満濃池は壮大だった
日本最大の溜池だけあって、満濃池は湖に引けを取らないほどの広さであった。しかも、なかなかに明媚な光景である。狭山池に続き、天気がよろしくないのが残念極まりない。
肝心のダム(堤体)はというと、狭山池のものは堤防のようなやや分かりにくいものだったのに対し、満濃池はこれぞダムと言うような、非常に分かりやすいものだった。
この満濃池もまた時代時代に手が加えられており、近代では明治、大正、昭和初期にそれぞれ改修が行われたとの事。
とはいえ、改修で手が加えられたのは、ダムの高さが増したのと、ダム内部に通されている樋が、木製からコンクリートに変えられた位のものらしい。
全く立派なものである。後世にいくらかのかさ上げがなされているとはいえ、このような巨大な構造物のベースが、飛鳥時代に作られたというのには驚くばかりだ。本当、恐れ入る。
この満濃池のダムにアーチを取り入れたのは空海であるというし、その姿は昔からさほど変わっていないのではないだろうか。少なくとも、狭山池程の急激な変化は無かったはずだ。いやぁ、ロマンですなぁ。
実は私はダムが怖い
正直に告白すると、私はダムが怖い。いや、正確に言うと、ダム湖というものが怖いのだ。ひとけの無い、険しい山に囲まれた山の中、広々、深々とした澱みに対し、形容しがたい不気味さを感じるのである。
その理由はいまいち分からないのであるが、透明度の低い水の中から何か得体の知れない怪物が現れそうだからか。それとも、切り立った山の中に人工的に作られたその自然ならぬ光景に畏怖の念を感じているのか。いずれにせよ、その恐怖は本能的なものだと思う。
今回、古代に起源を持つ二つのダムを巡ってみて、不思議と恐怖は感じなかった。狭山池は街中であるし、人も大勢いるので普通のダムとはいえないかもしれないが、自然に囲まれた満濃池でも特に怖いと思う事はなかった。
重機など無かった古代において、比較的簡単にダムを作れそうな、ダムポテンシャルの高い土地に築かれた、より自然な形のダムだからだろうか。このような古いダムは、私のダム湖恐怖症を克服する可能性を秘めた、重要な存在になり得そうな気がする。