広告企画♪ 2017年12月19日

絶滅危惧文具とともに生きる ~愛用の文具がもし廃番になったら

ある日とつぜん、愛用のペンが買えなくなったら…
ある日とつぜん、愛用のペンが買えなくなったら…
ある愛用品が廃番になると聞いてあわてて買いに走った、という話をたまに聞く。

日々新製品が世に出る以上、うらでひっそりとなくなっていく商品もあるだろう。そしてその商品を日常的に使っている人もまたいるのだ。

とくに文房具というとあたらしい商品から次々出るイメージだ。淘汰で廃番になる商品も多いのではないか。

と思って文具マニアに事情を聞いたところ文具廃番ストーリーが思った以上に熱かったのでぜひお伝えしたい。

今から、ハサミを買い替えたくなって使ってるペンの販売状況が気になりだす魔法をかけます。
東京生まれ、神奈川、埼玉育ち、東京在住。Web制作をしたり小さなバーで主に生ビールを出したりしていたが、流れ流れてデイリーポータルZの編集部員に。趣味はEDMとFX。(動画インタビュー)

前の記事:古いCMでしか知らながちな店レッドロブスター

> 個人サイト まばたきをする体 Twitter @eatmorecakes
コラボ企画

愛用品が廃番になって「人生が超不安」

今回お話をうかがったのはデイリーポータルZでも活躍しているライターのきだてたくさん。

ご存知の方も多いと思うが、きだてさんは「色物文具専門サイト イロブン」というちょっとどうかという色物の文具をあつめたサイトを主催している。

とはいえ色物だけではなく文具全般に詳しく著書多数、その道の有識者だ。

実は私が文具の廃番を意識するようになったのがそもそもきだてさんの話を聞いてのことなのだった。
きだてさん、廃番になって困ってるペンありますよね、買い占めたってツイッターで見ました。
はい、これですね。
ゼブラのペンポッドっていうんですが、もうだいぶ前に廃番になりました。
写真下がペンポッド。ちなみにの上のも廃番品である…。
写真下がペンポッド。ちなみにの上のも廃番品である…。
廃番なのによく落としちゃうんだと聞いてどういうことなんだと思って。
そうなんです笑。下が落ちちゃうんですよね。

このペン、キャップのなかにバネでちぢめた状態で入ってるんです。回して開けるんですが、開けるつもりがないときにポケットにひっかかって回っちゃって飛んで落ちちゃう。
ペンを回してキャップに押し込んで収納する。逆回転すると飛び出てしまうのだ
ペンを回してキャップに押し込んで収納する。逆回転すると飛び出てしまうのだ
あれっ!? からんからん音がする(ペンの内部がなくなったのでカラカラ音がする)ってて気づいたときにはもうない!っていう。
す、すみません。落ちがちって不便…ですよね。それでも愛用するのってよほど書き心地がいいんですか?
ボールペンを持ち歩くのにこれが一番コンパクトに持ち歩けるんですよ。

ぼくは手帳を使わないので手帳にペンを刺さないんです。でもちょっと何か書くことって多いでしょう。携帯のストラップにつけるのが一番便利なんです。

ストラップにつけるペンとしてはこれが一番優秀で。もっと小さいのはあるんですけど、ちょっと書きにくくて。

手にもってかけるぎりぎりの長さで、しかもこれのリフィルは4Cっていう一般的な規格のリフィルが入るのも良いんです。
おおなるほど、中の芯が変えやすいんですね。

これ下がなくなるってことは上のキャップの部分はたくさん持ってるってことですか。
そうそう!で、下の部分がちゃんとあるのはもうあと10本切っちゃったのかな…。
在庫状況の写真も見せてもらった。これで最後…!
在庫状況の写真も見せてもらった。これで最後…!
不安ですか、やっぱり。
超不安ですよ!
残り10本で人生フィニッシュしなくちゃいけないんだ。
もうなくなったらどうしていいかわからないですよ…。
小さいペンってこれ以外にもたくさん売ってますよね?
でもそれは小さすぎて中芯が独自規だったりするんですよ。これなんかだと、ペンの部分を落としてなくさなければインクが切れても使い続けられるんです。なくさない限りは。

