フルーチェなんかいつももっと食べたいですからね

フルーチェはいつなんどきも足りない。筆者は姉がいたので、フルーチェは常に人と分けるものであった。友達と分けることもあった。しかしいつも足りない。いつだってもっと食べたい気持ちでいっぱいのまま、満たされない思いを抱えて大人になった。みんなだってそうでしょう。
「フルーチェってそもそもなに?」という方のために説明をすると、冷えた牛乳と混ぜるととろとろのババロアみたいになってとってもおいしいデザートです。今まで2人くらい食べたことのない人間に出会ったことがある。あのおいしさをこれからはじめて味わえるだなんてうらやましい。
そんなフルーチェが、足りない。おそらくそもそも独り占めして食べる前提のものではないだからだ。

ところがある日見つけてしまった。業務用フルーチェというやつを。
人生がフルーチェ独り占め以前・以後に分かれるとき

外装とかもうない。業務用だから。
そして今書いていてもしかして「フル~チェ」が正式表記なのかもしれないと思い始めている。ちょっとウェーブしてるよね?昨日三つ編みして寝た?

混ぜる牛乳も1L。フルーチェは同量の牛乳を混ぜて作るので倍量になる。

まずこの量を入れられる容器を持っているか不安になりキッチンを探し回った。なんとか行けそうなのが野菜を水切りするざるとボウルのセットだった。ぐるぐる回すと遠心力で水が切れるのだ。

ざるにはちょっとどいてもらって、フルーチェを注ぐ。

少しでもフルーチェの素がパウチに残らないように、丁寧に何度も絞った。この作業をするだけで自分は本当にフルーチェがすきなんだな、と涙が出てきそうだった。
でもここで手を止めてはいけない。牛乳パック1本をまるまるぶち込んでこそ、業務用フルーチェなのです。

ご存じない方のために説明しますと、この、粘度がある液体に牛乳がじわじわ広がっていく感じ、これがフルーチェのお楽しみポイントのひとつなんですね。フルーチェを嗜まれてきた方々は今この画を見てなつかしさでいっぱいなのではないかと思います。わかりますよ。

あとはもう混ぜるだけ。量が多いので泡だて器を使うことが推奨されていたが、ここは幼少時代からの慣例に従い、スプーンでいかせていただきます。


念のため計ったらちゃんと2キロあった。これを独り占めできる。でも、2キロって。もしかして、多すぎ……???
全部食べてもいいという安心感と満足感
ここまで書いておいて騙すようで気が引けるが、何も一気に2キロ平らげることを目的としているわけではない。一度に食べきれなかったとしても、「残すほど満足にフルーチェを食べた」という事実が幸福なのだ。古代ローマの貴族みたいなことを言っています。

通常であればここから小皿に分けてめいめいにフルーチェを楽しむわけだが、全部ひとりで食べていい。伝わるだろうか、この興奮が。


そもそもフルーチェを久々に食べた。懐かしい気持ちもあるが、毎回新鮮においしくて、そっちのよろこびの方が大きい。
いちごの甘酸っぱさと牛乳のしつこすぎないミルキーさが重なり合って、ちょうどいい満足感を届けてくれる。たまに大きめのいちごのピューレがでてくるのがうれしい。そもそもスイーツとしての完成度が高いんだよな、フルーチェ。
念願のフルーチェジョッキ飲み
もうここからは好きなだけフルーチェを食べるだけなので目標を達成したも同然なのだが、ひとつずっとやってみたかったことがある。フルーチェジョッキ飲みである。

これも説明はいらないだろう。ただビールのように飲みたいだけです。ジョッキなんて何を飲んでもうれしいからね。



ここまでで軽く通常パッケージの何倍かは食べただろう。お腹が膨れてきた。そして冷たい牛乳を一気に摂取したことによって胃腸に不安を覚える。別に牛乳に弱い体質でも何でもないが、こういうのは我に返った瞬間に襲い掛かってくるものである。

総量だいたい2キロだったのでおよそ800グラム食べたことになる。通常パッケージ2箱分だ。そんな食えるんだ、フルーチェ。
フルーチェが好きな気持ち、もっと食べたいという気持ちを、満腹が上回った。もしかするとこれって一生に一度きりの経験かもしれない。お金を払えばこんなこともできるのか。大人ってすげえや。

なんだか、頭がぼーっとして眠いような気がする。血糖値が急速に上がったのかもしれない。このまま寝て明日の朝起きても、フルーチェがある。うれしい。なんなら夜中トイレに起きて、ついでにフルーチェをひとさじ食べることだってできる。最近なんか夜間頻尿だし、3,4口はいけるだろう。

今日のところはこのフルーチェを夕食として、残りは明日以降早めに食べることにする。明日もフルーチェ食っていいのか。やばい。

このあとだいたい2日くらいかけて無事にフルーチェを食べきった。牛乳で伸ばしてより飲みやすくする工夫なんかも覚え、充実したフルーチェライフを送ることができた。
一人暮らしをしていると、作りすぎて同じものを食べ続けるということがままある。大抵苦痛に感じるが、フルーチェはそれがない。30年分の「もっと食べたい」という気持ちの貯金があるからだ。
小さい頃に満たされなかったちょっとした希望を叶えることは思った以上に気持ちを満たしてくれるのかもしれない。つぎはでけえハーゲンダッツを買います。
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