特集 2022年2月3日

『絵に描いた餅』しか食べないことで生活の質が上がった

「絵に描いた餅」とは何の役にも立たないという意味の言葉だが、絵に描いたものしか食べない日々を続けたら、レコーディングダイエット的な効果があるのでは無いか。
 
正月太りを回避するために、年末年始に1週間やってみた。

イカをこよなく愛する人形劇人。特にコウイカが好きです。

前の記事:カゴに入れるといいたまごに見える

> 個人サイト note

初日の朝ごはんに3時間かかる

昼の12時に目を覚ました私は、めちゃくちゃ喉が乾いていた。
とりあえず水が飲みたい。

000.jpg
まずは一杯の水

慣れていないせいもあり、下書きだけでなんと15分くらいかかってしまった。

001.jpg
色もつけます。早く水が飲みたい
002.jpg
もっとシンプルなコップにすればよかったと描いてから思った

なんの変哲もない水の絵だが、全部描き終わるのに30分かかってしまった。
 
水を飲むために30分……!
やったことないけど、井戸から汲んでくるぐらいの時間がかかっているのではないか。
この先大丈夫なのか……!?

003.jpg
水のありがたみがいつもの10倍

とりあえず水を飲んで乾きを満たしたので、次はご飯をたべよう。
 
容器の造形も、描くスピードに影響するということがわかった。
出来るだけシンプルなお皿によそおう。

004.jpg
朝ごはんは納豆ごはんとローストビーフ(クリスマスの残り)

なかなか思うように描けず、下書きを何度も消しては描き、消しては描き、をくりかえす。

005.jpg
できた……!!
006.jpg
ようやく食べられる……

信じられないが、朝ごはんを全部絵に描いて食べ終わるまで、合計3時間かかった。
朝食を食べるだけなのに、高級フレンチコースのディナーより時間がかかっている。
 
1日3食なら9時間かかる計算だ。
本当に1週間続けられるだろうか……。
 
いつもは食後のお菓子を食べているが、疲れたので描くのをやめた。
ハードめの、レコーディングダイエットだ。
 
とりあえず水を自由に飲めないのは命に関わる気がしたので、まずウォーターサーバーを描いて水を確保することにした。

007.jpg
生きるためにウォーターサーバーを描いた日

シンプルな形なので、ものの数分で描けた。
気づいたけど、朝食の絵をもっと小さめにすれば早く描けたのではないか……?
今後、時間がない時は小さめに描くことにしよう。

外食で頼むメニューがちょっと変わる

008.jpg
閉店間際に行った夜のサブウェイでも、もちろん絵を描く

メニューを見ると、自然と描きやすいかどうかで選んでいる自分がいた。

009.jpg
普段ならぜったいセサミを選ぶけど……!!

この世には2種類の食べものがある。描きやすいか、描きにくいかだ。
 
「描きやすそう」という視点から食べ物を見ると、ほんの少しだけいつもの自分と違うものを選ぶ。

010.jpg
結局一番プレーンなパンにした。閉店間際だったので、かなり急いで描く

外食するときは時間が無い場合が多く、スピードが重要だった。

011.jpg
めちゃくちゃ真剣な顔で描いている。予定が差し迫ってきており、絵だけ店で描いて、食べながら移動することもあった。

早く描くコツは、出来るだけシンプルな見た目&3色ぐらいで描けるメニューを選ぶことだ。

012.jpg
デビューしたての漫画家ぐらい日に日に画風が変わる。だいぶこなれてきた

いろいろ試した結果、

①    ペンで輪郭を描く
②    水彩色鉛筆でシャシャっと軽く色つける
③    水を含んだ筆でなぞる

という順番が一番早く描ける方法という結論に至った。 

いったん広告です

意外とみんな手伝ってくれる

年末年始は忘年会や新年会があったため、描くものがかなり多く、
みんなが手伝ってくれた。
 
それまでめちゃくちゃ盛り上がっていても、描き始めると、水を打ったように静かになる。

013.jpg
忘年会にあるまじき静寂
014.jpg
デジタルで描いてくれた友人もいた

飲み始めたばかりなのに、終電を逃して惰性で飲み続けるときぐらい静かだ。
この飲み会大丈夫なのか……?と、ちょっと不安になった。

015.jpg
その間私は自分のビールを描く。パッケージが結構大変なのだ
016.jpg
みんな時間をかけて、しっかり描いてくれた。それぞれ個性が出ている

手分けして描くとやっぱり早いな〜、と思っていたとき、あることに気づいた。

017.jpg
ちょっとまって!テーブルの上に枝豆ないんだけど!

特にそこに無かったメニューを描いた先輩がいた。なんで!?
食べたいという願望……??

