一生見ることはないとおもっていた
ベルギーのブリュッセルにやってきた。
ブリュッセル名物の小便小僧。真ん中の黒いのが小僧です
ブリュッセルなんて、一生行くこともないだろうとおもっていたけれど、なんやかんやあって、来てしまった。
世界遺産のブリュッセル市庁舎、ライトアップされてます
ブリュッセルの町は、石造りの豪華な装飾が施された古い建物が隙間なく並んで建っており、東京の四角いビルが立ち並んだ景色を見なれた者としては、町自体がハウステンボスのようで新鮮だった。ハウステンボス行ったことないけど。
そんな古い町並みが残るブリュッセルだが、郊外にかなり奇抜な形の建物があるという。それが「アトミウム」という建物だ。
地下を走るトラムを乗り継ぎ、郊外のヘイゼル駅にやってきた。駅を出ると、遠くに異様な物体が見える。
あれだ!
複数の丸い球体が、棒で繋がっている。この位置から見てあのデカさということは近づくとどれほどデカイのか。心して建物に近づく。
でけぇ
大仏とかビルとかダムとか鉄塔とか、デカい建造物というのは「そういう形なんだろうな」という了解がこちらにもあるので、なるほどでかい、という情報がスッと入ってくるのだが、このアトミウムは、デカさに加えてその異形な造形が脳に混乱をもたらす。かたちを理解しようとさらに近づくと、さらにデカくなり、ただ圧倒される。
デカさ
近づくと意味がわからない
このアトミウム、見る向きをかえると、かたちの様子がガラッと変わってまたおもしろい。
シュッとした感じになった
近づくとやっぱりわけがわからない
昔の未来予想図には、こういった奇抜な形の建物がよく出てきた。
曲線を多用したり、不安定だったりする建物も、建築の技術が進めば簡単に建てられるはずと信じられていた。
しかし、建築の技術がいくら進んでも、建物は、できるだけまっすぐ建てたほうが、経済的に効率がいい。だから変な形の建物はそんなに多くない。
建物の形を決めているのは結局、技術ではなく、経済ではないか。
中に入れるようだ
アトミウムは、地面と接地する部分に、受付があり、そこでチケットを買えば、いちばんてっぺんの展望台まで行けるという。
実際に来る前は「外で形だけ見られればじゅうぶんかなー」と思っていたけれど、中に入ることができると聞くと入ってみたくなるというのが人情というもの。
チケットを12ユーロで購入し、エレベーターに乗るための行列に並ぶ。
この部分に人がズラッと並んでいた
すでにめちゃめちゃ人が並んでおり、寒空の下、20分ほど待つ。おそらく気温は0度に近かったはずだ、じっと待つこの20分が長い。
やっと入る順番が来たと思ったら、手荷物検査で背負ってるリュックサックをロッカーに預けてこいと言われ、また最初から20分並ぶことに。そういう大事なことは、チケットを買った時点で知らせてほしい。
でも、せっかく12ユーロもの大金を払ったので我慢して並ぶ。
めちゃめちゃ並んでいた
やっと順番が来たと思ったら、ヒョウのきぐるみと何が何だかわけがわからないまま強制的に写真を撮られた。
なんなんだこのヒョウは
その有無の言わせなさはすごい。はい並んで、パシャ。この間10秒ほど。表情を作る暇もない。何か言うこともできないので、おむつを取替えられる嬰児のごとくなされるがままである。
アトミウムは朝青龍16233人ぶん
エレベーターに並ぶ前に、このアトミウムについての解説が掲示してあった。
ほうほう、こうなってんのね
ボールの中は、何らかの部屋になっており、斜めに支えている棒は、それぞれのボールの部屋を連絡するエスカレーターなどがついているらしい。
アトミウムのデータ
そして、こちらの掲示によると、アトミウムの高さは102メートル。ボールの直径は18メートル。リノベーション後の重さは2500000キログラム。という。
250万キログラム。トンに直すと2500トン。体重154キロの朝青龍が16233人集まってちょうどアトミウムとほぼ同じ重さになる。
展望台につながるエレベーター乗り場
アトミウムの中にびっしりつまった16233人の朝青龍を妄想しつつ、エレベーターを待つ。
2ユーロで0ユーロ紙幣を買う
エレベーター、天井がシースルー
エレベーターに乗り込むと、天井が全面ガラス張りになっており、カゴの上昇がはじまると、まるでワープトンネルのような雰囲気になる。
実際、展望台までワープするわけだけれども。そろそろレトロフューチャーが本気を出してきた。
アトミウムは高さ102メートル。おそらく、展望台もそれに近い高さにあるはずだ。
展望台の雰囲気は、東京タワーと変わらない
ベルギーの風景はちがう
ブリュッセルの中心街の方を見てみる。
道路の先に尖って見えるのはラーケン・ノートルダム教会、その右側に見えるビル群はブリュッセル北駅周辺のオフィス街だ。
東京まで9467キロ、北京まで7980キロだそうです
こういった展望台にはよく記念コインの販売機がある。しかし、アトミウムは一味違う。記念ゼロユーロ紙幣というものを売っている。
2ユーロで0ユーロの記念紙幣がかえる
0ユーロ紙幣とは?