廃番になったってきいたとき結構リアルに膝がかくかくってなりました。
あ、リアルに体がこの形になったんですね → orz
人生をあゆむなか、どうしていいかわからなくなって膝から力が抜けるなんてそうあることじゃない。常用のペンが廃番になるというのはそういうことなのだ。

しかもそれがもう一種類ある。

廃番の困惑をなめていてすみませんでした

これ、アメリカのシャーピー ミニっていってストラップにつけられる油性マーカーですね。これもぼくが使ってるオレンジ色が廃番になったんです。

黒と赤は定番で残ってるんですが…。
こちらもあるだけ買ったそう
こちらもあるだけ買ったそう
なんでオレンジ色が必需なんですか?
もともとぼくがやっていたイロブンというサイトのテーマカラーがオレンジ色でよく使うんですよ。
でもこれはキャップだいぶかたいですし落ちることはなさそうですよね?
落ちることはないんですけど、これ油性ペンでインクが中綿式なんです。
インクが切れたら終わりなんですよ…。
そのペンを使わせてもらって感嘆の声をそのまま書いた
そのペンを使わせてもらって感嘆の声をそのまま書いた
なんというか、わざわざ呼び出して話を聞いて申し訳ないという思いでいっぱいになってしまった。

ひとことでいうと「不憫」なのである。

廃番で困るということをちょっとなめていた。きだてさんは本当に困っているのだ。

愛用品の廃番を知ったら初動がだいじ

お困りの話をあれこれ聞くのも気が引けるが、とはいえ興味深い世界だ。

愛用の文房具が廃番になるというのはどうやって知るんだろう。
新商品の発売はいつもはなやかだが、その裏でひっそりなくなっていくのが廃番品だろう
廃番になるってどうやって情報が入ってくるんですか?
気づいた人が教えてくれたり、あとは追加で買おうとしたら「販売終了」ってなってて、わっ!っていうパターンですね。

気づいたらすぐにネットまわってあるだけ買います。気づくのが遅いともう全部なくなっちゃうんですよね。気づいた瞬間が大事です。
そういえば廃番になるって聞いて買い集めるって、化粧品もそうですね…!

化粧品はたまにドラッグストア「これ廃番になるのでもうこれを逃したら買えません」ってポップがついてるのを見ることがあります。
あおるんですね! 文具ではそういうこれ廃番になるから買うなら今!っていうのは見たことないです。
静かに姿を消していくんですね…。

じゃあアンテナはりめぐらせてないとやばいんですね。
なんとなく不安になって自分が使っている化粧品の販売状況を調べてしまった(大丈夫でした)
なんとなく不安になって自分が使っている化粧品の販売状況を調べてしまった(大丈夫でした)
なくなった時に買おうとしても遅いんですよ。

廃番になるって聞いて膝から力がぬけたときも5分くらいで立ち直ってもう店めぐりですよ。

取り扱ってる店も少ないから大きい文房具屋さんまわって、あとはわりとホームセンターに残ってたりしましたね。
きだてさんはコレクターでもあるじゃないですか。やっぱり使う分とコレクション分も分けて持っておきたい…ですよね。
のこり2本になったらもう使わないかな…。

ハサミは市場が温まりすぎて廃番が増えている

さらにこれもいま大変なのだというハサミを見せてくれた。そもそもハサミはいま市場が熱いらしい。
これ、好きで使っているコクヨのエアロフィットサクサっていうんですけど、柄の部分が2重になってるんです。
シリコンのゴムが柄で2重になっている
シリコンのゴムが柄で2重になっている
持ち手に入れた手が痛くなりにくいんです。すごく便利なんですけど、でも2重になっているシリコンの部分が柔らかいからちぎれやすいみたいなんですよね。

それで次のモデルが「エアロフィットサクサ」から「サクサ」になったんです。2重ハンドルがなくなってシンプルなハンドルにかわっちゃって。

まだ一応エアロフィットサクサのほうも店頭では見かけるんですけど、もう在庫がなくなり次第消えていく予定だとコクヨに確認しました。
電話して?
電話して。
電話するんだ!
電話しますよ!

