特集 2018年9月26日

あの「メロンのアイス」についてホントに調べてみた

あのメロンアイス、だれも調査しないので私がホントに調べました
あのメロンアイス、だれも調査しないので私がホントに調べました
ツィッターを見ていると、ときおり『このアイスクリームを知っている人がいたらRTをお願いします。どこまで知られているか調べています。』というツィートともに、メロン型のカップに入ったアイスの写真がタイムラインに流れてくることがある。

ほぼ同じような内容の投稿が、数ヶ月おきに数千から数万リツイートされ、何度も目にしたことがあるという方も多いかもしれない。

これらの投稿「調べています」とのたまうものの、その調査結果が公表されたことはかつて一度も……ない。

結果を見せてもらえないもどかしさに耐えかねた国民の怒りは頂点に達しようとしている。

もう我慢ならぬ。
鳥取県出身。東京都中央区在住。フリーライター(自称)。境界や境目がとてもきになる。尊敬する人はバッハ。

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というわけで、自分で調べます

くだんのツィートとは、こういうツィートである。
くだんのツィート
くだんのツィート
10万8千リツイート、7万7千いいね、もされている。

「調べています」とおおやけに調査の協力を依頼しているのであれば、責任をもってその結果を公開してほしいものだが、一向にそんな気配を見せることはない。

仕方がないので、ぼくが一肌ぬぐしかない。

最近は、Googleフォームという、アンケート調査が簡単に行えるしくみが無料で使えるべんりな世の中となっている。
ほんとうに調べたぞー
ほんとうに調べたぞー
まずは、このアイス(メロン型の容器に入ったアイス)を実際に見たことがあるかどうか、そして、見たことある人は、どこで、いつごろ見かけたのか。

それぞれアンケートをとった。

大方の予想通りの結果が判明

というわけで、アンケート結果をまとめてみた。
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調査期間は、2017年8月17日から、9月10日まで。寄せられた回答は、6599件だった。

まずは、そもそもこのアイスを見たことがあるかどうか?
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99パーセントの人が「実際に見たことある」。という結果になった。

見たことない。と回答した人でも、その後の質問にある「このアイスの呼び方」や「容器の再利用のしかた」を答えている人もおり、入力間違いを疑われるものがあったので、さらに「知っている」割合は上がる可能性がある。今この日本で生きている人にとって、このアイスは、ほぼ100パーセントにちかい認知度であるだろうということは想像できる。

ひとつ、ご了承いただきたいのは、このアンケート「見たことある人はアンケートに答えてください」とツィッターで募集したものだ。だから、回答者のほぼ全ては、見たことがある……というのは当たり前の結果だと思われる。

そもそも、元ネタとなったツィートが「知っている人がいたらRT」だ。結局「知っている」といってリツイートしたとしても、それはなんの情報にもならない。だた知っている(と主張する)人が10万いる、5万いる。というだけの話だ。

せっかくなので、回答者の年齢別にくらべてみた。
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みごとなほどの知られっぷり。円グラフにする意味があるかどうかわからないが、もう逆におもしろい。知られすぎじゃないか。

ちなみに、回答者の世代別の年齢はこのようになっている。
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20代の人がいちばんよく回答してくれたことがわかるが、回答数が、20代になると急激に増えて、50代になると、ガクッと減っているのも面白い。インターネットをよく使っている世代というものがわかる。

このアイスをはじめて見た年代はこのようになる。
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そして、各世代ごとにこのアイスを見た年代を分けたのがこちら。
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10代>2000年代・83%、2010年代・16%
20代>1990年代・58%、2000年代・40%
30代>1980年代・39%、1990年代・58%
40代>1970年代・43%、1980年代・52%
50代>1960年代・31%、1970年代・67%
これもみなさんご想像のとおり、各年代、子供時代にはじめて見たひとが多い、という結果に落ち着いている。

あと、この結果でわかる重要なことがひとつある。それは、10代の16%は、2010年以降に、このアイスを初めてみていることから、このアイスは2010年代にも普通に売られ続けているということだ。

