自由研究って楽しいですね
アリは全世界に一京匹いて全アリの体重を足すと全人類の体重よりも重い、と書いているサイトがあった。測ったのかよ、って思った。
自由研究は結果がどうよりも、何をやるか、何に興味を持ったか、そして興味対象をどう研究するのか、が大切だと思う。失敗をおそれて無難なことをするよりも、だめとわかってるけど興味のあることに挑戦した方が達成感があるしなにより楽しいと思います。がんばってください!
自由研究といえばアリの観察だ。王道だからと敬遠しがちなネタだが、そこをあえて選ぶことで先生の目にもとまりやすくなる。「お、こいつ正面から来やがった」と思わせよう。
ということで今回はアリに関する研究テーマを4つほど紹介したい。どれも1日で十分できる研究なのでせっぱつまったみなさんにもお勧めです。
(安藤昌教)
※2008年8月に掲載された記事を、AIにより画像を拡大して加筆修正のうえ再掲載しました。
まず一つ目の研究テーマは「都会にもアリはいるのか」。いきなりその存在自体を疑ってみる。
ご存じのようにアリは土に穴を掘って集団生活を営んでいる。ならばコンクリートで固められた都会ではどうやって暮らしているのだろうか。
まずは都会の公園でアリを探した。
都心部でも公園にはもちろんアリは普通にいた。捕まえたアリは種類でいうとオオクロアリという体長5ミリ程度のアリのようだった。どこにでもいる普通のアリだ。
それではコンクリートに固められた都心部ではどうだろうか。銀座へやってきた。
歩道、車道ともにアリはいない。それもそうだ、都会には予想どおり土の部分がまったくないのだ。歩道とビルの合わせ部分にたまに隙間や小穴があると、そこからアリが出てくるんじゃないかと期待して待ってみたのだが、やはり出てこない。都会にアリは住めないのだろうか。
そう思ってあきらめかけていたところ、歩道脇に低い街路樹の植え込みを見つけた。木が生えているということは土があるということ。土があれば、これはもしかしたら。
あっ!
あった。植え込みのわずかな土にアリが巣を作っているのを発見。公園で見つけたものよりずいぶん小さく控えめな巣だが、まちがいなくアリの巣だろう。出てくるのを待ってみた。
巣から出てきたアリは小柄な種類のアリだった。調べてみるとその特徴から「ヒメアリ」の仲間だと思う。ヒメアリは土がなくても家のちょっとした隙間とか床下なんかにも巣作りしてしまうのだとか。なんという順応性。これが都会のわずかな土で暮らすノウハウに結びついているのだ。
銀座は土地がすごく高いので普通の人はまず住めないが、アリはがんばって住んでいた。道がきれいでエサが少なそうだが都会には都会の利点があるのかもしれない。アリクイに食われたり子供にいじめられたりすることはなさそうだ。
続いては「アリの好きなうまい棒調べ」。自由研究は研究対象と自分の興味とを結びつけると成功するケースが多い。
我々ヒトからするとうまい棒はうまいが、アリにとってもやはりうまいのだろうか。アリのたくさんいる公園で各種うまい棒を広げ、食いつきのよさを比べた。
ラインナップは上の写真の通り。うまい棒4種(やさいサラダ味、めんたい味、サラミ味、チーズ味)と、比較のためにその他棒菓子をいくつか(メンズポッキー、ふ菓子、きなこ棒)そろえた。これをアリの通り道に置き、数時間後に様子を観察する。
約2時間後。結果は上の写真の通り。解説すると、小柄なアリにはやさいサラダ味とめんたい味が人気。大柄のアリにはふ菓子が人気のようだった。僕の好きなサラミ味はアリにはいまいち不人気なようだ。
そして不思議なのはポッキーが丸ごと無くなっていた点。周囲をくまなく探したがアリが運んでいったようには見えなかった。近くに虫取の子供がたくさんいたので彼らがあやしいといえばあやしいが真相はなぞだ。
