スープ皿で味は変わるか
スープは、マナー通り正しく飲むとおいしいのだと、子供の頃、誰かに教わった。言われてみるとそんな気がするなと思った記憶がある。飲み物に適した食器を用意して、正しく使うと味が変わるのだ。
では、いつもジョッキやグラスでグビグビ飲んでいたものも、スープ皿でいただくと味が変わるのだろうか。「スープ皿飲み会」を開いて試してみた。
飲み会を開いた
スープ皿飲み会である。
楽しく飲み会をするが、飲み物は全部スープのようにいただく。
つまりこういうことになる。ジョッキやグラスはない。皿だ。
デイリーポータルZのライターの井口さん(左)、江ノ島さん(右奥)に参加いただいた。
場所は料理教室などに使えそうなレンタルスペースである。だから奥に流し台や食器棚が見えているが、これは飲み会である。
では飲み会、スタートである。
ビール
ビールである。
注ぐ。
おおおう…
ダメだ。ダメなのが分かる。
これは、友達の家で飲み会をして、お開きになった後で余ったお酒を大きな皿にまとめた時、その時のビジュアルと同じだ。
いい予感がしない。
クルトンを浮かべてみた。少しコーンポタージュみたいになった。
一度、言葉を失った。
おいしくない。
空気に触れる面積が広いので炭酸が抜けやすいし、スプーンで飲んでいるのでのどごしもない。なんか分からないけどぬるい。
親戚の集まりで初めて飲んだビールの苦さを思い出した。なんでこんなものを皆おいしそうに飲んでいるのかと不思議に思ったのだ。「そのうち分かるよ」と嬉しそうにおじさんに言われ、それから年月が経ち分かったつもりになっていたが、もう一度分からなくなった。
とにかく全然おいしくない。
満場一致でおいしくない。井口さんも真顔になった。
江ノ島さんもおいしくなさそうな顔をしている。
納得がいかなかったのか、缶のまま飲み始めた。
「ビールって、うまいんですよ」と全人類周知の事実を力説していた。
喉に流し込む飲み方に慣れすぎてしまったのか、食べるように飲んだスープ皿のビールはおいしく感じられなかった。あとクルトンも全然合わなかった。
スープ皿で飲むビール
見た目 ★☆☆☆☆
香り ★★☆☆☆
味 ☆☆☆☆☆
残り物のような見た目だし、味もおいしくない。なんだか嫌な感じのぬるい苦味だけが強く感じられる。クルトンも合わない。ただ缶で飲むとものすごくうまい。
ワイン
炭酸が抜けたり、ぬるくなるとおいしくなくなるものは良くない。そう学んだ私たちは、次にワインを選んだ。
紙パックのワイン。こういうのがあるのだ。
注ぐ。ここの工程になんか背徳感あるな。
なんかありそう!
いい見た目だと思う。こういう赤い色したビーフシチューありそうだ。
そしてうまい! 後光も差す。
皿に注いだ時からいい香りがしていたのだが、飲むとまろやかで、普通に飲むより香りを感じやすくなった気がする。ワインを空気に触れさせるといいとどこかで聞いたことがあるが、そういうことも影響しているのかもしれない。
専門的なことは分からないが、とにかくおいしい感じはする。ちなみにクルトンは、ビールの時入れたものがあまりにもおいしくなくて、もう話題にも上がらなくなっていた。
ポテトチップスが合うと言ってたくさん食べた。おいしい証拠だ。
スープ皿で飲むワイン
見た目 ★★★★☆
香り ★★★★★
味 ★★★★★
なんか香りが強くなってうまい。見た目もいいし飲み方としてありだと思う。ポテトチップスのうすしお味がすごく合う。
ワンカップ大関
ワインがいいなら日本酒もおいしいのではないか。
ワンカップ。
透明だ。ワンカップ大関。
スープ皿に注ぐと、公園で昼間からあおっているような、ワンカップのダメなイメージがなくなる。透明できれいだ。
やっぱりうまい。
香りが強くなって、飲みやすくてうまい。江ノ島さんは、ワインよりこっちが好きだと言っていた。