紙幣に目がない(大抵の人はそうだと思うけど)ぼくにとってはかなりアガるお土産だ。2ユーロで0ユーロのお金を買うというわけのわからなさもいい。
この形は鉄の結晶だった
展望台の次に行った階では、1958年に行われたブリュッセル万博の振り返り展示がされていた。
万博のパンフレット、ロシア・アヴァンギャルドっぽさ
アトミウムを設計した、アンドレ・ワーテルケインさん
アトミウムは、もともと1958年にブリュッセルで開かれた万博のモニュメントとして建設された。この奇抜な造形は、鉄の結晶を1650億倍に拡大した形だという。
イモとフォークでアトミウムを作る。インターネットのおもしろ記事みたいなことやってんな
ブリュッセルでは、万博が4回も行われているけれど、1958年以降万博は開かれていない。
エスカレーターが未来ですごい
展示物もさることながら、アトミウム内部の見どころとして、階段やエスカレーターがのかっこよさに注目したい。
階段かっこいい
手すりの色が違う階段
手すりが原子っぽい
これらは、球体を行き来するための階段だが、そこはかとなく『2001年宇宙の旅』っぽさが感じられるのはいったいなぜなんだろう。
エスカレーターロボットレストランみたいなことに
で、とにかくこのエスカレータを見て欲しい。
いったいどうしたことなのか
トンネルが光っているどうしちゃったんだ
そして赤くもなる
赤青にキラキラ光るエスカレーター。この目がチカチカするキッチュさがまたいい。
完全に新宿のロボットレストランだ。エスカレーターの部分だけ。
ケレン味がつよい演出なのはわかっているけど、やっぱりキラキラするものに、人は弱い。
写真15ユーロ
いやー、外側だけじゃなく、レトロフューチャーな中身も見られて、中に入ってよかったわー。と、満足し、外に出ようとしたところ、おっさんが近寄って来て、写真を差し出した。
うわー、そういえば写真撮った!
すっかり忘れていたけれど、そういえばアトミウムに入る前にヒョウみたいなやつと写真撮ったことを思い出した。
写真は、なにが何やらわからないというスキだらけの顔をしている。
いくらだと聞くと、さらにキーホルダーまで差し出してきて写真二枚とキーホルダーで15ユーロだという。
右端に知らん兄ちゃん写ってるし
これは……いらん!
いらんけど、ぼく以外買う人なんていないから、いらないと言っても捨てられるだけだろう。それはしのびない。
ここは、アトミウムの入場料12ユーロより高い15ユーロを払って買い取った。なんだろうこれ、罰金かな?
せめてもうちょっと表情とかポーズとか作らせて欲しい。
ハードとソフトで楽しめるアトミウム
日本の展望タワーに行くと必ずある、記念コイン(アトミウムは紙幣だが)や有料記念撮影、有料望遠鏡などといったレトロな雰囲気の商法が、ヨーロッパにもあるのかと、逆に感心してしまった。
アトミウムは、ハード(レトロフューチャーで変な建物)とソフト(強制有料記念撮影など)両面で楽しめる観光地だった。
ちなみに、あのヒョウは「マルスピラミ」という想像上の動物で、ヨーロッパでは著名なキャラクターだそうだ。