エアロフィットサクサは手が全然痛くならなかったんですごく使い良かったんですよ。刃もよく切れる刃で。ガチに使い込んでいたんですけど…。

はさみはいつも雑に使って刃がわるくなったら買い替えるんです。これで3本目だったんです…。
えっ? ハサミをリピートするんですか。
しますよ!
ところで、コクヨはハサミの型番が「ハサ」!かわいい!(それどころではない)
ところで、コクヨはハサミの型番が「ハサ」!かわいい!(それどころではない)
わたしハサミを積極的に買い替えたこと今までの人生であるかな…。

こだわりないのであるのを使っちゃうんですよね…。
えっ…!? ちゃんと買いなさいよ!笑!!

たくさんあるんならいいですけど、おんなじのを使い続けるのは良くないですよ。
ガムテのべたべたが刃についたり切れ味どんどん落ちますから。

刃物ですから切れないものは危ないんですよ。無理に力入れすぎたりすると。ハサミはかえたほうがいいですよ!買おう!
わ、わかりました…。というか、そもそもハサミってそんな種類あってリニューアルしてって世界なんですね…。

もう進化しきって何も起こってないと思ってました…。
とんでもないですよ!

2012年にプラスからフィットカットカーブってハサミが出たんです。

ハサミの歯の部分がまっすぐじゃなくてカーブしてるハサミで。これが日経のヒット商品番付に載るくらいヒットして。
業界の革命児、フィットカットカーブ
業界の革命児、フィットカットカーブ
それまで日本人ってハサミ買い替えない民族だったんですよ。
日本がというか世界的にも多分だいたい同じかもしれないんですが…。

だいたい定番でアレックスってブランドの事務用ハサミというのがあって多分古賀さんも使ったことあるんじゃないかな。これ。見たことはあると思う。
見たことあるある!
見たことあるある!
これが1973年に出て、そこからもう40年ちかく日本のザ・はさみだったんですよ。どの家庭にも1本あるような。

いいハサミなんですよ。なかなか切れ味も落ちないし。それでみんなこれを使い続けちゃっていたんですけれども。

でもフィットカットカーブが人気になったおかげでみんなここからフィットカットカーブに買い替えて、あ、ハサミって買い替えればちゃんと切れるんだって気づきが広まったんですよ。

で、それ以降メーカーがどんどんハサミの新製品を投入するようになって。
すごい、ハサミ業界が急にあったまってきたんだ。
そうなんです、2012年以降熱い業界なんですよ。
ハサミなんて進化終了だと思ってましたよ。
ぜんぜんまだまだだったんですよね…。

こないだなんて1本7000円のハサミが出てましたよ。カール事務器のエクスシザースっていう高級ハサミ。めちゃめちゃ切れるんです。
そんなにみんな切りたかったのか。
なんでしょうねえ、これだけ新製品が出ると買い換えなくちゃ!っていう雰囲気にはなりますよね。

文房具屋さんでもちょい端っこのほうで目にはつかないんですが、実は意外と熱いんです。
なるほど、そうなると市場に商品がどっと増えて、その結果廃番になる商品も増えて。
そうですね、市場が盛り上がってきたからこその淘汰みたいなことが起き始めてますね。古いバージョンはどんどん廃番になる。
じゃあボールペンとかは、市場が常に盛り上がり続けているからもう延々と淘汰が繰り返されてる感じなんですかね。
ボールペンはハサミより使う人、パイが大きいんで。レアなものも数は出るからマイナーでも生き残りやすくはありますね。
ハサミはパイ少なそうだなー!
みんな買い替えはじめてますよ!古賀さんも買い替えましょうよ!

愛用のペンが売っていないんです! という相談

ハサミがまさか2010年代になって熱いことになっているとは知らなかった。

さて、ペンはハサミよりもパイが多い分マイナーなものも生き続けやすいという話だったが、しかし意外にふと廃番になることもあるそうだ。
この前知り合いから久しぶりに連絡があって。

彼が7年間愛用しているボールペンがネットで急に買えなくなったけどどうしたことかというんです。
きだてさんのように有識者ともなるとこういった相談が来るのか
きだてさんのように有識者ともなるとこういった相談が来るのか
普通のよくあるボールペンなんですけどね、ちょっと調べたら廃番になってたんです。ぺんてるのハイブリッドテクニカというやつ。
この返信のあとには最大級に「えーっ!」という感じのスタンプが返されていた
この返信のあとには最大級に「えーっ!」という感じのスタンプが返されていた
廃番みたいだけどまだここで買えるからって売っているところを紹介して。彼もありったけ買ったみたいです。
初動が早かったため間に合った
初動が早かったため間に合った
7年も共に歩んで、これからも人生一緒にやっていこうなっていうボールペンなんですね。
つらい選択ですよ。

