大人になって靴を洗わなくなった
とはいえぼくはフリーランスなので、実は連休の実感があまりない。むしろこれら干してある靴を午後の街に見かけて「ああ、休みなんだなあ」と思う、といったぐあいだ。
全体的に白い玄関周りにビビッドなピンクが花を添えている。左右がちょっと離してある点に「干してる感」があっていい。
似た色が2足。ブルーが好きなのかな。左の靴が段差をまたいじゃってるのがキュート。
ブラウンにホワイト、そしてガラスブロックという落ち着いた玄関に黒いスニーカー。シック。
こんなぐあいに干してある靴たちを見かけて、なんかいいなあ、と思うわけです。なんなんでしょうか、この感慨。
思えば大人になって靴を洗わなくなった。革靴をはじめとして、アダルトな靴は洗えないことが多い。
そもそもあまり汚れない。洗わなきゃならないほど汚れたときには買い換える必要があるぐらいくたびれている。それが大人だ。
匂いでいえば、中年の靴は子供の靴よりも格段に洗浄の必要があるが、残念ながら見えないので洗わない。
つまり感慨の正体は郷愁かもしれない。でも靴洗うのすごくいやだったな、子供の頃。
ドロシーとマイケル
さて、上の3例を見てお気づきかと思うが、いずれもかかとを下にして立てかけてある。
これとは逆につま先を下にしているケースも見かける。
かなり急角度な干しっぷり。ナチュラルな感じの玄関周辺にブルーが映える。あと手前に「
七人ぐらいのこびと」がいる。
上はつま先立ちの例。今回紹介する中では最も急角度だ。
このつま先立ちタイプを「マイケル」と名付けよう。もちろんジャクソンさんのことだ。名曲「Billie Jean」などのミュージックビデオで見られる、あの特徴あるつま先立ちのダンスを彷彿とさせる。フー!
一方、さきほどのかかとタイプを「ドロシー」と呼ぼう。「オズの魔法使い」で彼女はかかとを3回鳴らした。最もかかとにゆかりがあるキャラクターといったら彼女だ。
きっちりと並べられたマイケル。ひもの緩められ具合が休日って感じだ。
3連マイケル。
ドロシーとマイケル、自分はどちらのスタイルで干していただろうか。もはや覚えていないがいま干すとしたらドロシーでいうとおもう。なんとなくつま先に水たまりそうだし、かかとの下にした方が変形しなそうな気がするから。
玄関から一歩下がったマイケル。その蓋の上に置きたくなる気持ち、わかる。
ドロシーでもマイケルでもない平置き。手前の長靴がそうなるのはわかるが(まくってるのがいい)、奥のスニーカーはドロシーかマイケルかしたほうがいいのでは。
こちらも平置き。謎の間隔。風に吹かれて倒れたのだろうか。
ドロシーとマイケル、夢の共演。手前の擬木蛇口もすばらしい。
ところでこの共演が行われているお宅の前にある電柱、下に女性の横顔イラストが描かれているのが気になる。
きけば練馬区名物らしく、周辺のいたるところで見かけた。
自動車に対して安全運転を促すためのものだという。反射塗料で描かれていて、光が当たると光る。
日本以外では靴をどこで干すのだろうか
それにしても、こうして見ていくと靴がいかに派手な色をしているかに気づく。玄関周りの差し色になっていて、そこも見所だ。
さて、これまで見てきたものはすべて玄関先で干されていたが、違う場所に置かれている例もある。そういうケースを見てみよう。
ガレージの窓でドロシー。窓の色と靴の色がおそろいだ。すばらしい。
右下、窓の下の植木鉢でマイケル。
上の服と一緒に干されている様子を見てあらためて気づいた。身につけるもののなかで、靴だけふだんから置かれる場所が独特だ。あたりまえだけど。
靴箱とクローゼットはたいてい別の場所にある。服は玄関に脱ぎ置かれたりしない。コートや傘は別だが。
靴だけが外の地面に接する装身具で、いわば地べたの延長だ。洗って干される場所が違うのも、服とは全然違うものだからだろう。靴を部屋干しする人っているのだろうか。
部屋の中まで靴で入る国の人たちは、洗った靴をどこに干すのだろうか。干さないのだろうか。もしかしてそもそも洗わないのだろうか。気になる。
こういう例もある。塀の上。
地面に置かないケースもある
せっかく洗ったのに地面に置かれるのは、靴が地べたの延長だからだ。これって考えたらちょっとおもしろい。だれも洗ったTシャツを地面に置いたりはしない。
ただ、時には服のように干されていることもある。
この吊り下げられてる靴を見つけたときはうれしかった。なんだろうこのうれしさ。
中敷きも丁寧に。こうやって見ると、靴を吊って干すのが難しいことがわかる。
いちばんびっくりしたのはこれ。
「靴の干し場所は玄関に限る」という原則と「ちゃんと吊ってあげたい」という思いとを両立した名作。すばらしい。真ん中にもうひとつフックがあるので、最大3足いける。
いちばんすてきなのは上履きだ
さきほど塀の上にいた靴があったが、あれはしみじみいい。外でありながら、でも地べたではなくちょっと高い場所に置きたい、という靴思いの心意気が胸を打つ。
こちらも塀の上に。キュート。
水色と黄色、大きさの違う上履き。低い塀の上。とても味わい深い。
やはり、干してある靴は上履きがいい。子供の頃を思い出す。連休の終わり感ある。すばらしい。上の事例を、暫定的に「干してある靴 No.1」としたい。
これもいい。やはり上履きだ。
大きさの違うのがふたつ、というのはもはや様式美である。
そして冒頭のドロシー上履き。ドロシーはかかとを3回鳴らしておうちに帰った。 "There's No Place Like Home" (おうちが一番!)は連休明けにふさわしい。それにしても左右逆なのが、ほんとうに愛らしい。
ひさしぶりに洗おうかな
連休はすっかり終わってしまったが、靴洗おうかな、と思った。たぶんドロシーで干すな、ぼくは。
「お! みつけた!」って思って見てみたら、干してあるわけではなくてただ外に置かれているだけのこともしばしばあって、がっかりする。なんだろう、このがっかり。
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