続いて、このアイスをなんと呼んでいたか。
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これは多少興味深いといえるかもしれない。「メロンのやつ」という、絶対商品名じゃないだろうという言い方で呼称しているひとがかなりいる。これを、年齢と対応させてみたデータがこちら。
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年齢が若いほど「メロンのやつ」という雑な呼び方をする人が多く、年齢が上がるにしたがって「メロンアイス」と、お行儀のよい呼び方に変わっているのが興味深い。
歳をとると、名称がすぐに出てこず「あー、あれなんだっけ、あのーあれ、メロンのやつ」みたいなことをいいそうなものだが、調査結果ではまったく逆の結果となった。
ただ、「メロンアイス」が正式な商品名というわけではないのだが、これについては後ほど触れる。

続いて、「メロンのアイス」を、初めて見た場所はどこか?
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全国47都道府県からほぼまんべんなく回答が寄せられたが、数としては東名阪(とうめいはん)地区で見たというひとがやはり多い。
ただ、これは人口が集中しているからであって、地域的な偏りはないといえる。つまり、日本全国どこでも普通に売られていた商品ということだ。

あと、あまり関係ないけれど、地方から上京して都会に住んでいるひとがいっぱいいるな。ということもぼんやりとわかる。はからずも、日本の人口動態の一端を示してしまっている。

以上、あの「メロンのアイス」について、「本当に」調べてみた結果からわかることは……。
①このアイスは一般的に「メロンのアイス」と呼ばれているが、若い子ほど「メロンのやつ」と呼んでいる。
②子供の頃に、当時住んでいたところで初めてみた人が多い。
③全国まんべんなく流通しており、地域的な偏りはない。
④日本生まれで日本語が使えるひとのほぼすべてが知っている。
⑤2010年以降も、普通に売られ続けている。
調査と言っても、ネットのサービスを使って調べた素人の手慰み程度の分析だけれど、とりあえず、以上のようなことはわかった。大方の予想通りといった結果だろうか。

しかし、ここであらたな疑問がわく。このアイス、今でも売られ続けているのに、いったいなぜ、みんなメロン容器の写真をツィッターでみかけると、つい「なつかしい」といってリツイートしてしまうのか?

この謎を解くべく、現在このメロンのアイスを製造販売している井村屋株式会社に取材を試みた。

井村屋の商品名は「メロンボール」

右から、井村屋ツィッターアカウントの中の人、江道寺さん、福代さん
右から、井村屋ツィッターアカウントの中の人、江道寺さん、福代さん
――まずお伺いしたいのは……ツィッターで、たびたびこの「メロンのアイス」がものすごくリツイートされるというのは……。

井村屋(以降カギカッコは、井村屋)「はい、把握はしております、が……まあ、とくになにもないですし、しないですね」

――いちいち反応してもしかたないですもんね……。

「ただ、以前、一度ツィートしたことはあるんです」
※現在、セブンイレブンでの取扱いは終了しています
――あ、あのたまごのアイスもなんですね、というか2015年から、例のツィートは出回ってたんですね。

「そうです。ただ、今はとくに何かする、ということはないですね」

――あの手のツィート、調べるなんて言うわりに、調べた結果をまったく公表しないんです。で、もう我慢ならぬと、代わりに調べたんです。

「そうですか(笑)」

――調べた結果はまあ、大方の予想通りといった結果でして、すこし、ほーと思ったのが呼び方についてです。ほとんどが「メロンアイス」と呼んでいるんですが、若いひとほど「メロンのやつ」なんですよ……。あ、なんか御社の商品が正しく呼ばれていないみたいな話になってしまいましたが……。

「弊社の商品名は『メロンボール』ですね、でも最初に発売された1972年の商品名は、フルーツメロンでした、こちら写真です」
左1972年『フルーツメロン』、右1976年『メロン』
左1972年『フルーツメロン』、右1976年『メロン』
左1989年『メロンボール』、右2015年『メロンボール』
左1989年『メロンボール』、右2015年『メロンボール』
「そのあと、1976年には『メロン』と変わりました、さらに1989年には『メロンボール』となって、今に至る感じですね」

――なんどか名前が変わったんですね。名前が混乱しているのはそのせいかもしれないですね。

なお、このメロン容器に入ったメロンのアイスは、井村屋だけが製造販売しているわけではない。現在、フタバ食品の『メロン』、シャトレーゼの『メロンだま』など、複数メーカーが同じような商品を出している。

――1972年の『フルーツメロン』はどのような経緯で発売されたんでしょうか?
「発売当初はまだ、メロンは高級品で手に入りにくいものだったんですが、そこで子供たちが食べた気分を味わえるように、メロンをイメージした味のシャーベットアイスを作ろうと考えたのがきっかけです。あとは、他のメーカーの同じような商品もございますが、当時、1970年代ですね、このようなスタイルのアイスが流行ったんですね。で、各社が出した。というのもありますね」