新製品使ったほうが幸せになれるのは分かってるんですけどね、でも手がもうおぼえちゃってるから。仕方ないっちゃ仕方ない。

もう廃番だから新製品に変えなよ、こんないいペンが出てるよって紹介する立場なんですけど、自分も廃番のペン愛用してますからね…。
でもこういういかにも普通のボールペンが急に廃番になったりするのか…。

ボールペンっていま業界そもそもどんな感じなんですか。トップ銘柄ってどれくらいあるんですか。
三菱鉛筆のジェットストリームパイロットのフリクションボールノックの2銘柄が圧倒的です。

海外でも売れて年間1億本以上出てるのはこの2銘柄だけです。
こちらは編集部橋田さんの3色タイプのフリクションボール3。見回すと確かにそこらに転がっている
こちらは編集部橋田さんの3色タイプのフリクションボール3。見回すと確かにそこらに転がっている
フリクションって禁止されたりもしてるのに!(摩擦で消せるボールペンなので、証書類には使えない)
ベトナムは確かフリクション輸入禁止じゃなかったかな。公文書偽造のサギみたいなことがおきて。
それでも1億本以上売れてるのか…。
ボールペンって死ぬほど種類があるなと思っていたが2ブランドが圧倒してるとは
ボールペンって死ぬほど種類があるなと思っていたが2ブランドが圧倒してるとは
「新製品を使った方が幸せになれる」実感のこもった名言が出てしまった。圧倒的な2銘柄という存在感もありだまらされる。

あの人と一緒になったほうが幸せになれることは分かっている、でもどうしても昔の恋人が忘れられないの。恋も文具も同じである。

と、世の中つらいことばかりよね…と記事が終わりそうになったが廃番が回避される美しいストーリーというのもあるらしい。

次ページ、伝説が語られます。

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いったん広告です

廃番が回避されるいい話というのもある

消しゴムは最近廃番でちょっといい話がありましたね。
サクラクレパスのピュアスリムというやつです。細長くてスリーブがびりびりやぶれるようになっているやつで。使ってて減ってきたらスリーブをやぶって新しいところが出せるようになってるんです。

まあまあわりと使いやすくて消し味もよかったんですけれども。どうしても地味なんですよね。それで廃番寸前になったんですけど、ファンの人のツイートがバズってamazonの順位が急上昇して廃番をまぬがれたという。
うおお…。再現VTR作りたいくらいいい話。
ピュアスリム以上にバズった話がシャーペンでありますね。

ぺんてるのスマッシュっていう80年代前半に出たシャープペンシルです。

製図用の金属軸の、ノック10万回分くらい試験して壊れないっていう頑丈なやつなんです。なんですけど、なんだかんだいって1000円するシャーペンで地味なんでもう廃番が決まって。

で廃番になるって情報がネットに上がったらマニアが買い占めに走ったんですよ。
お店で扱いもなくなってみんなamazonで買ったんです。そうするとamazonの文具ランキング急に一位になっちゃうんですよね。

そこまでだったらわりとあることなんですけど、有名なYouTuberがなんでこれが1位になったんだろうって買って使って「これはすごい、最強シャープペンだ!」ってYouTubeでやっちゃったらもう小中学生がどわーっと集まって。
シャーペンなんて小学校の高学年から中学生なんかはめちゃめちゃ使うだろうからなー。YouTube見る世代とガッツリはまったんだ。
それでもう廃番前なのが生産おっつかないくらいになっちゃって。
2015年だったかな、LOFTで限定スマッシュとか出ちゃうくらいの人気になったんですよ。

超絶なV字回復ですよ。
すごい、マンガみたいだ。
完全なぺんてるドリームですね。
インターネットやってる人にはやはり絵や字をかく人が多いですよね。

画材とか、スクリーントーンの何番が廃番になるという話はネットでたまに聞く気がします。

バズと文具の廃番ってもしかすると親和性が高いのかも…。
画材でいうと有名な話がありますね。

70年代に、漫画を描く用のファルコンペンっていうペン先が廃番になったんですよ。

当時それを松本零士先生が愛用してたそうで、廃番って聞いた瞬間にアシスタント動員して練馬区内の文房具屋を大泉学園方面からローラー作戦で買い占めていったんだけど、江古田辺りでピタッと買えなくなって。