なんか上品な写真だが、飲んでいるものはワンカップである。酒の、アルコールの度数について話している。
写真を見返すと、筆者だけ酔っ払ってきている。
スープ皿で飲むワンカップ
見た目 ★★★★★
香り ★★★☆☆
味 ★★★★☆
ワイン同様、香りが強くなってうまい。ビンのまま飲んだ時のきつい感じがなくなり、まろやかな口当たりになる。なんかうまい。あと飲み方の上品さとのギャップがおもしろい。
ハイボール、コーラ、炭酸水、コーヒー
あとお伝えしたい飲み物が4つある。一気に掲載します。
ハイボール。ビールがダメだったので厳しそうに思われたが…
案外おいしかった。やっぱり香りだ。
お酒の種類は全然違うが、アルコールが含まれている洋菓子の、そのアルコールのところだけ舐めているような気持ちになった。
直接飲むと、違う良さがある。唐揚げが食べたくなる、あのハイボールだ。
スープ皿で飲むハイボール
見た目 ★★☆☆☆
香り ★★★☆☆
味 ★★☆☆☆
普通に飲んだハイボールとは、違う良さを感じた。炭酸が弱くなってのどごしないが、その分ウイスキーを強く感じられるものと思われます。
次はコーラである。写真はコカコーラ担当大臣、江ノ島さんがコカコーラを皿に注ぐ様子である。
なんかおもしろい味になった。
コーラなのにコーラ味の駄菓子を食べているようだった。
炭酸が弱くなって甘さが強く感じられるからだろうか。これはこれでおいしいが、コーラを直接飲んだらもっとおいしかった。
スープ皿で飲むコーラ
見た目 ★☆☆☆☆
香り ★★☆☆☆
味 ★★★☆☆
「コーラ味の何か」のような味がする。コーラなのに。
炭酸水。
飲んでみたが何かが違うという。
ペットボトルと飲み比べる。
ペットボトルの炭酸水は「炭酸水」という感じだけど、スープ皿で飲むと「水と炭酸」という感じだそうだ。ドライアイスを入れた水を飲んでいる感じだという。
「ドライアイスを入れた水って飲むのか!」とそっちに驚いてしまったが、皿で飲むと水っぽくなるような気はした。
スープ皿で飲む炭酸水
見た目 ★★★☆☆
香り ☆☆☆☆☆
味 ★★★☆☆
ペットボトルで飲むより水っぽい。ドライアイスを入れた水みたいな感じ。味がないのでわざわざスプーンで飲むのが煩わしい感じがした。
最後に、コーヒー。
醤油飲みながらカラムーチョ食べているヤバい人に見える。
やっぱりちょっと水っぽい。まずい訳ではないけどなんか違うなあという気持ちがぼんやりある。
缶から飲むとコクがあっておいしい。
飲み物の、口に入ってくる時の「形」が違うなという感じがした。缶の方が、まとまった量のコーヒーが舌の上を通って、多分それがいいのだ。
こういう形の缶って、コーヒーに多い。きっとよく考えられたものなんだろう。すごいなあと3人で讃えた。
スープ皿で飲むコーヒー
見た目 ★☆☆☆☆
香り ★★★★☆
味 ★★☆☆☆
香りは感じるが、なんか水っぽくてコクがない。あと見た目が醤油っぽい。
ソムリエっぽいことが言えるぞ
特に舌に自信のある3人ではなかったが、コクとか香りとか口当たりとか、なんだかかっこいいことを迷いなく言っていた。いつも飲んでいるものでも、食器を変えると味の微妙な変化に気付けるのだ。ソムリエみたいですごく気持ちが良かった。
そして、ワインと日本酒は特においしかった。銘柄の違いにも敏感になれそうなので、スープ皿で色々なワインや日本酒を飲んでみたいね、と話したほどである。あとちょっとずつ飲むので酔いにくくて良さそうである。
冗談7割で初めてみたが、本当にいいかもしれない。スープ皿飲み会。
今回わかったことを下にまとめておきます。
飲み会っぽくしたいという思い
会を始める際、レンタルスペースが思いのほか教室っぽかったこともあり、頑張って飲み会っぽくするぞと3人で意気込んでから始めたのだ。
あと企画と関係ありませんが、江ノ島さんが僕のジャケットを着た写真は載せた方がいいと思ったので載せます。