お会いするなり早々すみません。いまの「やりたい放題」って観葉植物がついてるんですね!? あとは空気清浄機……?
赤ちゃん向けの空気清浄機と観葉植物
やってきたのはピープル株式会社。この「いたずら1歳 やりたい放題」(以下「やりたい放題」)を作り続けている会社だ。
開発を担当している玩具事業部部長の森本さんと広報を担当している事業本部の椿さんにお迎えいただいた。
テーブルには現行版の「やりたい放題」を用意していただいており、あいさつもそこそこに食いついてしまった。
もしかしたらわたし赤ちゃんなのかもしれない。
開発を担当している玩具事業部部長の森本さんと広報を担当している事業本部の椿さんにお迎えいただいた。
テーブルには現行版の「やりたい放題」を用意していただいており、あいさつもそこそこに食いついてしまった。
もしかしたらわたし赤ちゃんなのかもしれない。


こちらが最新式の「やりたい放題」。真ん中のものが以前からあるタイプ。左側がコンパクトな「スマート本」、右側が大型の「ビッグ版」


ピンときてなかった方もこれ見て「あー」ってなりませんか

家にあるもので赤ちゃんが興味を示しがちなもののギミックがつまった、日用品のフェイクのおもちゃがぎゅっと搭載されているのが「やりたい放題」だ。


箱を見て「これか!」となる方も多いかも


からの、本日はよろしくお願いします

「やりたい放題」は1985年に初代が発売開始になったという。当時のものと今のものではだいぶ違いがあるそうだが……まずは目の前にある最新版の話から聞いていきたい。すごく気になるところがあるのだ。





観葉植物…?


そして空気清浄機



基本的に身の回りのもので赤ちゃんが好きそうなもの、興味を示していじりそうなものを選んでるんだろうなーというのは想像つくんですが……。
なぜ数ある家電のなかから空気清浄機が…? なんというか…ちょっと意外です。
なぜ数ある家電のなかから空気清浄機が…? なんというか…ちょっと意外です。



付いているものはすべて実際にご家庭のなかでお子さんがいたずらしてお母さんお父さんが困ってしまったという経験を元にしいています。
モニターさんと、あとは子育てしながら商品開発している社員が多いので社員自身の経験も入ってます。
空気清浄機に関しては、赤ちゃんが生まれると買う方が最近すごく多いようなんですよね。
しかもお子さんがつかまり立ちするときにちょうどいい高さみたいなんです。つかまり立ち、8か月9か月くらいになるとつかまり立ってボタンを押したりお水のタンクを、なんだろうと触ってたらばしゃーんとなっちゃったりとか、赤ちゃんの好奇心の対象になるケースがすごく多いことが分かったんです。
みなさんの育児経験の中からできてる商品ですね。
モニターさんと、あとは子育てしながら商品開発している社員が多いので社員自身の経験も入ってます。
空気清浄機に関しては、赤ちゃんが生まれると買う方が最近すごく多いようなんですよね。
しかもお子さんがつかまり立ちするときにちょうどいい高さみたいなんです。つかまり立ち、8か月9か月くらいになるとつかまり立ってボタンを押したりお水のタンクを、なんだろうと触ってたらばしゃーんとなっちゃったりとか、赤ちゃんの好奇心の対象になるケースがすごく多いことが分かったんです。
みなさんの育児経験の中からできてる商品ですね。



うちの子がめっちゃ空気清浄機さわってますよ。すぐにタンクががしゃーん! ってなる……!(撮影のため編集部の石川が同行しております)



観葉植物も同じで、昔にくらべて室内に植物を置くご家庭が増えてきてますよね。
お子さんにとって興味深いようで葉っぱをちぎって食べちゃったり、土や丸い肥料をつまんだりという話がよく出てくるんです。
お子さんにとって興味深いようで葉っぱをちぎって食べちゃったり、土や丸い肥料をつまんだりという話がよく出てくるんです。



ギミックの一つ一つがリアルな経験から生まれているわけですね。



そもそもが、創業者夫婦が子育てをする中で息子さんがおうちのなかでちょっと目をはなしているすきにティッシュのボックスのなかを全部出しちゃったとか、日用品をいじったとか、発売当初からずっと体験をもとに作っている商品なんです。



ティッシュのギミックはさすがに今も現役ですね。あっ! でもこれ引っ張り出せないんだ。


ティッシュはつまんではなすとヒュッと引っ込む仕組みに変わっていた。これはこれで楽しい……!