どうやら同じくファルコンペンを愛用してた手塚治虫先生が中村橋方面から買い占めていった結果、江古田でぶつかったらしいんですよ。

って、岡田斗司夫さんがどこかで言ってました笑。どこまで本当かは知らないけど、まぁ仕事で使ってる文房具が無くなるってそういう話ですよ。
ネット時代とかそういうのじゃなくて廃番でぎゃーってなって買い占めっていうのはみゃくみゃくとみんなやってるんですね…。
漫画家にとっては死活問題ですよね。ペン先かわったら違う絵になっちゃうわけですから。
ペン先かわると絵がかわるって、やっぱり文具の廃番は化粧品の廃番に似てる気がしますね…。化粧品変わると顔変わるからね…。

廃番になると大変なのは意外にも「手帳」

さて、ここまでボールペンと、最近市場が温まってきたというハサミについても話をきいてきた。「文具」といえばそのほかにもとにかくジャンルが多い。

ほかに廃番で慌てるような文具といういとなにがあるんだろう。
使用頻度の高いペンまわりは廃番の絶望度もほかの文具に比べてでかいんだなというのがわかりました。

たとえば…定規なんかだと廃番になってもそんなに困らないんじゃないですか。
うーん、定規もね…。たとえば最近みぞが彫ってある定規ってかなり減ってるんです。ガラス棒と合わせて使うような。

まだ売ってはいるんですけど、確実に減ってる。でもなくなるとあれは相当困る人がいるんだろうなと思います。
ガラス棒! 昔「漫画の描き方」みたいな本はよく読んだので知ってます(※溝のついた定規とガラス棒を使い筆で直線を書く「溝引き」という技法がある)。

そうか、定規もそうか~!
困る人は何にでもきっといるんですよね。やっぱりそれだけ道具というのは手に馴染むものなので。
じゃああれだ、ペンじゃなくてノートも書き味変わると困るとか…?
紙側はね、ノートもそうなんですが、手帳で困る人が多いですよね。

あれ取っておく人たくさんいるじゃないですか。10年くらい同じ手帳を使ってきたのにその手帳が廃番になったら使い勝手はもちろんだし、とっておくとき別の手帳が並ぶことになるんですよ。

揃わないんですよ。いやでしょう?
……!! それで思い出しました…! 廃番で買い占めってこだわりのない私には全く関係のない話だと思ってたけど私もやったことありますわ…!

わたし、紙焼きの写真の整理に無印良品のバインダーと写真用ポケットのレフィルを使ってるんです。でもそのレフィルが店頭からなくなって…!

あわててネットで買い占めました。これなくなったらこまるって!
なんで忘れていたのか、私も買い占め側の人間ではないか(しらべたらこれ、最近になって再販されたそう。祝…!)
なんで忘れていたのか、私も買い占め側の人間ではないか(しらべたらこれ、最近になって再販されたそう。祝…!)
買い占めてるじゃん!それだよ!出てきたじゃん!
出てきたわ~~!

バインダーのほうはすでにいろいろ型がかわっちゃって、最初布張りのだったのがプラスチックになって、いま紙です。これもできれば揃えたかった…。
どの素材も良さはあるんだけど…
どの素材も良さはあるんだけど…
そういう「揃い」の問題があるから、手帳って発売されてから3年は売れないんですよ。すぐ廃番になるかもしれないからみんな飛びつきにくいんです。

3年くらい販売され続けるとあ、大丈夫なんだと思って買える。そういう話もあるくらいです。

手帳の超定番は廃番にならないだろうっていう安心感でも売れてる。

手帳・ノートに関しては書き味もあると思いますが揃えも大きいでしょうね。

安定のシャー芯、鉛筆、やはり激動はボールペン

話しながらまさか自分自身も廃番で買い占めに走った過去を思い出して驚いた。ああ、これは確かおそろしいことだ…。

おそろしい話だが打てば響くように答えてくれるきだてさんに甘えてさらに細かいジャンルの話も聞いていこう。
シャーペンの芯はどうですか?
安定供給かなあ、あんまり廃番って聞かないですね。

ぺんてるのハイポリマーって樹脂芯のあたりで折れにくい芯というのが出てきて、グラファイト芯とか新製品が出つつここ10年くらいは定番品で安定してるのかなあという印象ですね。

