特集 2021年2月11日

大都会のドブでカピバラを探す in サンパウロ

カピバラ!!
みんな大好きカピバラといえば世界最大の齧歯類、つまり世界一デカいネズミである。

ただし、生息しているのは南米の湿地帯であり、その辺は街中や下水道など人間の生活が色濃く影響する環境に棲むドブネズミ、クマネズミとは一線を画す存在である。…と思っていたのだが、そうでもないらしい。
南米随一の大都会、ブラジルはサンパウロではこれでもかというドブ川にカピバラが現れるというのだ。

1985年生まれ。生物を五感で楽しむことが生きがい。好きな芸能人は城島茂。(動画インタビュー)

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高層ビルと激臭ドブ

と、いうわけで2015年のこと。
実際にサンパウロにてカピバラ探しの1日が始まった。

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サンパウロの街並み

とはいえ、事前にドブカピバラの存在を知利、わざわざそのために地球の裏側まで行ったわけではない。
別の用事で出向いた際に、現地に住んでいる伯父がふと「川にカピバラいるから見に行ってみれば?」と教えてくれたので出向いてみたまでのことなのだ。

 

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南米最大級の都市にしてブラジル経済の中心地

サンパウロといえばブラジルきっての大都市であり、高層ビルの密林の中をハイウェイという大河が流れている有様である。

一方でカピバラは大自然が似合うワイルドライフ。アマゾンとかの川を泳いでいるものというイメージが強かったので、もし本当にこんなとこにいるならそのミスマッチたるや、だ。

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街中に大きな川も流れているのだが…

サンパウロの街へ出てみると、たしかに川はある。しかし、水面には大量のゴミと脂が浮き、水色はタールを溶いたように黒い。

そして何より……臭い。
強烈な硫黄臭とメタン臭が混じり、目に染みそうなフレグランス。
日本の都市河川ってのはキレイなんだなぁ〜!!と自国をイヤな形で見直してしまった。

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…きたねえ!きったねえ!!

さすがにここまで汚い川にカピバラはおるまい!棲めるわけない!ドブネズミじゃあるまいし!

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おお…。

……いました。

しかもパッと見回しただけで成獣幼獣あわせて10匹くらいはいる。
たまたま動物園から逃げ出した野良カピが1匹…とかではない。ちゃんと繁殖しとるわこれ。

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紛れもなくカピバラっすなぁ…。

カピバラは南米の広範囲に分布している動物であり、もともとこのサンパウロにも多数が生息していたものと考えられる。

それが開発と都市の発展に負けじとしぶとく生命をつないできたのか。はたまた一度は追い出されたものが環境改善(これでも30年前に比べると緑は増えたし、格段に河川の水質はよくなった)によって戻ってきたのか。
それはわからないが、この野性味溢れるというか汗意味の塊のような獣はたしかにこの街に存在していた。きっとこれは喜ばしいことなのだろう。

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現地人?の自転車乗りもびっくりして二度見していた。

また、面白いことにサンパウロ市民の多くはこれほど身近にカピバラが生息していることを知らないようだった。

まさかこんな街中にカピバラなんているなんて思い至りもしない、ということもあるだろう。
あるいは、それだけサンパウロ市民にとって川という景色が興味の対象になっていないということなのだろう。これだけ汚いのでは気持ちもわからないではないが、その無関心が川を汚いままにしているという面もあるだろう。

……カピバラにしてみれば、ちょっかいを出されないだけその方がいいのかもしれないが。

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テグーという大型トカゲの姿も!

 

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大都会サンパウロの小さな自然

さて、カピバラの話はここでおしまいです。意外と簡単に見つかっちゃったからね!捜索時間10分くらいで遭遇しちゃったし。

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公園や大学など、緑はもちらほらと点在してはいる。このわずかな緑の中に面白い虫たちが…!

というわけで、ここからは虫たちを探してみたい。
一見するとコンクリートジャングルなサンパウロだが、小さな自然はもっとあるはずだ。なんせカピバラなんて大物が生息できるポテンシャルがあるくらいだからな!

