おじさんはコーチ
受付のおじさんは、地元の女子校でソフトボールのコーチをやっているくらい、野球が上手い人だったのだ。高校時代は甲子園を目指していたという。おじさんの名前は佐藤さん。高校のチームの1つ下に、大洋ホエールズで活躍した桑田選手という内野手がいたという。
その話を聞いた時は、へぇー凄いですねぇ桑田選手が、と話を合わせていたが本当は桑田という大洋の選手のことは知らなかった。後から検索をかけてみたら、59年に大洋に入団、その年に31本の本塁打を打って新人王に輝いたほどの名選手だった。大洋に10年在籍した後、巨人、ヤクルトと球団を渡り歩いたが、大洋を出てからはヒットを1本も打っていない。そして70年にヤクルト在籍中、オートレース八百長事件で逮捕され、引退している。
佐藤さんはおもむろに携帯電話を取り出し、僕に写メを見せてくれた。
ソフトボールの教え子と一緒に写っている写真だった。
部活の練習が終わってからも、熱心な生徒たちはこのバッティングセンターに通って打ち込みをしているらしい。
見せてくれた写真は、最後の大会で負けた後に撮った1枚だという。
「これを撮る30分前まで、わんわん泣いてたんですよ」
佐藤さんは少し照れくさそうに笑った。
写メに写っていた女子だけでなく、このバッティングセンターに通って佐藤さんからバッティングを習っていた人は多いという。
意外なところでは、ロックバンド「ポルノグラフィティ」のハルイチさん。
なんでポルノグラフィティの人がバッティングを?
「草野球チームで打てるようになりたいって言うんで、6ヶ月くらい通ってましたよ」
と佐藤さん。
ロックバンドの人に野球を教えていたなんて、何だか凄い。
「あと、この人も」
次の写メを見せてくれる佐藤さん。
「え?地井さんにもバッティングを?」
と、その幅広さに驚いて聞くと、
「いや、この人は番組で」
と佐藤さん。多分、地井散歩だろう。
佐藤さんに習う
僕も是非、佐藤さんからバッティングを教えてもらいたい。草野球チームには所属していないが、当サイトでは中々野球をやらない野球部というクラブ活動をやっていた。現在は休部中であるが、いつか復活するかもしれない。その時のために、佐藤さんからバッティングを習っておきたい。(野球部が復活しても野球をやるかどうかは未定だが)
まず何回か素振りを見せてから、佐藤さんの指導が入った。まず、僕のバッティングフォームで悪い所は右肘らしい。構えた時に右肘が張っているのだが、そのまま振ろうとするとバットが寝てしまいダウンスウィングになってしまうという。ダウンスウィングになるとボールを下から叩いてしまうので、芯に当たらない。
右肘を張らずに構えて、再び素振りをする。
「うん、良くなりました。その方が振り易いでしょ?」
確かに右肘を張らないで構えるとバットがスムースに出る。さすが名コーチである。一瞬にして僕のバッティングフォームを修正してしまった。ちょっとしたことでこんなに変わるなんて、やはりスポーツの上達には名コーチが必要である。
佐藤さんの指導は次の段階に移っていて、僕に腰の回転について教えてくれている。腕だけで振らずに体全体でバットを振る。
どんどんバッティングが上手くなるようで嬉しいのだが、さっきから気がかりなのは僕の足元である。
こんなことになるなんて予想もしていなかったので、サンダルで来てしまっていた。