すごい新製品が出たとかあれが廃番になったとかそういう騒動はないですね。
鉛筆はどうですか。やっぱり超安定路線なのかな。
最新の訴求ポイントだと「折れない」っていうのがありますね。

オレンピツっていうのが出てこれが本当に折れなくて。だいたい2倍くらいの力で折れないというのが最近出ました。
鉛筆進化してるのか…!
一応してますね。

でも鉛筆に関して言うと、三菱鉛筆とかステッドラーみたいな大メーカーのほかに小さなメーカーがたくさんあるんです。東京にも10社くらいありますね。北区とか葛飾区とかに。小さな鉛筆メーカーがいまだにあったりしますよ。

ノベルティなんかで需要が多いんでしょうね。
あー、街ぶら番組とかで出て来るイメージあるなあ、工場で名入れしてたり。

廃番というより地道に昔ながらの商品が作り続けられてる感じなんだ。
三菱鉛筆のハイユニとか大きなメーカーの高級品はこれ以上良くなることはないくらい良い鉛筆なんです。
編集部にあったのはトンボの鉛筆。おなじみの商品もみゃくみゃくと生き続けてる
編集部にあったのはトンボの鉛筆。おなじみの商品もみゃくみゃくと生き続けてる
やっぱり進化がめざましいボールペンは圧倒的に使っている人が多いんですよ。

需要が多いからメーカーも開発するし、イノベーションも起き続けるんですね。ヒット出すと大きいから。

インクは技術的に伸びしろもあるみたいです。でもそうやって進化するから絶滅してっちゃう商品も多いんですよね。
インクが進化の鍵なのか…。そういえば中学生のころゲルインキのペンが売り出されてめちゃめちゃに流行したなあ。
ハイテックシリーズですかね。
それまでボールペンは使わなかったんですよ。子供だから鉛筆かシャーペンで。でもみんな急に使うようになった。いま思うとすごいことですよね。

ちょっといま調べてみましたがハイブリッドはめちゃめちゃ色展開あったのに今はもう黒と赤と青しかないんですね…。

ハイテックCはまだ色も太さも展開してるんだ。
当時夢中だったペン、久しぶりに買ってみた。ハイテックCとハイブリッド…!
当時夢中だったペン、久しぶりに買ってみた。ハイテックCとハイブリッド…!

便利で使いやすくても廃番になる

お話を聞いていると結局ボールペンが激戦区すぎておもしろくてそちらにはなしが流れていく。それくらい文具界で常に活況なのがボールペンなんだろう。

と、きだてさんがあっと気づいた。のりだ。
のりも廃番になりますよ…! いま液体のりがだいぶ減ってきてて。
え? アラビックヤマトみたいな?
アラビックヤマトは大定番なので大丈夫なんですけど、そういうど定番以下の商品がやばいです。
どういう勢力に押されてるんですか?
テープのりですね。どんどん良くなってて新製品もたくさん出てます。水のりは新製品ももうなかなか出ないですよね。
修正テープかと思ったらテープのり、という時代(写真はこちらの記事</a>より)
修正テープかと思ったらテープのり、という時代(写真はこちらの記事より)
コロピタって覚えてませんか?ぺんてるの水のりなんですが、これなくなってます。

ぎざぎざのローラー式の水のりで使いやすくて73年発売だったんですがもう10年くらい前に廃番になりましたね。
うわあ…! コロピタ覚えてます! これ好きだったなあ。確かにスポンジのより使いやすくてこれ使ってたときご機嫌だったのを確かに覚えてますよ。
スポンジのだとカスカスで出なかったりするけど、ローラーはそういうことがなくてよかったんですよね。

でも使いやすい!っていう強みがあってもなくなっちゃうんですよ。なくなっちゃうともうしょうがないという。
のりがそういうことになってるのか…。ほかには!? カッターとかどうでしょう?
カッターは意外とそんなに廃番ないかな。

カッターの大事な部分ってやっぱり歯じゃないですか。そもそも歯に種類がそんなにないんです。それで廃番にもならないんですよ。

カッターだといま30度鋭角刃っていうすごい尖った刃のやつを使っているんですけど、それが廃番になるっていったらそりゃあもう買いに走りますよ、でもまあそれはない。わりと安心ですね。ガワの部分もそんなに種類ないんです。

