歌舞伎のタイトルとは?
歌舞伎のタイトルとはこういうことだ。
義経千本桜、四段目の切「河連法眼館」の場
忠臣蔵、菅原伝授手習鑑とともに、めちゃめちゃ有名な歌舞伎の演目、義経千本桜。「千本桜」という言葉の、「桜が千本あるんだろうなあ」というイメージの訴求力はすごい。しかし、この芝居、桜が常に登場するかというと、そうでもない。全く出ないものもある。ただ、タイトルで「千本」といい切っちゃう、ハッタリのデカさはすがすがしい。※千本桜の由来には諸説あるそうです。※千本桜の由来には諸説あるそうです。
右から、意休、助六、揚巻
市川宗家の團十郎とその直系のみが上演できるという「助六所縁江戸櫻」。助六と通称で呼ばれることが多いが、本外題(正式名称)のズラリと並ぶ漢字に読みで「の」を入れて文章っぽくしているところがシブい。見たことなくても「あぁ、助六にゆかりのある江戸桜なんだな」というのはわかる。
※「所縁江戸桜」は、助六が花道を出るときの伴奏音楽「出端の唄」のタイトルだそうです。
大川端庚申塚の場、三人の吉三郎。全員盗賊です
三とか人とか巴みたいな画数の少ない漢字がズラッと並ぶのも、暗号っぽくてよい。
ちなみに、三人吉三というのは、吉三郎という三人の盗賊のこと。三人それぞれが、複雑な人間関係の中で、なんやかんやあって、最後は刺し違えて死ぬ。という話だ。なんやかんやあって、の部分が巴(三つ巴ということ?)。白浪というのは悪党が主人公の演目のことを白浪物というらしい。
上の絵の真ん中の吉三は、お嬢吉三で、女装の美少年という設定。今で言う男の娘に当たるだろうか。
タイトルのルール
歌舞伎のタイトルは、ルールがあるらしい。
本外題はちゃんと五文字か七文字である
歌舞伎のタイトルと書いているけれど、本来は「外題(げだい)」という。正式な名称を「本外題」といい、縁起を担いで文字は必ず奇数、だいたい五文字か七文字で書かれるらしい。
文字数を守りつつ、特徴を漢字で書き出して、「の」でつなげれば、それっぽくなるのでは?
というわけで、地下鉄路線を歌舞伎風にしてみた。
千代田線です
無印良品の商品説明風に説明すると「終点の先に盲腸線がある、という情報を盛り込んでみました」ということだ。※綾瀬駅から北綾瀬までのことです。
銀座線です
日本初の地下鉄、銀座線。という情報を歌舞伎風に。銀座線はよく考えると、色はゴールドだけども、名称は銀だ。
丸ノ内線です
池袋から新宿行くのに、大きくカーブしてるという部分、帯の印象的なサインウェーブを歌舞伎風に表現。「波模様」って、白浪物っぽさもでてこないだろうか? でないかな?
大江戸線です
地下鉄のジャイアンこと大江戸線。カーブとかは特にめちゃめちゃうるさい。そんな特徴を歌舞伎風にしてみた。臙脂色というのがますます歌舞伎っぽい。
ポスターにしてみた
せっかくなので、歌舞伎風のポスターにしてみた。
違和感はない、完璧だが、とくに何も言ってないポスターが完成した。
しかし「ゆめもぐら」とか、「東京さくらトラム」とか「アーバンパークライン」みたいな、しっくりこない愛称をつけるぐらいなら、歌舞伎風タイトルのほうがかっこよくていい。
コンビニも歌舞伎風に
鉄道路線じゃなくても、そのへんにいっぱいあるコンビニも歌舞伎風にならないだろうか?
日本の三大コンビニチェーン店、それぞれ「正体不明牛乳缶(しょうたいしれずのぎゅうにゅうかん)」、「辰ノ刻亥ノ刻爽(たつのこくいのこくのさわやか)」、「貴殿二人連(きでんのふたりづれ)」である。どれがどのコンビニかは言わずもがなだろう。
歌舞伎は、例えば「義経千本桜」といっても、最初から最後まで通しで上演するわけではなく「義経千本桜」の中の名シーン「吉野山」だけを上演するというのがよくある。
映画で例えると「スターウォーズ・ジェダイの帰還」から「スピーダーバトル」だけを上演とか、「となりのトトロ」から「ネコバス」のシーンだけ。みたいなイメージだ。
というわけで、各コンビニの人気商品をそれに例えて歌舞伎風に書くとこんな感じになるのではないだろうか?
鶏肉すきだな
しかし、三つのうち、ふたつが鶏肉だ。コンビニは鶏肉好きすぎるのでは?
なんでも歌舞伎風にできると思う
特徴を漢字で書き出し、語呂をあわせて、間を「の」で補って読めば、なんでも歌舞伎風タイトルにできる。
と、意気込んで、47都道府県すべてに歌舞伎風の外題をつけようとしたけれど、「最大面積試練地(さいだいのめんせきしれんのち)」「麺麭袋留具(ぱんぶくろのとめぐ)」で力尽きてしまった。全部考えるのは結構大変だ。