特集 2018年3月5日

ジュンサイみたいな雑草、オカジュンサイを試す

ジュンサイっぽいけど、どこにでも生えている雑草です。
ジュンサイっぽいけど、どこにでも生えている雑草です。
ギシギシという雑草の新芽にはジュンサイに似た粘りがあり、オカジュンサイという名前で呼ばれているそうだ。食べられる野草に詳しい人から教えてもらった。

あのどこにでも生えている雑草の新芽が食べられるのか。しかも池の中で育つ高級食材のジュンサイに似ているとは、一体どういうことだろう。
趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。(動画インタビュー)

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これがギシギシの新芽、オカジュンサイ

ギシギシという名前は聞いたことが無くても、写真を見れば、「ああ、これね」と心当たりがあると思う。

全国の河原や草むらに生えている、あの雑草だ。
これがギシギシ。
これがギシギシ。
なんとなくホウレン草っぽい気もするが、食べて美味しいようには思えない草だし、これがジュンサイに似ていると言われても意味が解らないと思う。

12~3月くらいにニョキッと出てくる、ギシギシの新芽がジュンサイっぽいらしいのだ。
このニョキッとした新芽が、オカジュンサイと呼ばれる部分。
このニョキッとした新芽が、オカジュンサイと呼ばれる部分。
ギシギシはどこにでも生えている草だが、人通りのある場所で摘んでいると、通行人に「なにを採っているんですか?」と高確率で聞かれて、教えたくない訳ではないのだが説明が面倒くさくて戸惑うことになるので、収穫はなるべく人の通らない場所が良いと思う。

人がよく通る場所は、だいたい犬の散歩コースになっているし。
このくるっと丸まった感じはジュンサイっぽいかも。
このくるっと丸まった感じはジュンサイっぽいかも。

オカジュンサイは、ちゃんとヌメリがある

ジュンサイといえば、あの独特のヌメりである。サンショウウオの卵塊みたいなヌメヌメこそがジュンサイの価値だろう。

オカジュンサイを名乗るのであれば、ギシギシの新芽もヌメらなくてはならない。

ヌメるのかい?
ヌメってる!
ヌメってる!
ハサミで根元を切って収穫してみると、ちゃんとヌメっていて見直した。こんな乾いた河原で育ったわりには、しっかりとヌメヌメである。

もちろん水の中で育つジュンサイのように、全体をヌルんとコーティングされた高級感はないものの、丘育ちにしては立派なうるおいといえるだろう。
これが本物のジュンサイ。乙幡さんの記事『木の船に乗ってじゅんさいを採る』より。
これが本物のジュンサイ。乙幡さんの記事『木の船に乗ってじゅんさいを採る』より。
ええと、本物のジュンサイを見てしまうと、やっぱり全然違いますね。

環境も種類も違うのだから、比べてガッカリしてはいけないの。似ているところをみつけて喜ぼうよ。
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オカジュンサイの下処理をする

なるべく若くて柔らかい新芽を選んで摘んできたオカジュンサイは、よく洗って薄皮(ハカマ)を剥いていく。

「食べられる野草」というのは、ほとんどが収穫そのものよりも、食べられるようにするまでの作業が面倒臭い。「がんばれば食べられる野草」なのだ。
よく洗って、茶色い薄皮を丁寧に取り除く。
よく洗って、茶色い薄皮を丁寧に取り除く。
売ってる野菜ってすごい楽だなーって毎回思う。でもこのチマチマした作業こそが実は楽しい。心が落ち着く。もちろん量にもよるが。

梱包材のプチプチを潰すよりも、オカジュンサイやノビルの掃除をする方が、生産性がちょっとでもあって一挙両得だ。
水分を吸収したことで、さらにヌメるね。
水分を吸収したことで、さらにヌメるね。
水で洗うことで水分をたっぷりと吸収したオカジュンサイは、今まで以上にヌメるようになった。ジュンサイものまね度がアップである。

シュウ酸を抜かないといけない

オカジュンサイを食べるにあたって、注意しないといけない点がある。シュウ酸という成分が含まれており、これに毒性があるのだ。

もちろん毒性といっても程度の問題。シュウ酸はホウレン草などにも含まれる成分だし、食草とされている野草だ。生でモリモリと食べなければ大丈夫だと信じたい。茹でればアクとして抜けてくれるはずだ。

もちろん体質や持病によっては避けるべき食材だろう。無理して食べるようなものではない。
シュウ酸を抜くために、塩水で茹でます。
シュウ酸を抜くために、塩水で茹でます。
茹でることでシュウ酸をしっかりと抜きたい気持ちと、茹ですぎると大切なヌメりが溶けてしまうかもという不安がせめぎ合う。

市販のパスタみたいに茹で時間何分と書いてない初挑戦の食材だ。迷うね。こういう食材を調理するのが好きな割に、アクがとても苦手なのだ。

いつになく真剣な目で浮き上がるオカジュンサイを睨みつけ、クタクタになる手前のクタくらいで取り上げ、しばらく水にさらした。
茹で加減、うまくいったんじゃないだろうか。
茹で加減、うまくいったんじゃないだろうか。
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オカジュンサイはそこそこジュンサイだった

