特集 2023年6月27日

長崎県佐世保市の老舗「白十字パーラー」の2階レストランが70年の歴史に幕。これまでの歩みを聞いた

時代ごとに変わる、白十字パーラーの看板メニュー

――白十字パーラーさんは洋食にも力を入れてらっしゃると思うんですが、看板メニューは何ですか?

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ふわふわ卵のオムライス、デミソースかけ。美味しくて、飲むように食べた。

近藤社長「それがですね、『白十字パーラーの看板メニューは?』と聞かれると難しくて。と言いますのも、軽食類が本格的に誕生したのが二代目からでして。シェフも雇って、お客様に味はもちろんのことボリュームにもご満足いただけるように、なおかつ流行も取り入れながらバリエーションを増やしていきました」

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初代白十字パーラーの定番といえば、手作りケーキとコーヒーのセット。時代が変わっても二代目、三代目が作る個性豊かなケーキが店頭に並んだ。英三さん手作りのブルーベリーケーキは、卵の存在感たっぷりのしっかりスポンジと甘酸っぱいブルーベリーの酸味が見事にマッチ。コーヒーも美味しい!初代・徳治さんの作ったショートケーキも味わってみたかったなぁ。

――流行とは、トルコライスやミルクセーキといった名物的なものでしょうか。

近藤社長「はい。その2つは長崎市の名物ですね。やはり地元の方だけでなく、観光客の方も沢山ご来店いただきたいという思いもありましたので。最近お出しするようになった佐世保名物のレモンステーキやビーフシチューも同じです」

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長崎のミルクセーキは、シャリシャリ氷のアイスクリームみたいになっているのだ。

――そうなんですね。ちなみに、スイーツ含め初代から受け継がれたメニューはありますか?

近藤社長「代が替わるごとにシェフも変わっておりますので、彼らの舌を信頼してベストを尽くしてもらっています。実はハンバーグやカレー、オムライスも、味は変わっていってるんですよ」

――おお!時代の流れに沿って味が変化。お客さんからはご意見などありませんでしたか?

近藤社長「はい、やはり以前のメニューが食べたいとおっしゃる声もいただきますね。二代目のときに人気だったのが、資料がなく詳細が不明なのですが、車えびのフライが2~3匹と、野菜などが豪快に乗ったプレートです」

――ビッグなエビフライ、見覚えがあります。それにしてもメニュー一新とはとても勇気が要ることだったと思います。でも親子三代で通うお客さんが多くいらっしゃるのは、お店への愛着や思い出が、新しい味や雰囲気を優しく受け入れていったからなんでしょうね。

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なんと閉店の知らせ直後にリリースした「アジフライトルコライス」。松浦市のアジフライに九州産のお米に特製カレーがかかってうまい。長崎のご当地グルメ・トルコライスは、ピラフ・スパゲティ・ポークカツの3種のトリコロールが転じたものだが、わりと色んなものに応用がきく。新しい味に出会ってしまった。

近藤社長「看板スイーツの『チャレンジパフェ』は二代目のアイデアです。ビールのジョッキグラスに旬のフルーツやアイスを盛りだくさんに詰めました」

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ぽるとやラミーエなど、白十字パーラーのお菓子もモリモリ入った超豪華パフェ。3人でやっと完食できるぐらい。(photo by りょうさん)

――これ、結構わたしの周りでもソロで完食できちゃう人がいて。「チャレンジ」の響きって、30分以内で完食したら代金タダ!みたいなイメージが湧きますが……。

近藤社長「いえいえ、純粋に『おいしいスイーツをたくさん食べてね!』というサービス精神です。採算度外視でやってました」

――40年のロングセラーですよね。

近藤社長「はい。しかし私の代からは店舗経営の都合上、提供価格や内容を変更させていただいておりました……シビアな話ですみません」

――いえ、お気になさらないでください。

近藤社長「今後の経営を考え、4年前にリニューアルしてイチから頑張ろうと、スタッフもメニューも一新してこれまで励んできましたが、このような結果になり申し訳なく思っています」

――店舗のリニューアル後にまさかのコロナ、生活様式や人の流れの変化……実に複雑な要因が絡み合っていたのではないかと。

近藤社長「ご来店くださるお客様があってこれまで続けてこれましたので。本当に、皆様には感謝をお伝えしたいです。有難うございました」

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レストラン閉店後のこれから

――レストラン閉店後はどうされますか。

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アーケード街を切り取る空間の1つなんですよね。

近藤社長「多くのお客様にご心配をいただいており、大変有難い限りです。残念ながらレストランは経営が厳しく予定通り今月末をもって閉店させていただきますが、本店1階および各支店でのお菓子販売は継続致しますので、このフロア含む建物自体は残ります

――本当ですか!残念な中の、ほっとしたニュースです。まちの景色が変わってしまうのかしらと寂しかったもので。

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建物がそのまま残るのは本当に有難い。

近藤社長「今後は、レンタルスペースやイベントスペースとして活用できないかと考えています。今年の9月にアーケード内でスイーツのイベントを開催するのですが、期間中はこのレストランフロアも会場として開放する予定なんですよ」

――そうなんですね!形を変えてこれからも寄り添ってくれることがとても嬉しいです。

近藤社長「あとはテイクアウトですとか、ビーフシチューなど名物の味を真空パックでお届けできるようにですとか、可能な限りできればなと思っています」

――うれしい!実現を楽しみにしています。出来る限り応援させてください。また伺います。

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見てくださいこの重厚な木彫り。誇らしくなってしまいますよ。

やっと食べることができたチャレンジパフェ

子どもの頃は叶わなかった夢(シャイすぎて)。

チャレンジパフェを友達と食べること。今回、勇気を出して仕事でお世話になっている方々とチャレンジした。

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ファンファン女史、さやぶぅ、あやかちゃん、ズッ友だョ。

 

その味とボリュームは、洋菓子店の気概にあふれていた(あぁ、この生クリーム、たぶん自家製だ!と、無言で全員が共有できるほどの)。

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アイスクリームのコーン部分だけでおそらく一人前かなというほどのボリューム。(photo by りょうさん)

 

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そりゃ気分もアガる。みんなで1つの山を登るみたいなことだもの。そうか、チャレンジパフェは登山か。(photo by さやぶぅ)

 

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この日僕らは、パフェは飲めるんだってことを知ったんだ。

 

どれだけの人たちが、この2階レストランで時間を過ごし、そして笑顔になったのだろう。

70年間お疲れさまでした。

お菓子の販売はずっと続けられるので、また買いに行きますね!

【取材協力】

株式会社 白十字パーラー ぽると総本舗

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