これは、どうすればいいんだろうか。

018.jpg
結局枝豆を用意した

取りあえず、描かれたものは全て食べなきゃいけないルールで進めることにした。
まさかテーブルに無いものを描かれるとは……。そういうパターンもあるのか。

子どもに描いてもらう

絵を描いていると、普段は人見知りして話さない友人の子どもが近寄ってきた。
 
「今絵に描いたものしか食べられないんだよ〜」と説明すると、
「じゃあ僕が描いてあげる」と言ってくれたのだ!

019.jpg
私の頼んだランチ全て絵に描いてくれた。食後のコーヒーもゲット!

「もっと描きたい!」と言われたので、晩ご飯に食べるものを事前に書いてもらうことにした。

020.jpg
もくもくと描いていく。キャビアとか描かれたらどうしよう

完成した絵がこちら。

021.jpg
お寿司だー!!!!

彼の中で、からあげはお寿司のジャンルに入るのか。
紙が白いから、シャリは描かなくていいとのことだった。
 
めっちゃいい絵……!!これは、絶対部屋に飾ろう!!

022.JPG
早速スシローへ行った。普段なら絶対頼まないラインナップだ

回転寿司で唐揚げなんて生まれて初めて食べたけど、結構おいしかった。
今後も選んでしまうかもしれない。

023.jpg
イカも食べたくて、追加で描く。「寿司屋で絵を描いている人初めて見た」と隣の人に言われた
いったん広告です

スケッチブック1冊分の絵

1週間描き続けたら、スケッチブック1冊分になった。

024.jpg
絵の大きさによって、余裕ある日とない日がはっきりわかる
025.jpg
昨日何したかさえすぐ忘れるのだが、食べ物の絵をみると鮮明にその日を思い出せる

最初こそ3時間かかっていたが、だんだんと慣れて、描くのが早くなった。
最後の方は、下書きしないでも迷いのない線を描けるようになり、1食5分くらいで描けるようになった。
 
さて、結局のところ、絵に描いた餅しか食べない生活は正月太りを回避できるのか。


体重を測ってみると、0.3kgぐらい増えていた。微妙……!!

でも友人は3kg太ったらしいので、多少のレコーディングダイエットの効果があったと考えていいのかもしれない。
 
1週間続けてみたら、少しだけ生活の質が向上した気がするので、気づいたことを紹介していきたい。

1、  朝ごはんを描くために早く起きる

基本的に出かける15分前に起床していたのだが、それだと絵を描く時間がないため、
朝食抜きになってしまう。

朝ごはんを描くために、出かける30分前に起きるようになった。

026.JPG
一度寝坊してしまい、朝食抜きで水族館に行った。お腹が空きすぎて、シードラゴンちょっと美味しそうだなと思ってしまった

絵を描くという朝活ができるようになった。

2、市販お菓子を食べなくなる

お菓子はパッケージを描くのに結構時間がかかる。
その割に中身が少ないので、コスパが悪く、描いている期間中、ほとんど買わなくなった。

027.jpg
袋から出せばいいんだけど、それはそれで「ポテチ感」を出すのが難しかったりする
028.jpg
最終的には、お腹が空いたらお菓子ではなくゆでたまごを食べるようになった。めちゃくちゃ簡単に描ける

3、盛り付けを気にし始める

普段はスーパーでお惣菜を買っても、そのままプラスチックの入れ物で食べていたが、絵的にはお皿に盛った方が見栄えがいいため、移し替えて盛り付けを気にし始めた。

029.jpg
元旦に食べた鯛。めでたい柄の紙を敷くと、さらに映える

色合いも気にして、納豆にネギを乗せ始めたりもした。

030.jpg
緑が入ってくるだけで、絵としてグッと良くなる

ネギを乗せるなんて、めちゃくちゃ余裕あるときにしかやらない行為だったけど、毎回乗せるようになった。
 
いい絵を描くためには、いい食事を取らなければいけない。
1週間を通して、少しだけ生活の質が向上した。


一番時間かかったのはおせち

お正月は、友人と一緒におせちを作った。

031.jpg
欲望のまま、お重に詰め込んだオリジナルおせち。お菓子の段もある
032.jpg
友人達に1段ずつ描いてもらう。試験会場のような静けさ

二人とも絵を描く活動をしているため、かなり真剣だ。
お腹空いているはずなのに、誰も「描き終わった」と言わない。
 
このまま新年会が終わるかと思われたため、時間を決めて切り上げることにした。

033.jpg
結局1時間以上かけておせちを描いてくれた

空腹なのが功を奏し、かなりおいしそう!
そのあと、描いた絵を鑑賞しながら飲むという優雅な新年会が始まった。
 
絵を描く飲み会もなかなかいいものだ、と思った。

▽デイリーポータルZトップへ

banner.jpg

 

デイリーポータルZのTwitterをフォローすると、あなたのタイムラインに「役には立たないけどなんかいい情報」がとどきます!

→→→  ←←←

 

デイリーポータルZは、Amazonアソシエイト・プログラムに参加しています。

デイリーポータルZを

 

バックナンバー

バックナンバー

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