特集 2018年9月25日

レジャーとしての玉入れは2次会のダーツバーみたいになる

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社会人になり、意味、目的、効率といったものばかりを気にして生きるようになった。ここで一度、闇雲に、空に向かって玉を投げてもいいのではないか。

玉入れのカゴをレンタルして、ただただ玉入れをした。
1987年東京出身。会社員。ハンバーグやカレーやチキンライスなどが好物なので、舌が子供すぎやしないかと心配になるときがある。だがコーヒーはブラックでも飲める。

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5メートルのカゴ、神々しい

9月に入って暑さが和らぎだすと、なんとなく玉入れをしたくなった。上を向いて何も考えずにひたすら玉を投げるのだ。前向きで素敵な催しだと思う。
というわけで、玉入れのカゴと玉をレンタルした。この棒をセッティングすると、
というわけで、玉入れのカゴと玉をレンタルした。この棒をセッティングすると、
こうなりました。
こうなりました。
カゴは、イベントの備品をレンタルできるサービスを利用した。色々なカゴを見たが、軒並み高さは3メートルほどだった。小学生の運動会で当時使っていたカゴもそれくらいだったのだろう。
でも今回は5メートルを発注。大人用は5メートルなんだそうだ。
でも今回は5メートルを発注。大人用は5メートルなんだそうだ。
組み立ててみると、ちょっとゾッとするほど高い。曇り空もあいまって変な迫力があった。
組み立てている様子。人がいるとその高さが分かると思う。
組み立てている様子。人がいるとその高さが分かると思う。
高い。口を開けたまましばらくぽかんと眺めてしまった。ただ玉を投げ入れられるだけのカゴじゃない。崇拝の対象、という感じがする。
玉入れをしに来てくれた編集部の藤原さん。記念写真を撮りたくなる高さだった。カゴ、入らなかったけど。
玉入れをしに来てくれた編集部の藤原さん。記念写真を撮りたくなる高さだった。カゴ、入らなかったけど。

己の無力さと向き合う、高さ5メートルへの玉入れ

カゴの用意ができたところでいよいよ玉入れである。
玉もレンタルした。懐かしい手触り。
玉もレンタルした。懐かしい手触り。
玉を持ってカゴと対峙する。無力感がすごい。
玉を持ってカゴと対峙する。無力感がすごい。
手前にいるのが玉入れをしに来てくれたライターのべつやくさん、奥が筆者である。2人並んで膝をついて、カゴに向かってお祈りをしてもよかったのだが、とりあえず玉入れなので玉を投げてみる。
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玉を拾っては投げるが一向に入らない。空に向かって玉をひたすら投げる、というまさにやりたかったことが実現したのだが、あまりに入らないので残念な気持ちが大きくなっていく。誰と競っているわけでもないのに、やっぱりカゴに入れたくなってしまうものなのだろう。もう僕たちは、純粋に「投げる」という動作を楽しめなくなっているのだろうか。

空を見上げて己の煩悩と向き合っていたら、写真を撮りながらぽいっと投げた藤原さんの玉が、カゴのフレームに当たってもそもそと網の中に収まった。
すごい!
すごい!
5メートル上空に留まる玉。
5メートル上空に留まる玉。

3メートルに下げると入るし、その方が楽しい

1個入れば上出来だろう、という見解で一致したので、カゴの高さを通常の3メートルに下げてやってみる。
「あー入る入る」「入りますねー」
「あー入る入る」「入りますねー」
3メートルに下げてみて分かったのだが、入った方が断然楽しい。しかもある程度ぼんやり投げても入るがぼんやりしすぎると入らない、というちょうどいい難易度があった。
ちょっと遠くから投げてみる、という余裕すらあった。
ちょっと遠くから投げてみる、という余裕すらあった。
3メートルのカゴはもう崇拝の対象ではなかった。玉を投げ入れられるカゴだ。
入ったり入らなかったりして楽しかった。
入ったり入らなかったりして楽しかった。

