ピン」で留めて焼いていたからだとか、丸っこい形が麻雀牌の「ピンズ」に似ているからだとか言われているらしいが、定かではないようだ。なぜか淡路島でだけそう呼ばれるようになったらしい。淡路島には今回私が購入した「池田商店」のほか、いくつかの屋台があり、島内各地のお祭り、初詣などでその屋台を見かけることができるという。
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パッと見はベビーカステラそのものだが、中身がトロッとレア状態で、すごく美味しい。私はこれまで積極的にベビーカステラを食べてきた方ではないが、今まで食べたものの中でも群を抜いて好きな食感と味わいだった。
夢中の勢いで食べ、すぐ袋は空になった。
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袋は綺麗に伸ばしてリュックにしまって家に帰り、何に使うというのでもないがスキャンしておいた。これでいつでも眺められるぞ。
とはいえ、また実物を食べに淡路島のお祭りに行きたい!