どうだろう。
いや、どうだろうと言われても困りますね。
最初枠いっぱいの大きさの写真を載せようと思ったのだが、入れてみたらあまりにあんまりなので縮小した。
かなりショッキングな内容だと、大人の冷静さをもってしても思う。今日はまずはこのお弁当が作られたいきさつから説明させて欲しい。
焦りまくって作ってくれた21秒弁当
あれは確か私が小学校1年生とか2年生とかの頃だったと思う。通っていた小学校は給食だったのだが、ごくたまにお弁当の日があった。
その弁当日を母が忘れていたのだ。私も忘れていた(というか、おそらく低学年すぎてその辺のコントロールが母任せだったのだと思う)。
私がさて登校するかという段になって、母が冷蔵庫にマグネットで張ってあった学校からのお知らせのわら半紙を見て「ああっ!」っと言った。
この辺はかなりよく覚えている。「今日お弁当の日だ!」
そこから、母は早かった! 吊戸棚から弁当箱を出すと、テーブルの上に広がっていた朝食のプチパンをつかんで手で2つに開いてマーガリンを塗って詰め、空いている隙間にゆでたソーセージを入れた。
今回再現してみたのが最初に載せた写真だ。20年以上のときを経てお弁当箱は当時のものが残っていた。かなりリアルに再現されていると思う。
作るのにかかった時間を測ってみたら全行程で21秒だった、というわけだ。
うわあ、すごいお弁当渡されちゃったなと思ったのは覚えているのだが、実際食べたところまでは覚えていない。特に違和感なく普通に食べたんだろう。
21秒でもう少しいいお弁当は作れないか
さて、母のタイム21秒は確かにすごいのだが、冒頭の写真のとおり、お弁当としてはかなり寂しい。21秒でもっとマトモな(というと母に悪いが)お弁当は作れないだろうか。
私が毎日作っているお弁当も内容的にはかなり寂しいものだが、それでも作るのに16分(脇で朝食を作りながら作ることもあって)かかっていた。
16分を、21秒に縮める
今日はこの16分をぎゅうぎゅう圧縮して21秒まで縮めようと思う。
まずは、16分について研究していこう。何に時間をくっているのか。
いつも通りお弁当を21秒の制限で作ってみたところ、前夜のおかずの残りのコンニャクの煮物を入れただけでタイムオーバーだった。
母の21秒弁当、すごい内容ではあるがコンニャク弁当を見ると完全に偉大だ。
作れない、温められない、冷ませない
21秒を目指すうえで、こりゃできないなと思うのは、新規におかずをこしらえることだ。フライパンに油を入れて終わりだろう。
温めたり冷ましたりも時間的に難しい。
お弁当を作るときにレンジで温めるタイプの冷凍食品を使ったり、前日のおかずの残りに一度火を通して詰めたりするが、これができない。
温かいまま詰めたものを冷ます時間もない。あ、ということは、ご飯は詰められないのか。
21秒弁当でできないことリスト
・温める
×前日の残りを温めなおして詰める
×レンジ解凍系の冷凍食品
・冷ます
×ご飯
パンと常備菜と自然解凍
炭水化物はご飯がダメとなると麺かパンか芋だが、調理不要となるとパン一択だ。
あとはおかず。常備菜や前日のおかずの残りなどで火を通さなくても詰められるものを入れるのがいいだろう。
それに冷凍食品にも凍ったまま詰めればいいというのがある。切るだけで詰められそうなものも使えるはずだ。
おお、結構いけそうだぞ。
21秒でお弁当を作るための作戦
・ご飯ではなく、パンを使う
・火を通さなくても詰められる常備菜や自然解凍食品を使う
・洗って切るだけの食材を使う
これなら21秒で母のお弁当を超えるものができるはずだ。
よし、やってみるぞ。ストップウォッチを用意してよーい、ドンだ!
1分20秒もかかってしまった!
楽勝だと思われたこの作戦。だが、結果なんと1分20秒もかかってしまった。16分からは大幅短縮だが、それにしても21秒には程遠い。
一体、何に時間がかかったのか。
なんと、冷凍食品に落とし穴があったのだ!
