とくべつ企画「すげえ」 2018年5月4日

すごい辛いカレーパン、その名も「地獄」

地獄!
地獄!
ものすごく辛いカレーパンを見つけたので紹介したい。

その名も「地獄のカレーパン」。

名前からしてネタ的に作られたものかな、と思っていたのだけれど、食べてみたら本格派の地獄でした。
1975年愛知県生まれ。行く先々で「うちの会社にはいないタイプだよね」と言われるが、本人はそんなこともないと思っている。(動画インタビュー)

前の記事:人通りの多い場所にテントを張って着替える

> 個人サイト むかない安藤 Twitter

まず商店街自体がいい

そのお店は横浜の白楽という駅からほど近い「六角橋商店街」の中にある。

まずこの商店街がかなりいいのでカレーパンを食べる前にご案内したい。商店街は大通りと仲見世とで構成されており、大通りは車も通ることができる立派な商店街なので心配はいらないのだけれど、問題は仲見世である。

ふらりと入ると「はて、ここはどこだったかな」と混乱する。中国とか東南アジアなんかの細い路地に迷い込んでしまったような雰囲気なのだ。
仲見世にはこのくらいの幅を保って両側にいいお店がずらっと並んでいます。
仲見世にはこのくらいの幅を保って両側にいいお店がずらっと並んでいます。
居酒屋、本屋、雑貨屋
居酒屋から本屋、雑貨屋
楽器、定食、洋服、なんでもある。
楽器、定食、洋服。それこそなんでもある。
たまにアンティークウォッチを扱っているお店なんかも。
たまにアンティークウォッチを扱っているお店なんかも。
ここでひとつ気になる施設があったので紹介したいと思う。八百屋さんの先にトイレの看板があるのが見えるだろうか。
八百屋さんの二つくらい先にトイレの看板が見えると思う。
八百屋さんの二つくらい先にトイレの看板が見えると思う。

入口がすごい狭いトイレがある

このトイレの入り口が狭いのだ。

どのくらい狭いかというと、このくらいである。
え?
え?
最初隣のシャッターの降りているスペースがトイレなのかと思った。時間帯で閉まるのだな、と。しかし違った。トイレに行きたければこのすき間を入って行け、ということなのだ。

幅は50センチくらいだろうか。横歩きで入る感じのいわゆる「すき間」だ。
入口このくらい。
入口このくらい。
どう見ても建物と建物の間なので入っていいのか躊躇するが、結論から言うと入っていい。すき間なので夜になると暗いが、すき間なのでしようがないのである。
ネズミにでもなった気分になれる。
ネズミにでもなった気分になれる。
恐る恐る進むと前に明るくぽっかりと開けた空間がある。鍾乳洞ならば竜の住み家とでも名前がつきそうな場所と雰囲気だ。

そこがトイレなのである。
トイレ自体はきれいで普通に使えます。
トイレ自体はきれいで普通に使えます。
せっかくなのでトイレを使わせてもらった。横並びに男性用、個室、女性用があり、まあまあきれいなトイレだった。僕が出たあと、同じすき間から入ってきて用を足していく男性がいたので、この商店街の人たちはみんなこの狭さに慣れているのだと思う。

以上、入口が狭いトイレ情報でした。話がそれてしまったが、次のページでいよいよ辛いカレーパンです。
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「文明」という名の喫茶店がある

そんな魅力的な六角橋商店街の仲見世にある「珈琲文明」という喫茶店。ここが今回のおはなしのメインである。
人気店。開店前からちょっとした行列ができていました。
人気店のようで、開店前からちょっとした行列ができていました。
お客の回転重視のお店が多い中、長居してほしい、という喫茶店も珍しい。
カフェはお客の回転重視のお店が多い中、長居してほしい、というリクエストも珍しい。
お店の前を通るとドアの外までコーヒーのいい香りが漂っている。吸い寄せられるように入るとビシッときめた正統派マスターが迎えてくれた。
マスター。カレー好き。
珈琲文明のマスター赤澤さん。カレー好き。
天井が高いおかげだろうか、店内は外から見るよりずっと広く、どの席に座っても圧迫感がまるでない。僕が行った時にはバッハの無伴奏チェロが真顔で流れていた。そうですよね、こういう空間だとジャズよりもクラシックですよね。
ピカピカに磨き上げられたシュガーポット。こういうところにもマスターのまじめさが写っている気がする。
ピカピカに磨き上げられたシュガーポット。こういうところにもマスターのまじめさが写っているような気がする。
コーヒーにはかなりこだわりがあるようで、注文を受けてから一杯ずつサイフォンで入れてくれる。この時に流れてくる香りがお店のどっしりとした雰囲気と相まってただならぬ良さなのだ。ここでならば読みあぐねていた小難しい歴史小説も読了できる気がしてくる。

こだわりのコーヒーメニューをパラパラめくっていると、なにやら急に雰囲気の違うページが現れる。
カレーパンのページである。
カレーパンのページである。
喫茶店でカレーパン?まあ意外ではあるけれど、なくはないだろう。でもその下にある「地獄のカレーパン」はどういうことか。これが今回の主題なわけだけれど、こんなに雰囲気のいい喫茶店なのでまずはコーヒーを注文させてもらった。
アイスコーヒー。
アイスコーヒー。
うまい。
うまい。
これがかなり本気で美味しい。