わかったこと:アリもうまい棒が好き
アリもうまい棒が好きだった。アリは甘い物が好きなイメージがあるが、今回の実験に限っては甘いふ菓子やきなこ棒よりもうまい棒に人気があった。なかでもやさいサラダ味とめんたい味が特にアリの好みに合うようだ。
次の実験は「アリは輪ゴムが嫌いって本当か」。生活に密着した研究はみんなの共感を得やすい。
アリはゴムの匂いが嫌いなのでアリに食べられたく無いものには輪ゴムをかけておくとよいと聞いた。果たして本当だろうか。
輪ゴムの効果を比較するため、輪ゴムの中と外に砂糖を置いてアリたちの反応を見た。もし本当にアリがゴムを嫌うのならば輪ゴムの中に置かれた砂糖には近づかないはずだ。
待つこと約1時間。見に行ってみるとはっきりと差がでていた。輪ゴムなしの砂糖の方には小柄なアリが群がっていて、はやくも下の土を掘り始めている(アリはごちそうを見つけると下に住んじゃう性質があるのだ)。対して輪ゴムの中の砂糖には数匹のアリがいるだけで、ほとんど手が付けられていない状態だった。ここまで効果があるとは、すごいぞ輪ゴム。
買ったばかりの輪ゴムは確かにゴムの匂いがかなり強い。このゴムの匂いがエサの匂いを消してしまうのだろうか。この後そのまま1時間ほど放って置いたが、やはりゴムに囲まれた砂糖の方には小さいアリはほとんど寄ってこなかった。しかししばらくして大型のアリがゴムを無視して入ってきていた。
輪ゴムが効果的なのは輪ゴムの高さに遮られる小型のアリに限られるのかもしれない。
わかったこと:「アリは輪ゴムが嫌い」は種類による
種類によっては輪ゴムが嫌いなアリもいるようだ。この性質を利用して家の中に入ってくるアリを平和的に退けることが出来るかもしれないですよ。
最後は甘い物が好きなアリの習性を使って、人文字ならぬアリ文字を作る実験だ。以前林さんがハトでハトと書くという記事を書いていたが、そのアリ版といえる。こういうコネタをかませることで研究に彩りを添えたい。
準備はソース入れに入れた砂糖で地面に「アリ」と書く、それだけ。これにアリたちが寄ってくると白い砂糖の「アリ」が黒い「アリ」に変わるわけだ(予定では)。
書いているはなからアリたちがどんどん寄ってきた。すごい引きだ。一匹、また一匹と集まってきては砂糖の粒をくわえて家路を急いでいく。家では今日は祭りだろう。
ん?
ちょっとまて、持って帰ったら「アリ」にならないんじゃないのか。
いま記事を書きながら過去に林さんがやった「ハトでハトと書く」を読み返してみたら最後に「アリでやろうとしたがまったくだめだったので」と書かれているのを見つけてしまった。
そう、アリはエサを見つけるとその場では食べずに巣に持ってかえるのだ。そんなあたりまえのことを忘れていた。
自由研究をする際には先輩が過去におちいった失敗を先に把握しておくことも大切だ。
わかったこと:アリはエサをその場で食べない
アリでアリと書くことは出来なかった。アリはエサを見つけるとその場で食べずに巣に持って帰るからだ。超大量の砂糖で「アリ」と書いておけばその下に巣を作ってくれたかもしれないが、そんなアリにばかり砂糖あげていられない。
よく考えれば当たり前なんだけど、やってみないと思い出せない事実だと思う。
アリは全世界に一京匹いて全アリの体重を足すと全人類の体重よりも重い、と書いているサイトがあった。測ったのかよ、って思った。
自由研究は結果がどうよりも、何をやるか、何に興味を持ったか、そして興味対象をどう研究するのか、が大切だと思う。失敗をおそれて無難なことをするよりも、だめとわかってるけど興味のあることに挑戦した方が達成感があるしなにより楽しいと思います。がんばってください!
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