赤ちゃんへは「いたずらを」そして親へは「ゆるすこと」を売っている



目に入るものは赤ちゃんにとってはすべて好奇心の対象なんですよね。
当然悪さをしているつもりはなくて、おうちのなかのいろんなものに興味関心を持っているだけなんです。
生活のすべての物に対して、手でつかんで口に入れてたしかめてみるっていうことを赤ちゃんはやります。
当然悪さをしているつもりはなくて、おうちのなかのいろんなものに興味関心を持っているだけなんです。
生活のすべての物に対して、手でつかんで口に入れてたしかめてみるっていうことを赤ちゃんはやります。


洗濯ばさみのパーツ(洗濯ばさみも赤ちゃんが大好きなものだそうだ)は口に入って危なくないように大きくデザインされている



でも親の側としては口にいれたら危ないとかいろいろと事情があってぜんぶ止めなくちゃいけない。
親としては「だめだめだめ」って言いたくなっちゃうところなんですが、このおもちゃで少しでも好奇心を満たしてあげられたらっていうのはコンセプトとしてはもうずっと変わっていないんです。
親としては「だめだめだめ」って言いたくなっちゃうところなんですが、このおもちゃで少しでも好奇心を満たしてあげられたらっていうのはコンセプトとしてはもうずっと変わっていないんです。


スマホのパスワードを解除してスワイプするのもこのおもちゃの上ではゆるされている

冒頭でも少しふれたが、このおもちゃのテーマは赤ちゃんの「いたずら」である。そしてそれと同じくらい重要なのがいたずらが「ゆるしてあげられる」というところなのだ。
赤ちゃんには「いたずら」を売っている。そして親には「ゆるすこと」を売っている。
やってることのスケールがほとんど神様だ。
赤ちゃんには「いたずら」を売っている。そして親には「ゆるすこと」を売っている。
やってることのスケールがほとんど神様だ。

33年にわたり「赤ちゃんあるある」を追っている
空気清浄機のボタンは押されがちだし、観葉植物の葉はちぎられがちで、スマホのロックは思いもよらず解除されちゃう。
身近ないたずらが時代に沿って変化するというのはなるほどなあという話だ。


ひるがえって1985年の初代の「やりたい放題」


電話はまだ[ダイヤル式であった。受話器にもコードがついている。



「やりたい放題」は発売から33年経ってます。生活環境はその間に大きく変わっていますよね。
商品のコンセプトも赤ちゃんの発達の過程も変わらなくて、でも日用品が変わるからそこに対応していくというかんじですね
商品のコンセプトも赤ちゃんの発達の過程も変わらなくて、でも日用品が変わるからそこに対応していくというかんじですね


電話はダイヤルから2000年にはプッシュホンへ


そして2006年以降は携帯電話になっている(写真は2012年版のもの)


同じく2006年のリニューアルで搭載されていまもあるのが「猫ちゃんのしっぽ」



2000年代に入って猫ちゃんわんちゃんを室内で飼う方が増えて、赤ちゃんとペットが一緒に生活するようになったんですよね。



そうか、昔はペット飼うなら外ってイメージでしたね。飼い猫も昼間は外にいた。



赤ちゃんにとっては一緒に暮らすペットはものすごい興味の対象なんです。動くから。
猫ちゃんが尻尾を立てて歩いているとそこを赤ちゃんがぎゅっとにぎってしまって、猫ちゃんがギャーっとなったというのはすごくよく聞く話なんです。
猫ちゃんが尻尾を立てて歩いているとそこを赤ちゃんがぎゅっとにぎってしまって、猫ちゃんがギャーっとなったというのはすごくよく聞く話なんです。


水道も蛇口からハンドル時代に変わり晴れて赤ちゃんのいたずら対象に


テレビは発売当初ダイヤル選局だったのがいまは地テジに



最近はかなり大画面のテレビのお家が多くなって、どうなったかというとテレビ画面をお子さんがたたくそうなんですね。
なのでおもちゃでも画面をたたくと光るようにしました。
なのでおもちゃでも画面をたたくと光るようにしました。


テレビといえば、リモコンも赤ちゃんにははずせない

赤ちゃんのいたずらを観測しおもちゃ化していく。この会社はもうずっと「うちの赤ちゃんあるある」を追っているのだ。

もはやマンションの一室をおもちゃにした
さて、冒頭でもすこしご紹介した「スマート本」。
そうきたか…というネーミングだが、まんまスマホのおもちゃなのではない。むしろよく見るとおもちゃ自体がマンションの一室という体になっている。
そうきたか…というネーミングだが、まんまスマホのおもちゃなのではない。むしろよく見るとおもちゃ自体がマンションの一室という体になっている。