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以前に当サイトでも紹介したハキリアリは木と土さえあればあちこちにいる。

公園など、小さな緑地さえあればあちこちでハキリアリが葉っぱの欠片を担いで行列を作っている。

そのほかにも、目さえ慣れてくれば実に多様な昆虫やクモたちの姿が見えてくる。

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カミキリムシの一種

 

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ヒシムネハナムグリの一種。よく見るとふつうのカナブンとは胸のあたりの構造がちがう。

きっと、その多くはブラジルでは珍しくもないいわゆる「普通種」なのだろう。けれど、地球の裏側から来た身からすればそのどれもこれもが初見であり、興味深いものばかり。

緑地を歩いているだけで、ハズレなしのクジを引き続けているような高揚感を味わえる。

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クモも日本で見られるものとは雰囲気が違う

 

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紫色のタテハチョウ。日本にはいそうでいないカラーリング。

中でも一番嬉しかったのがこのスカシマダラという蝶。
蝶なのに翅のところどころが透けており、飛び立つと姿が消えたり、不意に現れたりしたように見える。

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いつか見たいと思っていたスカシマダラ!!

ずっと見てみたかった憧れの蝶であり「いつかきっとアマゾンやコスタリカのジャングルで出会えるはず…!」と夢に見ていたのだが、まさかのサンパウロで遭遇とは。拍子抜けするも嬉しい誤算であった。

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ハチのふりをするカメムシとバッタ

蝶や甲虫といった花形に限らず、出会う虫出会う虫のすべてが面白い。

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キクラゲとそこに陣取るアギトアリの仲間。このアリはアゴを閉じる勢いで跳躍して敵から逃げるというちょっとどうかしている特技を持つ。

その中でも、特にこいつらには驚かされた。

公園の木陰をブンブンと飛び回る虫を見つけたのだが…。

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ぴょんぴょん、ブンブンと跳び回るように飛び回る虫が。ハチ…?

パッと見た感じ、飛び方やシルエット、色合いはハチである。
特にアナバチなど他の虫を捕まえて幼虫の餌にする「狩りバチ」に似ているのだが、なーんかおかしい。

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あっ、ハチじゃない!カメムシだ!

なんと!その正体はハチではなくカメムシだった。毒のあるハチに擬態しているのか?
でもこのカメムシ、肉食の「サシガメ」っぽいんだよなぁ。サシガメだったらその名の通り、ハチに負けないくらい強力な毒針(口針)で外敵を刺すことができるし擬態する意味あるのかな…?と思ってしまうのだが。

…まぁ、きっとなんか意味あるんでしょ(サシガメも狩りバチも同じような生態だから同じような姿になった説もある)!

そうそう。ハチに擬態、といえばこっちはさらにすごい!

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今度こそハチ…と思ったらバッタだこれ!!

大きな黒い虫が木のまわりをずっとブィンブィン飛んでいる。今度こそハチ!しかもでっかくてかっこいいベッコウバチだ!と確信してカメラを構える。

わずかの間、枝先に止まってくれたのでなんとかシャッターを切ることができたが、またすぐに飛び去ってしまった。ギリギリセーフ!

しかし、PCのディスプレイ上で写真を確認してびっくり。これハチじゃなくてバッタだ!!
大写しにしてやっと気づくとは…完全に騙された。さすがにこれは擬態だろう。そうじゃなかったら恥ずかしいから擬態だってことにしといてください。


都会でも南米は南米

と、こんな具合にいくら都市部といえどブラジルはブラジル。アマゾンやパンタナールといった地理の授業やNHKのネイチャードキュメンタリーで聞く系の自然環境を有する国の一部なだけあって、探してみれば面白い生物が姿を見せてくれるのだ。

今回はカピバラを入り口に小動物を見てきたが、もちろん植物や菌類も興味深い。次回訪問した際は路傍の雑草に至るまでしっかり観察できればと思う。

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関係ないけどサンパウロ中央市場の名物、モルタデッラ(ボロニアソーセージ)をしこたま挟んだサンドイッチ。やりすぎだけど超おいしいのでオススメ。こういうとこも南米だよなぁ。

 

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