どうやら「メロンの容器にメロン味のシャーベットを入れる」というのは「最中にバニラアイスを挟む」というような、一般的なアイスのスタイルらしい。

ちなみに、メロン型容器にメロン風味のシャーベットを入れたアイスの、日本最初ではないかと言われているのは、大阪の林一二株式会社(センタン)のものらしいが、現在は販売されてないようだ。(※初見健一『まだある。食品編 改訂版』(大空ポケット文庫)によると、2005年当時で最古参のものがセンタンの商品とある。)

いずれにせよ、1970年代ごろからの商品であることはわかった。アンケートで、1960年代に商品をみた。と回答しているひとが少なからずいたが、これは、井村屋の商品ではないものを見たか、記憶違いかのいずれかだろう。

容器はだんだん大きくなってきている

――1972年当時は1個30円だったんですね。

「当時は、現在よりもすこしサイズが小さかったんです。10年ほど前までは小さいサイズでファミリーパックのようなものもやってたんですが、1個売りのものは、だんだんサイズが大きくなっています」

――御社の『メロンボール』は容器がおおきめですね。
容器がでかい
容器がでかい
「はい、他社さんのものですと、もうすこし小さめで、子供向けという感じなんですが『メロンボール』は、昔食べたことのある大人のひとが、なつかしいと思って買っても満足できるようにすこし大きめに作ってます」

――このあいだ、ぼくが駄菓子屋で買ったものは、おそらく他のメーカーのものだったと思うんですが「あれ、こんなに小さかったっけ? 子供向けかな?」って思うほど小さかったんです。でもこの『メロンボール』はこうやって持ってみると、納得できる大きさですね。

ゴールデンウィークとお盆によく売れる

――販売地域の地域的な偏りのようなものもないんですよね。

「ないです」
なぜ『なつかしい』と感じてしまうのか
なぜ『なつかしい』と感じてしまうのか
――今でも販売しているし、地域的に偏りもないのに、なぜ、みんなすぐ「なつかしい」と感じてしまうのか……例えば、昔に比べて手に入りにくくなっている。とか、生産の数を昔より絞っているとか。そういうことはあるんでしょうか?

「そういうわけではないんですけど、もともと、生産、販売しているのは夏場だけなんですよ、ですから、今(9月中旬)はもう売り場にはないと思います、2月から8月なんです」

――あっ、そうなんだ。

「あとは、今はもうみなさんアイスはコンビニで買うんですね。スーパーでアイスを買うというのはあまりなくなってきたというライフスタイルの変化がありますね、(メロンボールは)コンビニにはなかなか行ってないんですよ」

――たしかに、コンビニではなかなか見かけないですね……。

「コンビニの戦略にけっこう左右されます。コンビニはいまPB(プライベートブランド商品)などが多くなってきて、スペースが限られているので、こういう駄菓子系はなかなか難しいという現実がありますね」

――話がちょっと戻りますが、アイスの春夏商品というのは2月からなんですか?

「そうです、2月からなんですが、メーカーの発売日と、実際に店頭に並び始めるのはけっこうずれます、ですから、同じく季節商品の水ようかんなんかも発売は2月なんです。で、配荷(はいか・店頭に並ぶこと)はもうちょっとあとになります」

――なるほど。
駄菓子アイスシリーズ
駄菓子アイスシリーズ
「こちらの商品(駄菓子アイスシリーズ)は、ゴールデンウィークとお盆にガーッと売れるんです。ですから、通年売ってるということではないんです」

――ゴールデンウィークにも売れるんですね。

「ゴールデンウィークは、『子供の日フェア』みたいなものをやるときに、スーパーに並ぶんです、そういうイベントに合わせた動きが多いです。お盆は、田舎の方でおじいちゃんおばあちゃんが、孫が帰省で来るから買っとこうとか、一緒に買い物に行って買うとかで売れます」

なぜ「なつかしい」のか

話をうかがっているうちに、このアイスがなぜ、今でも全国的に売っているのにうっかり「なつかしい」と思ってしまうのか、なんとなく見えてきた。

まず「メロン型の容器に入っている」という印象的なスタイルで40年以上販売されているという点が大きい。子供の頃に見たものと変わらない姿で今でもあるというのは「なつかしい」と思うポイントだろう。