デザインナイフとかロータリーカッター(円盤の刃を転がして切るタイプのもの)はちょっと分からないのでそっちではもしかしたら廃番が起きたりもしてるかもしれないです。自分が使ってないところはなかなか追いきれないんですよね。

変化に強いのは「教材」

文具はジャンル多すぎますもんね…。

ど定番すぎるジャンルでは絵具とか…どうなんでしょう。
絵具…。「教材」っていう枠に入るものはあまり変わらないですね。
そうか、絵具は「教材」なんですね。

ぺんてるのクレヨンサクラのクレパスも確かに変わらない!さっきのりの話がでましたけど、でんぷんのりがもう本当にかわらない。
ヤマトフエキですよね。

やっぱりフリクションがやばすぎる

教材で思い出したのが蛍光ペンだ。自然な流れのつもりだったが、いま思えば結局やはりペンの話に戻ってきてしまった。
蛍光ペンってみんな使ってた軸が白いやついまなくなってませんか!?あれ、どっかのタイミングで急に軸が黒いやつに切り替わった気がします。
軸が白いやつってゼブラの蛍光PEN2ですかね。軸が黒いやつというとオプテックスかな。
(検索結果を見て)そうそうこれです! 蛍光ペンも市場としてはいろいろある系なんですか?
ちょいちょいイノベーション起こりますね。

三菱鉛筆のプロパスウィンドはすごいイノベーションでしたよ。窓が開いてるんで字の上からラインを引いたときどこまで引いたか見えるんです。これなんかは出た瞬間にすごい!って盛り上がった製品でしたね。
一見普通のペンのようだが
一見普通のペンのようだが
ペン先に窓がついている…! どうやって発想したんだ
ペン先に窓がついている…! どうやって発想したんだ
これはギミックがすごい。そうか、蛍光ペンってこういうことになってるのか。
で、同じ三菱鉛筆からプロパスイレイサブルっていう消せる蛍光ペンが出てるんです。

これ、フリクションが出る前からあるんですけど、いまフリクションの蛍光ペンってのが出ててすごい人気なんですよね。
あ…(察し)。

フリクションははんこも出てますよね。
色鉛筆も出てますよ。きれいに消せます。
フリクションがすべてを駆逐していかないか不安すぎますね…。
いやいや、フリクションシリーズだけじゃなくてこの10年に起きたイノベーションの件数がすごかったんですよ。ハサミの件もそうですし。
うわ、じゃあこの10年は廃番も多かったのか…すごい感慨です…。

とりあえずハサミは買います

廃番のはなしは、進化のはなしでもあった。道具が進化すると、それ以前の道具に自然と淘汰が起こるのだ。

新製品を使ったほうが幸せになれるのは分かっている。しかし手になじんだ道具の良さは忘れられない。

文房具のような道具の場合、進化は単なる向上ではないのかもしれない。需要に合わせて訴求するあるポイントに注力して高めた場合、ある特徴が失われるということも多いだろう。

廃番品を使い続けるというのは失われた特徴、個性を追い続けるということなのかもしれない。愛である。
廃番が決定している愛用のエアロフィットサクサを持つきだてさんの顔がちゃんと寂しそうだった
廃番が決定している愛用のエアロフィットサクサを持つきだてさんの顔がちゃんと寂しそうだった

絶滅の危機にある動物の写真展をやっております

さて、冒頭にバナーなど掲載しておりましたが、この記事はナショナル ジオグラフィックの「Photo Ark-動物の箱舟- 写真と映像で知る絶滅危惧種の動物展」の告知をかねているのでした。

文具はファンが在庫を買うことで廃番になったあとも大切に使い続けられます。つまり生き続けるわけです。

一方絶滅危惧種の動物となるとたいへんだ。展示は二子玉川で12/22~1/8(1/1はおやすみ)。ぜひぜひ足をお運びください。

ナショナル ジオグラフィックTV「PHOTO ARK:動物の箱舟」放送記念
写真と映像で知る絶滅危惧種の動物展

場所:二子玉川ライズ iTSCOM STUDIO & HALL
日程:2017年12月22日(金) ~ 2018年1月8日(月・祝)
※1/1(月・祝)は休館
時間:10:00-18:00
料金:入場無料

イベントは終了しました。
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