よく見るとYARITAさん宅、502号室、とある

「やりたい放題」は室内にあるなにがしか赤ちゃんの好きなものを一つにまとめているが、ここへきてもはやおもちゃが部屋そのものになったのだ。
日用品のすべては赤ちゃんの好奇心の対象であり、おもちゃになり得るという意気込みのあらわれだろうか。聞いてみた。
日用品のすべては赤ちゃんの好奇心の対象であり、おもちゃになり得るという意気込みのあらわれだろうか。聞いてみた。



これまで作ってきた大きなものよりも閉じてすっとしまいたいというご要望が増えるようになってきて、それでたためるタイプのものを作ったんです。
おもちゃってみなさんたくさんお持ちなんです。家がおもちゃだらけになっちゃうっていうことが多いんですよね。
おもちゃってみなさんたくさんお持ちなんです。家がおもちゃだらけになっちゃうっていうことが多いんですよね。



あっ! なるほど。マンションを丸ごとおもちゃにしてやろうという気概とは別のきっかけがあったんですね。コンパクトにしようと。
そう、乳児のおもちゃって不思議と増えるんですよね。とくべつ裕福なわけではないのにどんどんどんどん増える。
おさがりをもらったり、プレゼントをもらうきっかけも乳児期は多いからですかね。
赤ちゃんが少しでも集中して遊んでくれるものがあると親は家事をするあいだ助かるからそれで親自身がすがるように買って増えたりもするし。
そう、乳児のおもちゃって不思議と増えるんですよね。とくべつ裕福なわけではないのにどんどんどんどん増える。
おさがりをもらったり、プレゼントをもらうきっかけも乳児期は多いからですかね。
赤ちゃんが少しでも集中して遊んでくれるものがあると親は家事をするあいだ助かるからそれで親自身がすがるように買って増えたりもするし。


マンションの中はこんな感じ、さきほどご紹介のスマホもここに


おしりふきが埋まってるな…!?



ティッシュじゃなくておしりふきなんですね……!



箱のティッシュももちろんまだ家庭には現役ですけど、おしりふきを気にするって赤ちゃんがすごく多いんです。



おしりふきはティッシュよりも赤ちゃんの近くにあるからなー。


そして目玉はブラインド



ブラインドって紐がついてるじゃないですか。赤ちゃんは紐が大好きなんです。
手につかみやすいんですよね。
で、開けると洗濯を干しているお母さんが見えるという。いないいないばあの要素になってます。
細かい部分なんですが…扉を閉じると、表には洗濯が干してあります笑。郵便受けもマンションは縦のタイプのものが多いのでそうしました。
手につかみやすいんですよね。
で、開けると洗濯を干しているお母さんが見えるという。いないいないばあの要素になってます。
細かい部分なんですが…扉を閉じると、表には洗濯が干してあります笑。郵便受けもマンションは縦のタイプのものが多いのでそうしました。


なぜマンションのとびらに洗濯が? と思ったそういうことだったか

申し遅れましたがスマホのギミックにはSNOW的な写真アプリがフィーチャーされてます

赤ちゃんが最高に興奮するメガネが発見されました



メガネの仕掛けは、私はメガネかけないので意外でした。


「ビッグ」シリーズにはメガネをかけたお母さんが登場



メガネは触りますよね!



石川さんの眼鏡は赤ちゃんの興味を引くいいメガネですね……!
(よく見て)これはすごい。黒いふちがはっきりしてますし、柄もついてる。赤ちゃんにとってはすごく興味深いメガネだと思います。
(よく見て)これはすごい。黒いふちがはっきりしてますし、柄もついてる。赤ちゃんにとってはすごく興味深いメガネだと思います。


石川の眼鏡、こういうの



うちの子どもにはかけてても置いててもつかまれます!



すごく良いですよ。白も黒も赤も入ってる……。すごく良いメガネですよ。



森本さん絶賛! プロもみとめる「赤ちゃんの興奮するメガネ」だ。


ネックレスもひっぱれるようになっている。抱っこ期の赤ちゃんがネックレスを引きちぎったという荒くれた話、そういえば聞いたことある……!



赤ちゃんのおもちゃがどうしても増えるというのは、親には赤ちゃんが喜ぶおもちゃがうまく見つけられないというのもあるんですよね。それこそメガネとかそういうものに食いついたりして。



大人がよかれと思うようなものだと食いつきがわるいということが多いんですよね。
赤ちゃんって本当に意外で。たとえばなんですけど、「やりたい放題」でもここ、裏の突起が好きだったり。
赤ちゃんって本当に意外で。たとえばなんですけど、「やりたい放題」でもここ、裏の突起が好きだったり。


裏の突起!