そして、『メロンボール』は販売時期が春夏に限定されている(※井村屋)うえ、コンビニにはなかなか置いてない。
春夏のうちに、スーパーのアイス売り場で見逃すと、次は来年、来年も見逃したらさらにその先……と、大人になるほど目にする機会が減ってくる。そのため、SNSで写真を見つけるとうっかり「知ってる! なつかしい!」とリツィートしてしまう……。

例えば、森永のミルクキャラメルなどは、昔とほぼ同じスタイルで売られているが、コンビニに必ず置いてあり、頻繁に見かけるため、「なつかしい」とは思いにくい。

考えてみれば当然のことだが、つまりそういうことだろう。

この「なつかし」く感じる点は、メーカー側も意識はしていて、商談用のパンフレットにもちゃんと「なつかしアイス」と書いてある。ぬかりはない。

――ところで、今もう9月過ぎちゃってますが、店舗で買えるところはもうないですか?

「ないと思います。ただ、ウェブショップでは通年売ってるんです」
ネットでも普通に買えるんじゃーん
ネットでも普通に買えるんじゃーん
メロンボール、モモボール、スイカボールのセットが各6個ずつはいって計18個のアソートセットで購入できる。

ウェブでいつでも購入できるものが「なつかしい」わけがないが、しばらく見なかったひとが「なつかしい」と思ってしまうのはしかたがない。許してあげてほしい。「なつかしさ」とは主観なのだ。

とっておきたくなる容器の使い方

――パンフレットみると、メロンだけではないんですね。
スイカとモモもある
スイカとモモもある
「はい、過去にはリンゴやパイナップル、梨、オレンジもあったんですが、今はこの三種類だけですね」

――それにしても、いろんな形があるのは素直に驚きですね……。この容器は『あとでなにかに使おう』という気持ちにさせる謎の魔力があります。アンケートでも何に使ったのか、聞いたんです。だいたいが小物入れです。二大巨頭が輪ゴムとクリップ。あとは、砂場でのおもちゃですね。
猫の被り物とはなんだろう、蓋を頭にのせる?
猫の被り物とはなんだろう、蓋を頭にのせる?
――水やジュースを凍らせて使っていた人がけっこう多かったのと、昆虫を入れる容器にしてる人もいっぱいいました。蟻の牢屋、どんな遊びしてたのか伝わってきますね……。

「以前ですが、容器の使いみちを考えようという企画はやったことあるんです」
オフィシャルでもやってる
オフィシャルでもやってる
――公式でもすでにやってるんですね……米一合ぶんってすごくないですか?

「ちょうど一合ぶんだったんですよ」

――偶然にしてもすごい。虫とじこめたりせずに、米びつの中に入れとけって話ですね。

「あと、花の種をつけるキャンペーンもやっていたことあります、食べ終わったあとに容器に土を入れて、種をまくと花が咲くんです」

――なるほど、一輪挿しというか、ちっちゃい鉢植えの感じはしますね。

この容器には「何かに使えそう」と思わせる、あらがいがたい魅力がある。捨てる勇気が必要なのだ。峠の釜めしの釜やモロゾフのプリンの瓶もけっこう勇気が必要だが、メロンボールの容器もなかなかのものである。

うまい食い方を知りたい

――唐突ですが、こだわりのおいしい食べ方みたいなものってありますか?

「そうですね……以前、ニッカウヰスキーさんが、メロンボールにウィスキーを入れて食べる、という食べ方を紹介されてました」

――あー、たしかにツイッターで見かけた気がする。
――ウィスキーか。なるほど。これ、実際に試されました?

「試しました、おいしかったですよ」

――試すんですね。仕事でアイス食べられるのなんかいいですね……これ、冷やした炭酸水とかで食べてみたいですね。メロンソーダみたいになるだろうか。

「なつかしい』の理由はなんなのか

今回、「どこまで知られているか調べています」といいつつ、全く調べないという誠実さのかけらもないツィートに、しびれを切らしてぼくが一肌脱いだわけだが、実際に話を聞いてみると、メロンアイスの置かれた状況から、おもわず「なつかしい」と感じてしまうからくりがすこしわかったようなきがした。

今後、メロンのアイスを「調べています」というツィートを見かけたときは、この記事をおしえてあげてほしい。

よろしくお願いいたします。
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