僕はコーヒーが大好きで毎日がぶがぶ飲んでいるわりに、味についてはほぼ素人なのだけれど、そんな僕がハッとするほど美味しいというんだから間違いないと思う。詳しくなくてもわかるくらいの美味しさである。

落ち着いた店構え、やりそうなマスター、心地よい音楽。ここまでは完全にいい喫茶店の条件を満たしている。そう、本当にいいお店なのだ、地獄のカレーパンがやってくるまでは。
こいつがやってくるまでは。
こいつがやってくるまでは。

状況が一変する

僕の前に地獄のカレーパンがやってきた。注文するときに「かなり辛いですよ」と念を押された品である。
一緒にアイスコーヒーよりもでかい水がついてくる。このあとおかわりして2杯飲んだ。
一緒にアイスコーヒーよりもでかいグラスにいっぱいの水がついてくる。このあとおかわりして2杯飲んだ。
カレーパンというとあのこんがり揚がったやつを想像するかと思うのだけれど、こちらのカレーパンはパンシチューのようないでたちである。いまこういう料理を何て呼ぶのかわからず「パンをくりぬいてシチュー入れた料理」と検索したら「パンシチュー」と出てきたのでそのまま書いた。

どうやって食べたらいいのかはメニューに書かれているので参照してほしい。
途中でなりふりかまわなくなっているけど。
途中でなりふりかまわなくなっているけど。
しかし、見た目の穏やかさはふたを取った瞬間、叫喚に変わる。
じゃーん。
じゃーん。
これはきっと辛い。食べなくてもわかるほど。だって明らかに赤いから。

それにしてもいい香りがしているのが悔しい。食虫植物に誘われる昆虫のようである。ダメだとわかっていても近づいてしまう。

せめて赤さが見えなくなるよう、よく混ぜてからいただくことに。混ぜるといい香りが拡散されてこれがまたたまらなく美味そうなのだ。
美味そう。
美味そう。
メニューに書かれていたとおり、まずはカレーをふたに塗って一口食べてみた。
あれ。
あれ。
美味しい。

あれ、これは美味しいですよ。きっちりスパイスから作られているのがわかる本格的な味付けで、辛い中にも野菜や肉のうま味をしっかりと感じるのだ。

いや、ちょっと待って
まってまってまって
まってまってまって
ダメだわこれは。
ダメだわこれは。
一拍おいて容赦ない辛みが闇の中から飛び出してきた。しかもその出かたがすごい。俺が俺が俺が!だ。鮮烈な辛みは口から背中を経て一瞬で全身にいきわたり、反動で尻が2ミリくらい浮く。

辛い、と一言で言ってしまえばそれまでなのだけれど、辛いというより「痛い」が近い。刺すような痛みが体を中からもだえさせる。

ここから15分くらいかけて完食するまで、すみません写真を撮る余裕がありませんでした。
涙目。
涙目。
僕の後ろにいた3人組も地獄のカレーパンを注文していたが、3人で1個の地獄を注文して結果残していた。聞くと「死んだじいちゃんに食べさせたら生き返りそうな辛さ」と言っていた。わかる。食べた人にだけわかる「言いえて妙」感である。
それでも完食した自分をほめたい。
それでも完食した自分をほめたい。

えんま台帳に先人たちの叫びが

地獄のカレーパンは完食してもギブアップしても、えんま台帳とよばれるノートに感想を残すことになっている。えんま台帳はすでに7冊目に突入していた。それほど挑戦する人が絶えないということだ。
辛さでコンタクトが曇ってよく見えなかった。
涙でコンタクトが曇ってよく見えなかったがこんなかわいい柄だったのか。
えんま台帳に記された先人たちの感想を一部紹介したい。
顔中から液体、妻はどん引き
顔中から液体、妻はどん引き
激痛、死
激痛、死
地獄、胃薬
地獄、胃薬
どれも食べ物に対する感想とは思えない強さがある。僕も完食者のはしくれとして、記させてもらった。
ありがとうございました。
ありがとうございました。

地獄はことしで11年

地獄のカレーパンは開店当初から11年間、ずっと続けているのだとか。レシピはカレー好きのマスターオリジナル。「ギブアップするより完食される方が多いですよ」というマスターの言葉はえんま台帳を見れば本当であることがわかる。信じられないくらい辛い、でもなぜか美味しいので、残すのも食べるのも地獄なのです。

後日談

この日は気温が高く蒸し暑かったのだけれど、帰りの電車の中で寒くてガタガタ震えた。たくさん汗をかいたからかもしれないし、カレーの辛さが冷めるときに体温を奪ったのかもしれない。あのカレーパンならばそのくらいやるだろう。

翌日はなぜか強烈におなかがすいていつもはほとんど食べない昼ごはんを2回食べた。その夜にすこしおなかが痛くなった。今はまだ再び地獄を食べたいとは思わないけれど、なんとなく魂があの商店街に向かっているような気がするんです。
居酒屋の裏のオープンスペースに放置されていた保冷箱。たぶんこの日の食材。
居酒屋の裏のオープンスペースに放置されていた保冷箱。たぶんこの日の食材。
おいしいスペシャリティコーヒーの店「珈琲文明」

〒221-0802
横浜市神奈川区六角橋1-9-2
TEL/FAX 045-432-4185
HPはこちら
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