飲み物を飲みながら、ダーツ感覚でやってみる

カゴの周りを回遊して時々会話をしつつ、気が向いたら玉を投げる。夏の終わりにこの気だるい雰囲気がとても良かった。運動会ではこうはいかないだろう。
というわけで、ノンアルコールビールを飲みながらやってみてもらう。
というわけで、ノンアルコールビールを飲みながらやってみてもらう。
お酒でもよかったのだが、お二人ともこのあと別の撮影があるということで、お酒に近い飲み物を持ってきた。2次会でダーツバーに来た、という気持ちで玉入れをするのだ。
乾杯をして、
乾杯をして、
玉入れ。
玉入れ。
一層ぼんやりした雰囲気に。
一層ぼんやりした雰囲気に。
これはとても良かった。フロアをうろうろしながら、しゃべったりお酒を飲んだり玉入れをしたりするのだ。ダーツバーに行ったことがないのだが、こんな感じなのだと思う。もしこんな感じじゃないとしたら、新しい「玉入れバー」という飲食店の形態である。こんな2次会や立食パーティーがあったら楽しいと思った。
この時藤原さんは、少し遠くに咲いている彼岸花を撮っていた。
この時藤原さんは、少し遠くに咲いている彼岸花を撮っていた。
彼岸花越しの玉入れバー。
彼岸花越しの玉入れバー。
しばらくしたところで、これといったきっかけもなく数えてみることに。
しばらくしたところで、これといったきっかけもなく数えてみることに。
一個ずつ高く投げながら数えるやつだ。この役、やってみたいと思っていた。
一個ずつ高く投げながら数えるやつだ。この役、やってみたいと思っていた。
座りながら真上に投げるのって意外に難しかった。
座りながら真上に投げるのって意外に難しかった。
「14個です。」
「14個です。」
14個だ。数えてみて分かったのだが、何とも競わず入れていた玉なので、14という数字に1ミリも意味がない。多いとも少ないとも思えない。14個、そう、14個だ。

玉入れのコツ通りにやると、競技が作業に

一通りぼんやり玉入れしたところで、玉入れにコツってあるのだろうか、ということが気になりだした。
調べてみる。
調べてみる。
調べてみるとやはりあるらしい。今まで「玉を空に放る」という点にスポットを当ててきたが、ここにきてうまくカゴに入れようとしてみるのも一興である。
玉を集めて互い違いに組んで、
玉を集めて互い違いに組んで、
なるべく真下から一度に投げるのだそうだ。
なるべく真下から一度に投げるのだそうだ。
こうすると投げるものが大きくて狙いが定めやすい。真下から投げるのは、外れた玉が棒の近くに落ちるのでもう一度集めやすい、ということみたいだ。
集めて、
集めて、
投げる。
投げる。
黙々と集めては投げる、を繰り返した。投げる時間より下を向いて玉を集める時間の方が長い。定期的に、入らなかった玉が地面に落ちる「ドドドッ」という音がした。

今までの玉入れと違って、作業、という感覚が強い。とにかく集めて投げれば何個かは入るので、個人のペースや創意工夫が入る余地が限りなく少ないのだ。内職みたいだなと思った。
玉をカゴに入れるだけの簡単なお仕事です。
玉をカゴに入れるだけの簡単なお仕事です。
アットホームで楽しい職場です。時給850円。
アットホームで楽しい職場です。時給850円。
5分ほどでレンタルした玉50個が全部入った。時給換算したら71円。
5分ほどでレンタルした玉50個が全部入った。時給換算したら71円。
「すごい作業っぽいですね」とか話しながら、いつの間にか玉を入れきっていた。さすがはコツである。玉入れで効率を追求するとこんな感じになるのだ。
なんかこういう、一仕事終えたという表情になる。
なんかこういう、一仕事終えたという表情になる。
競技としてもっと本気でやると、チームの中で玉を集める係と投げる係に分かれたりするのだろう。玉を集める係は、それこそもうずっと地面を向いて、玉入れという競技に向き合うことになる。

5メートルのカゴにも玉を入れたい

一通り玉入れを満喫したところで気がかりなのは、やはりあの5メートルのカゴだろう。
ここに玉がパンパンに入っているところを見たい。
ここに玉がパンパンに入っているところを見たい。
そこで、倒したカゴにあらかじめ玉を入れて、
そこで、倒したカゴにあらかじめ玉を入れて、
3人で協力してその棒を立てたり、
3人で協力してその棒を立てたり、
カゴの位置を上げたり、
カゴの位置を上げたり、
壁画みたいな写真が撮れたりしながら、
壁画みたいな写真が撮れたりしながら、
できました!
できました!
5メートル上空に50個も玉が入ってる。すごい。
5メートル上空に50個も玉が入ってる。すごい。

玉入れバーはとても良かった

色々やったが飲み物を飲みながらぼんやり玉入れをするのは本当によかった。玉入れバーがあったらとてもいいと思う。
この競技が優勝。
この競技が優勝。
投げた玉をカゴだけ持った人がキャッチする、という東京フレンドパークみたいな競技もやった。これは準優勝。
投げた玉をカゴだけ持った人がキャッチする、という東京フレンドパークみたいな競技もやった。これは準優勝。

しかしあの、5メートルのカゴの神々しさったらなかった。大きなものや高いものには、無条件でいいと思わされてしまうパワーがあると思った。

数年前、郊外の工場地帯で夜道に迷ったことがある。昼間の仕事でなんとなくむしゃくしゃすることがあり、もう予定もないので地図は見ないと決めていた。遠くに街の灯りのようなものを見つけたので駅も近くにあるだろうとホッとして近づいていくと、ギラギラに輝く、それはまあ神々しいパチンコ屋さんがひとつ、広い敷地にどーんと建っていた。あのパチンコ屋さんも大きかった。街も駅もなかった。
それはいいとして、このカゴは借りてよかった。
それはいいとして、このカゴは借りてよかった。
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