「俺はさ、雑草育ちってよく言われているけど、雑草の中でもギシギシの新芽、オカジュンサイなんだよ。ただの雑草じゃなくてさ、粘りがあるんだ。わかるか?そしてちょっとだけ毒を含んでいるんだけど、うまいこと料理すれば温室育ちの野菜にだって負けねえ素材になるんだ」

茹であがったオカジュンサイに醤油を一垂らししたところで、頭の中でレスラー風に語りだした。
おおお、ヌメるね。
おおお、ヌメるね。
箸でつまみ上げたオカジュンサイは、予想以上の粘りを見せてくれた。名前に恥じない実力である。

食べてみると、表面のねっとりした粘りの中にシャキシャキした歯ごたえがして、なかなかのものだった。

よく洗ったジュンサイ、あるいはジュンサイの原種だよと出されたら、そうなんだと信じる人も多いだろう。
お吸い物にするとよりジュンサイっぽくなるかな。片栗粉でとろみを補強してもよかったか。
お吸い物にするとよりジュンサイっぽくなるかな。片栗粉でとろみを補強してもよかったか。
本物のジュンサイの味をすっかり忘れているのだが(ほとんど食べたことがない気もする)、食べ比べればオカジュンサイは歯ごたえが硬く、ヌメりが弱いだろう。

一口目に感じたジュンサイっぽさが、食べ勧めると醒めていく。なんだか『美味しんぼ』で読んだ、小麦粉のグルテンで作った代用ガムの話を思い出した。
そばに乗せてみたら、ジュンサイそばと山菜そばの中間みたいな感じに落ち着いた。
そばに乗せてみたら、ジュンサイそばと山菜そばの中間みたいな感じに落ち着いた。
「別にな、俺は高級料亭で使われるようなジュンサイになりたいわけじゃないんだよ。なれるわけねえだろ、育ちが違うんだ。水と油ならぬ、水と丘だよ。オカジュンサイなんだからさ。この物足りないヌメりと歯に引っかかる繊維でやるしかねえんだ」

そうだよね、うんうん。これがジュンサイだと思わなければ、オカジュンサイは個性的な野草でうまいのだ。

ただオカジュンサイを食べていたら、なんだか歯がギシギシといってきた。その名前の由来は不明のようだが、食べるとおそらくシュウ酸で歯がギシギシ言うからギシギシなんだと思う。
茹でたオカジュンサイとひきわり納豆を混ぜてみたら、同化してオカジュンサイの存在が消えた。
茹でたオカジュンサイとひきわり納豆を混ぜてみたら、同化してオカジュンサイの存在が消えた。
茹でずに天麩羅にしたのが一番うまかったかも。シュウ酸が抜けているかが怪しいけど。ほとんどの野草は天麩羅にすればうまい説あるよねー。
茹でずに天麩羅にしたのが一番うまかったかも。シュウ酸が抜けているかが怪しいけど。ほとんどの野草は天麩羅にすればうまい説あるよねー。

重曹で茹でてみる

オカジュンサイの歯ごたえとヌメりは好きなのだが、やはり歯がギシギシとなるシュウ酸のアクが気になる。

アクを抜くといえば、タケノコやワラビなんかは、重曹を入れたお湯で茹でたりするなということで、ちょっと試してみることにした。
1リットルのお湯に小さじ1杯の重曹を入れてみました。
1リットルのお湯に小さじ1杯の重曹を入れてみました。
「おれのアクはな、抜こうと思えば抜けるんだよ。重曹を使えば一発だ。たださ、アクと一緒に大切なものが抜けちまうんだ。口に合わないやつは食べなくても構わねえよ。多少はアクが残っても、生まれ持った味を生かすことを優先しなきゃ、ただの草で終わっちまうんだ」

重曹入りのお湯で茹でたオカジュンサイは、すっかりヌメりを失ってしまった。そして意外とまだアクは残っていた。
ただの草になってしまったが、ジュンサイの方向性を諦めて、醤油マヨネーズで食べたらうまかった。
ただの草になってしまったが、ジュンサイの方向性を諦めて、醤油マヨネーズで食べたらうまかった。
オカジュンサイ、通称オカジュン(今決めた)。
タラノメやフキノトウみたいなメジャー感はないものの、新芽を選びながら摘むのは楽しいし、とても個性的で記憶に残る食材だと思う。

年に一度くらい、居酒屋の突き出し程度の量を摘んで食べ、「好きなんだけど、やっぱりちょっとギシギシするなー」とぼやく、腐れ縁のような関係を続けていこうと思う。

オカジュンサイの料理実験、なかなか楽しかった。野菜代わりにモリモリ食べられる食材ではないが、一種の珍味として味わいたい。

お腹はちっとも満たされない野草だが、知的好奇心はしっかりと満たされた。
今の時期の野草なら、カラシナがうまいと思います。
今の時期の野草なら、カラシナがうまいと思います。
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