ひっくり返して遊ぶそうなんです。ちょうどここに指がぴったりはまるらしくて……。



わー! まさかの……。そ、それって屈辱だったりしませんか…?



本当に、彼らの興味というのはこちらの予想できるところではないんですよね……。

プロフェッショナルにもまるで読めない、予想外なところに赤ちゃんは興味を示す。
私たちも全員いつかは赤ちゃんだったはずなのだ。しかし当時なにを考えていたのかまるで思い出せない。
なぜ大人が考えに考え知見をちりばめにちりばめた機構であそばず裏に指をはめるのか、赤子に戻って自身に問いたい。
私たちも全員いつかは赤ちゃんだったはずなのだ。しかし当時なにを考えていたのかまるで思い出せない。
なぜ大人が考えに考え知見をちりばめにちりばめた機構であそばず裏に指をはめるのか、赤子に戻って自身に問いたい。

33年前から「共感」を突いていた
と、赤ちゃんの行動の意外さに圧倒され黙ってしまったが、お話をうかがっていると乳児のおもちゃにだいじなのは赤ちゃんとあと圧倒的に「親」であるということに気づく。
0歳や1歳前半くらいの赤ちゃんは自ら「あのおもちゃが欲しい」と明確には意思を示さないだろう。
おもちゃ屋の前でねだってごねはじめるのはまだ先という世代だ。
0歳や1歳前半くらいの赤ちゃんは自ら「あのおもちゃが欲しい」と明確には意思を示さないだろう。
おもちゃ屋の前でねだってごねはじめるのはまだ先という世代だ。



一番お子さんを見ているのはお母さんお父さんなので、うちの子これ好きだろうなと思ってもらえるような仕掛けは入れておかないといけないですよね。大人の共感を呼べるものは大事にしています。


実際のいたずら報告は「ごくまれ」とのことだが「これ好きだろうな」という共感の意味で取り入れたというのがマヨネーズのチューブ


にぎるとマヨネーズが出る。「好きそうさ」はすごい



なるほど…「共感」なんですね。



商品名の「いたずら1歳」というのもそうです。母さんお父さんにうちの子のことだ!って思ってもらいたいという。

秘蔵の歴代コマーシャルも見せてもらった

ティッシュを出しまくる赤ちゃんの図、というのがまさに親にとっては共感そのもの

SNSが一般的になったことで「共感の時代」なんていわれる近頃だが、33年前から共感を得ようとしていたと思うと感慨深けぇ。つい口調が江戸っ子になってしまった。
赤ちゃんのおもちゃというのはプレゼント需要も多いようだが、親にとってのかけこみ寺みたいになっているところが大きい。少しのあいだでも夢中になってくれるものをと選ぶ気持ちは切実だ。
赤ちゃんにはいたずらを、親へはいたずらをゆるすことを売っていると書いたが、さらに親にはもうひとつ、「このおもちゃはうちの子の話をしてくれているぞ」という子育てにおける共闘感みたいなものを絶妙に売っているんじゃないか。
赤ちゃんのおもちゃというのはプレゼント需要も多いようだが、親にとってのかけこみ寺みたいになっているところが大きい。少しのあいだでも夢中になってくれるものをと選ぶ気持ちは切実だ。
赤ちゃんにはいたずらを、親へはいたずらをゆるすことを売っていると書いたが、さらに親にはもうひとつ、「このおもちゃはうちの子の話をしてくれているぞ」という子育てにおける共闘感みたいなものを絶妙に売っているんじゃないか。




次のいたずらは秘密です

今後搭載したいいたずらを聞いてみたところ「秘密です」とのことだった。
次のリニューアル時に採用する可能性があるのでまだ口外できないということだ。
おそらくいまもっとも部屋で赤ちゃんが興味をもっているものなのだと思うのだが……なんだろう。
私もずいぶん大人になり世の中にはいろんな会社があるということはだいたいわかっていたつもりだが、赤ちゃんのいたずらが社運にかかわる企業秘密だという会社があるところまでは想像できていなかった。
次のリニューアル時に採用する可能性があるのでまだ口外できないということだ。
おそらくいまもっとも部屋で赤ちゃんが興味をもっているものなのだと思うのだが……なんだろう。
私もずいぶん大人になり世の中にはいろんな会社があるということはだいたいわかっていたつもりだが、赤ちゃんのいたずらが社運にかかわる企業秘密だという会社があるところまでは想像できていなかった。


パンフレットを見て懐かしくてふるえた室内用の紙製ジャングルジム…! 現役でいまなお売れているそうです



余談ついでに、歯固め(歯の生え始めの歯茎のかゆみを解消するおもちゃ)がかわいすぎたのでこれもみんな見て…