まさか、手がぬるぬるになってタイムロスするとは。やってみなくちゃ分からないここに極まれり、だ。
21秒弁当でできないことリスト
・手をぬるぬるにする作業
朝食を使う
1分ちょいで↑ができるなら、小学生の私に渡すのにも間に合うだろうしもういいじゃないかとも思うのだが、母への対抗意識はまだおさまらない。
21秒で作りたい!
あのときの母は“テーブルに広がっていた朝食を詰めて”21秒でお弁当を作った。
普段のパン朝食をうまくコーディネートしてみようじゃないか。
21秒でお弁当を作るための作戦
・テーブルに出ている朝食で構成する
21秒ってものすごく短いぞ
朝食に広がっているパンにマーガリンをぬり、同じく朝食として広がっているチーズとハムを挟んで詰める。
これでもう21秒は楽勝だろう、21秒切っちゃうんじゃないか。
では、21秒を目指していきます。よーい、ドン!
結局、パンを開く時点でもう21秒を超えてしまったのでこのチャレンジは途中棄権した。
21秒弁当でできないことリスト
・何かを開封する作業
じつはパッケージをあけるってそこそこ時間がかかるのだ。となると、もう使えるのは
・朝食としてテーブルに出ていて
・そのまま弁当箱に入れられるもの
に限る。
プチパンを手開きでサンドイッチにする
ああ、どんどん母の21秒弁当に近づいていってしまっている。
近づいてもいい、せめて別の着地を見出したい。
朝食のハムとチーズをパンにはさむ、それでいこう。サンドイッチ作戦だ。
そして……。
ぶどうパンを手でぐわっと開いて、マーガリンをぬるまでが8秒、ハムとチーズをはさむのに7秒、お弁当箱に詰めて1~2秒。これを2個作って33秒かかった。
ヒョー! まだ、まだ21秒には届かないのか……! でも、もう一息だ
21秒弁当でできないことリスト
・サンドイッチを2個作る
ヒントはアメリカのお弁当に……!
出来上がったお弁当を見て思ったのだが、これ、学生時代にアメリカの学寮にショートステイ(1ヶ月そこら)していたときに学食が用意してくれたお弁当に似ている。
ハムとチーズのサンドイッチにリンゴかバナナ、あとソフトクッキーが紙袋に入っていた。
そうだ、サンドイッチはひとつにして、残りをフルーツにしちゃえばいいじゃないか。
21秒でお弁当を作るための作戦
・サンドイッチはひとつまで
・バナナはおかずに認めます
いよいよこれで決まるか……!
ぎりぎり21秒、達成しました
21秒だった。
本当にギリッギリの21秒だったのには驚いた。そして、何だろうこの達成感は。
どうだろう……ぎりぎり勝っているのではないか!?
もちろん、母は急遽で作ったお弁当、私のは試行錯誤した末のお弁当なのだから当たり前なわけだけど。
でも、今回のことで急に(1秒を争うほど急に)お弁当を作らねばならなくなったときのコツは十分わかった。
・パンを使え
・その場に出ているものを詰めろ
そのときに備えて、みんな朝はパンとハムとチーズを食べるといいと思います。我が家はそうします……!
そうそう、今回の思わぬ収穫だったのがぶどうパンで作ったハムチーズサンドのおいしさ。
ぶどうの甘みとハムチーズのしょっぱさが合ってすごく美味しかったです!
母は、5秒でお弁当を作っていた
と、めでたしめでたしで超高速お弁当作りは終わった。かに見えた。
しかしなんと母は5秒でお弁当を作っていたという事実が発覚したのだ。21秒弁当のことを母に思い出してもらっていたときに聞いた。
「パンとソーセージだけのお弁当は覚えてないねえ……。でもお弁当っていったら、炊飯器と納豆とヤカンのお茶だけ持ってピクニック行ったことあったよ。あれはお友達のお母さんにもウケたね」
そうなのだ。近所の公園にピクニックに誘われた母、炊けたご飯の入った炊飯器と納豆のパックと煮出したお茶の入ったヤカンを持って出かけたのだという。こちらは私の方が全然覚えていない。
……おかずは? と聞いたら普通に「納豆」といわれた。
一生勝てない気がした。